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蜂の城

(こちらヨルン 潜入に成功した 指示を頼む)



―――確認

 難易度は分かりませんが見つかり次第

 即座にロードという縛りを入れています

 面倒なのでくれぐれも見つからぬように

 生体反応は視覚化しますので頑張ってください




 という訳で現在は巨大な蜂の巣内部です。

 意外と楽に潜入出来ましたが、やはり魔物の数が半端なく多い。

 壁越しにでも生体反応を感知する事が出来るのだけれど。

 完全に見つからないように…慎重に。

 尚且つ要所要所で迅速に。


 周囲の生体反応を感知。その後に行動。

 距離を離しながら潜入の痕跡を残さないよう注意しながらの移動。

 そして蛇の体によるこの隠密性がなんとも便利だ。



 『液化』が無くとも、自分は蛇である。狭い隙間も問題無い。

 『植物操作』がある。その場凌ぎで隠れられたりもする!

 蛇の特性『熱源感知』で進むべき道がなんとなく分かる。

 さらには『暗殺者』で気配を殺す能力が備わっている!

 こんなにもスキルが揃っている自分だ。

 並の魔物が相手であれば、自分の潜入活動の一切を悟られる事はないと自負している。



 相手側の目が節穴さん? 自分が凄すぎるだけの事よ。

 某潜入ゲームのように背面を取っての移動は問題無し。

 組み付いたり等して意識を奪う行為はやめておこう。

 一切の気配を悟られずにまずは進むのだ。


 内部の地形が分からぬので兎に角今は隠れる事を一番に。

 『脳内地図作製』をフル活用。

 守護者が脳裏に簡易的な地図を視界の端に映してくれている。

 お陰で動きやすい事この上ない。


 順調に進んではいるようだが終わりはまだ見えない。

 地形の把握の為に何度か同じ場所を回ったりもした。

 横だけの移動ではなくある程度の高低差も存在する為だ。


 意外ときっちりと整っている地形と感じる。

 マッピングを続け法則性が見いだせれば今後が楽になるかもしれない。

 入念にあらかじめこの程度だろうと当たりをつけていた

 一区画を探索し終え一息入れる。

 結構楽なものだなと思い始めるものの。



 …油断はならぬ。

 どうにも状況が変わってきた。

 今まで我が物顔でサクっと探索してきていたのだが。




―――確認

 3度程ハチに見つかりロードを繰り返した蛇が申しております。

 見つかった瞬間にロードをと言われましたので。

 その後に守護者がスネーク!と叫ぶまでが守護者の役割でした。




(守護者よ。何事も無く事は進んでいる…イイネ?)




―――確認

 特に問題無く事は進んでいます。

 しかし生体レーダーの反応の並びを予測してみると。

 後方の布陣が厚く。進むべき道も限定されています。




 守護者が言うように思うがままに進めなくなってきたのだ。

 まるで誘導されているような。

 もっと感覚を集中し、広い範囲で感応しよう。


 こっちの道を行きなさい?

 そっちはダメ。魔物で固めて封鎖してるよ。

 ついでに背後には戻る事は許さない。

 そんな威圧感を放つ後方の存在がなんとも気になる。

 ともあれ、この巣を住処とする魔物達からそんな意図を感じはじめてきたのだ。


 潜入して初めは気が付かなかったが。

 やはり誘導されている?

 誘いに乗るか?


 だけどちょっぴり、意地悪したい。

 思うがままにされるのは、なんとも癪だ。

 そもそも…本当に誘導されているかも怪しい。


 一度、道を塞ぐあの軍勢を蹴散らしてくれようか?

 足はないけどもという蛇ノルマを達成しつつ、今はやめておく。

 相手にする必要がないのであればそれで良いと決めていた。


 スピードアップし、少し反応を見てみよう。

 今の自分であればイケル筈。



 『龍の象徴』をこの背に広げ低空飛行にて急加速。

 周囲には何の反応もない。

 見つからない程度に最大限の速度で進む。

 隠れるのも出来る限りに最小限。

 その必要もない時は速度を落としてやり過ごす。


 思ったよりも構造は単純だ。

 迷路ではない、区分けされている。

 『脳内地図作製』をしつつ確認していたが。

 規則性があるのだ。


 まるで人間の世界でいう、住宅街のような感じだ。

 多少というかそこそこ無計画交じりに、入り組んでいる部分も見受けられたが。


 なんというか表現に困りますけど。

 ハチの巣一丁目で3番地の13です。

 そこから進むとハチの巣2丁目の1番地1から始まりますよ。

 なんて例えられるぐらいに似通っている。

 そんな区画も高さの概念があるのでとんでもない数になるのだが。


 やはり知能があって覚えやすいような作りにしているのだろうか?

 どうにも外観から想像していた迷路のような作りとは反対の印象を得ている。

 流石に見た目は、そのまんまハチの巣だったけれど。

 そのイメージで固めてしまえば道路を挟んでこちら側がこうなって。

 ちょっとこの辺が袋小路だから道が狭くなってる。

 そういう場所は奥にはただ幼虫がいるだけ。なんていう作りが多い。

 成長したら、あのハチのような姿の魔物になるのだろうか。


 どうにも生活感が魔物としてあるような。

 人間感覚としては、妙なだだっぴろい空間故に、良く分からないとしか感じられないが。

 成体の大きさに合わせた住処となっているらしく。

 兎に角広くて、しかも動きやすい。

 自分の体躯程度であれば身を隠す場所が多くあるのが救いである。



 しかしそんな法則も中心部に向かうにつれて違うものとなっていった。

 整備されているであろう道が、どんどん狭く少なくなっていくのだ。

 感覚を研ぎ澄まし、周囲の状況を伺えば。

 やはり魔物の布陣は、自分を一本の道に追いやっている。

 確定である。自分を招き入れようとしているのだ。



 ココから先は、どうやら一本道のようである。

 螺旋状に中心部へ向かう通路を自分は進んでいた。

 どうやら最初から最後まで自分はこのハチの巣の主の掌で踊らされていたようである。


 悔しいが負けた気分である。

 仕方ない。誘いに乗るとしよう。

 どんな結果が待ち受けているか、奥に進んでからのお楽しみだ。



 マップ全埋めをしたかったのですが。

 それは後の楽しみにとっておくとします。



 そうして、かれこれ数分間の道のりをゆっくりと自分は進んでいった。

 明らかに広いぞ。広すぎるぞ、この通路。そう思い始めるもやむなし。

 静寂の中で考える時間は十分にあったので色んな説を立ててみようかと思ったが。

 無駄な思考であると全てを切り捨てた。


 必要なのは、不意打ちをされて嬲られないよう、感覚を集中するだけだ。

 考えるのはこの奥に居座るであろう何者かに会ってから考えればいい。



 思考が戦闘関連に向くのにも理由があった。

 この空間、なんとも言い辛いが。


 良くあるゲームでいう所の。

 ボス戦空間。とでも言うのだろうか。


 明らかに、思う存分戦ってくださいと言わんばかりに広い。

 柱も頑丈だし、周囲の壁も厚みが十分。

 ちょっとやそっとでは崩れそうもない。


 何かの巨大な魔物でもやってきて、

 登場名乗りをしてもおかしくないぐらいの空間だ。

 ふと頭上を見上げれば。


 そこには何も無かった。

 赤い点が一斉に自分を見つめているなんて事は無かった。


 代わりに視点を正面に向ければ。

 石像のような物言わぬ作り物。

 巨大な戦槌を両手で構える謎のオブジェが不釣り合いに小さな扉の前に鎮座していた。


 アレが動いたとしたら、とんでもない迫力なんだろうな。

 そうでなくても、あの大きさに精密な造形を作り出した主には素直に感嘆する。

 他には、物陰に何者かが隠れているような気配も無く。

 あるとすれば扉の向こう側。


 対策なしにあの扉を潜ろうものなら。

 その手前辺りの戦槌で叩き潰される。


 なんてトラップじゃあないよね?

 そもそも、あのオブジェは何?


 巨大なハチ?

 良く見れば両腕所ではない。

 4つの手を合わせてその戦槌を支えるハチの像だ。

 もう2つ、手のような部位はあるものの、体躯を支えるためだろうか。

 尾と合わせて立地している。



 ふうむ、どう見ても動きそうだ。

 魔力の流れが一切感じられないが、ソレはなんというか電池が抜かれた置物。

 魔力の供給さえ行われれば、やっぱり動きそう。


 しかし、その気配は感じられず。

 見事な作り物だ。という印象に留めておくことにする。


 そんなこんなで観察したお陰で、ちょっとした時間を食ってしまった。

 ふと気づけば背後に気配、敵意は感じられず。

 その数4つ…6つ。8つと増えていく。


 あれ、これマズイ? 隠れる場所一切ないや。

 こんな状況、段ボールがあったとしても詰み的な状況です。

 とりあえず、その様子を確認するべく視界に収めるソレ等は。

 やはりハチだった。


 ハチの魔物である。

 大きさが尋常ではない。

 人間ぐらいの大きさの蜂が移動しております。


 だけどその移動方法はなんでしょう?

 ぴょんぴょん跳ねて移動は、ちょっぴり可愛いと思えてしまう。


 隊列を組んでの、飛んで跳ねて、ちょっぴり滑空する。

 じーっと見てみれば、数匹が此方を視認し、再び進行方向へ向き直る。


 そんな人並みサイズの巨大なハチの魔物達。

 なんともまあ、その手に一杯の何かを運んでいた。

 此方を視認した様子はあったのだが。

 ヨルンは無視されたのだろうか?


 自分の事は気にせず、与えられた役目を全うする為だけに動かされている感じだった。

 向かう先は扉の中。何かを運び、運び終えたらそのまま帰っていく。


 結局の所。


 自分の存在自体を、やっぱり無視された。

 そうして如何にもな戦闘タイプの二匹だけがその扉の前に陣を取る。

 ランクにして、少なくてもランクにしてC以上の存在。

 『アサシンヴァイパー』を彷彿とさせる騎士のような姿だ。

 それ等の情報がない自分にとって、その見た目と内包する魔力を察するに。

 過去に相手をした魔人と同等。それ以上にも感じる魔物にも思える。


 ちょっとだけ『解析』してステータス覗いてみよう。



――――――――――――――――――――――――


 ランク:C+ 種族名:『デス・ストーカー』

 Lv:13 HP860/860 MP420/420


 攻撃:776

 防御:301

 魔法:812

 速度:1024


――――――――――――――――――――――――



 

 こんな魔物が×2です。

 しかも何か武器のような物を持ってますよ。

 両手にながーい、槍のような武器を。

 しかも蜂ですし、自前の針もちゃんと完備してますし。

 やだー。蜂嫌いなの。怖いのー。

 タマゴ植え付けられて苗床コースはやなのー。

 しかも名前がデスストーカーですし。死ぬまで追っかけてくるの?

 なんて長々と妄想交えて考えてみたけど相手は動かないようです。


 もしかして詰んだ? 時間切れです?

 むかーし昔のゲームで良くある系の、

 制限時間を過ぎると出入り口が封鎖され。

 後は勝手に死んでねっていう。

 まさにあの状況を彷彿させる、今のこの状態。


 観察すれば、武器のようなモノはその背に預けて臨戦態勢という訳でもない。

 扉を開け続けている意図を察するなら、早く中に入ってこい。

 …つまり、そういう事だろう。


 それをするのであれば、執事的な方を求みたい!

 どうぞ此方においでませ、的な事をしてくれても良いのではないか?


 良いさ。分かったよ。そっちに行ってやろうじゃないか。

 覚悟は決めた。悪いようにはされまい。


 ハチの魔物も此方の様子を伺うが。

 やはり敵対する意思はないようだった。

 扉の前に来る。ハチの視線が気になる。

 立ち止まると、じーっと見てくるのだ。

 分かりました。今入りますから。ちょっと怖いんですよその顔?


 それにしてもでっかい蜂の顔、思えば今から蜂の親玉と会いに行くんだった。

 このぐらいで怯えてどうするのだ!

 気合を入れ直してどんなものが出てきても驚かぬよう…

 決意を固めるのだ。ふんすふんすっ!



 そうして意を決し扉の中へ踏み込んだ。

 その中はなんというかそこまでに感じていた場所とはかけ離れた内装だった。

 今までの魔物の巣…というイメージは全くない。


 部屋だった。

 一人の人間が快適に暮らせるような空間がそこにあった。

 それでいてなんて、ファンシーなんだろう。

 幻想的な装飾品があちこちに。

 統一感が無いがなんとなく、この空間の主がそれ等を好んで配置したと感じさせられる。


 そしてテーブルであろう機能を果たすモノを囲み、

 一対の椅子が用意されていた。


 そこには部屋の主であろう、魔物が一匹。

 自分がそれに気づいた時だった。



「此方にどうぞ。ちゃんとアナタにでも座れるような椅子を用意したわ」

 部屋の主はそう言葉に出して自分を席へと促した。

 どうやら、争う事は考えなくても良いようだね。

 全くもって検討はつかないが、知恵を持つであろう魔物との初の対話だ。

 心が躍る。何を話そう…


 そう考え自分も口を開こうと向き直った。

 心を奪われる、そんな感覚を覚えるのもその時だったのだろう。



   *  *  *

本筋には関係ないですが。

地面に這いつくばるスズメバチにじーっと見つめられてた過去があります。

死んでるのかな?と思ったら急に飛び立ち体当たりをしてくれました。

慌てて逃げたものの服にへばり付いていて家に連れ込んだあの記憶。

その後。その蜂は家の中に巣作りしようとしやがりました。

初めての同棲相手でした。良く刺されなかったものだ。

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