潜入作戦
蛇の魔物ですが現在『ユグドラシル・ティア』の姿です。
小さめで動きやすくて尚且つ可愛くて愛嬌のある良い姿なのですが。
人間側が定める魔物の強さとして最高ランクのAに区分されてる種族です。
と言っても純粋な強さのみを比べるのであれば、
まだまだ上には上がいるのよね。
ランクAとは何だったのか。
そもそも区分けの基準とはなんなのか。
前に聞いたことはあるが。
国と呼べるモノを容易く滅ぼせる程度のランクがBだった。
つまり…その上を行くAランクともなれば。
お国を軽く潰せる系魔物の上ってなんだろう?
魔王にでもなって、世界でも征服出来るんだろうか?
この姿で試した場合の脳内シミュレートを行うも
途中で討伐される未来しか見えぬ。
自分の中に存在していたアスピクならばどうだろう?
アレならばそこそこに物理的な力のみで
世界中の国という国を滅ぼしつくせるようなイメージが簡単に沸いてくる。
自分がやるとなれば?
やっぱり途中で力尽きる未来が待っている、ような気がする。
まあ夢でみたあの姿であるならば破壊の限りをし尽くすぐらいなら…
いや考えるのはやめておこう。
自我を失ってまで世界を滅ぼす気も無ければ、
戦いに明け暮れる毎日を送りたい訳でもない。
自分は平穏に植物の様な安心出来る日々を送りたいのよ。
とはいえ移動できない動けないだけの植物的な魔物は嫌なので、
今のこの、ティアちゃん姿がお気に入りとなっています。
しかし世界に4つしか存在出来ないとかいう。
世界樹の魔物とは大層な魔物となってしまったものだ。
人間側からレアモンスターだー、倒せーなんて言われない?
最強装備の材料とかいって剥ぎ取られそうだよ?
でもまあ、ランクAの魔物だけあって。
この姿の能力はRPGで言う所のボスクラス。早々負ける気もしないし。
なんだかんだで、不死で呪い持ちっていう対策必須のなんとやら。
正直戦闘に関してはドキドキハラハラ触手に汗握る展開ってのは無いのよね。
そんな思いに耽りながら、ハイエルフとなったエレナと別れて3日目の事。
自分はとある領域の入り口付近を右往左往している。
とある領域という言葉を使ったのには訳がある。
明らかに、周りの景色が変わり異質な地形なのですよ。
尚且つ、侵入すれば直ちに攻撃する。
といった意図を含むであろう、魔物が睨みを効かせている場所なのである。
種族は例えるのであればハチと似ている。
景色が変わっているという表現も。
その森一体がそのハチの巣のような領地となっているからである。
前世では一見してヤバイと思い近寄りすらしなかった場所だ。
本能的に近づけば死ぬ、何度でも殺される。
生理的な嫌悪感もあり、尚且つ空を飛ぶ魔物を…
さらに数を揃えた軍隊を相手に出来るか?
といった理由もあり、前世であれば敬遠していた場所だったが。
今の自分であれば、どうとでもなると自信はある。
ちょっと、レベルを上げすぎたかな?
適正レベル外れた場所かな?
………なんて思う始末であるが。
正直、内心で心臓がドキドキしすぎてなんとも決心がつかない。
いくの? あんな場所? とんでもなく広そうなんだけど?
そもそも、自信があってやって来た筈なのに。
いざ前にするとその自信がどんどん薄らいでいく。
『脳内地図作製』で付近を散策したが3日分の散策にも関わらず。
端が見えぬ広さであり、どうしたものかと攻めあぐねていたのだ。
意を決して突入するべきか。
流石にこの3日の散策で警戒はされてしまったようだが。
向こう側より襲ってくる気配もない。
そもそも自分が何故こんな場所にやってきたか。
理由は簡単だ。
自分以外のユグドラシル種がいるのではないか?
それだけが理由、ハイエルフよりも魔物が気になる。
それだけの理由で甘い誘いを断った自分が今、ココに居る。
エレナと別れてまで…癒しの道を破棄した理由。
それはただのきまぐれ、と言いたい所だけど。
単純に逃げたんだろうね。
魔物として、世界を戻したとはいえ
一度世界を滅ぼしかけた自分なんだ。
癒しを得るには、もう少し時間が欲しかった。
それに、今の自分の心が魔物寄りであるうちに。
気になる事は全て調べておきたい。
癒しを得てからだとこんな場所。
こんな生理的な恐怖を感じる場所なんて近寄る事すら出来ないと思う。
この領域、観察すればする程に。
植物の枝、枯草、唾液や粘液で固めたような、なんというか紙的な質感の。
所謂、蜜蝋というモノで作られているようだ。
見れば見るほどにハチの巣としか言えないモノにしか見えない。
他の物には例えられない外観なのだが。
幾ら魔物とはいえ、それだけでココまで巨大な建造物になるとは思えない。
『世界樹干渉』というスキルを持つ自分なら感じられる。
あのハチの巣のような領域には自分のような力を持つものが関わっている。
そう確信しているから、今こうして自分はこの場で彷迷っている。
入り口…と呼べる所は等間隔にて配備されているが立地面ではなく。
崖となっていたり、地上から離れた部分へ設置され。
地上の生物にはまず侵入できないような作りとなっていた。
思えばこのハチの巣要塞のお陰で行動範囲の一区画は断絶されていた訳だ。
良くもまあ、こんな巣を築き上げたものだ。
ヨルムンガンドの時には気にも留めなかったが。
今の姿で間近で見るこの城塞の存在感は凄まじい。
どれだけあの姿が規格外だったか。今に考えれば末恐ろしい。
さて、そんな事よりも現状を見よう。このハチの巣、どう攻略したものか。
…そもそも争いに来たわけではないのだが。
お友達です仲良くしましょう。なんて出来る訳がない。
今…距離をおいての見物中なこの時でさえ、威嚇行動を取られているのだから。
それ以上近づけば今すぐにでも攻撃を開始する。
そんな意思がありありと伝わってくる。
思えば魔物同士で仲良く出来た事等。
同系統の種族であろう者達と一時的に行動した過去があるだけだ。
同じ魔物なのだ、交流を重ねて仲良くしよう!
なんて出来れば楽なんだけど、今までの経験から察するに。
敵対されずにまったりねっとりの対話をする材料は持ってない。
さてと、流石にそろそろ覚悟を決めるか。
意を決してハチの巣地帯へ潜入するのは決定事項だが。
戦うか? コソコソ隠密行動と行くか?
表立って、敵対行動はしたくない。
かといって見つかってしまえば同じ事。
ならば成り行きに任せるとしよう。
迷ったらいつもの流れに任せる系の行動に限る。
まずは隠密行動! 此方スネーク。守護者よ。サポートを頼む。
―――確認
トゥルルルル とぅるるるるー
与えられたミッションはユグドラシル種を発見し 接触後に対話する事
単身で何の装備も持たず潜入ですが元より裸ですね
何の心配もいりませんでした
検討を祈ります ぴゅーん
守護者に裸言われた。
確かに魔物だし何も身に着けてないけどさ?
しかし守護者も変な擬音入れないの。
ずっとそれ続けなくちゃならない使命感が発生してしまう。
まあそれはそれで良いのだが、今思いつく問題は。
潜入御用達の『液化』が使えない事だ。
あれ便利だったんだけどねぇ。
修復してるらしいけど、いつ頃戻るの?
あのとろける感覚は、ちょっと惜しい。
―――確認
なんとも言えません
転生からのスキルロストがそもそも想定外でした
適正は問題無いので必要なのは時間のみです
なので今回は『液化』のスキルには期待せぬよう願います
それとも日を改め再取得しなおしてからにしますか?
否。今やる。気になりすぎて他の事が出来んのだよ。
それに…自分が思うような相手であるならば
『液化』した所ですぐにバレる。
それでも潜入しようと決めたのには、特に理由はない。
単にちょっと自分に厳しく、不利な条件を与えてイジメたい。
そんな気分だったとしか言えない。
気が重い。この場所も前世で蹂躙してしまった場所なんだろうなと思うと。
まあ気にする事ぁ~ないと気持ちを切り替えねばならん。
ロードを挟んだのだ…一切の記憶等ある筈は無し。
始祖竜ユミル…蛇王アスピク…ハイエルフのお嬢さん。
アイツ等は例外だっただけ。
その例外を引き起こす要因は自分との深い接触だ。
それ以外に今の所考えられん。
その例外の件もあるが、やはり…
全面的に争うつもりは無いという意思だけは見せておく。
なるべく無用な戦闘は避けねばならぬ。
基本的に食べる…以外の行為で命を奪いたくはないし。
あとは所謂、防衛行動による不可抗力。
それも…最小限に留めよう。
全て、無力化させる。
出来るのであればノーキル不殺プレイだ。
相手が知恵ある魔物であるならば…
意図が通じるかもしれない。
淡い期待だが、自分が決めたのだ。
失敗したらその時はその時。ロードに甘える思考!
こんな能力があるが故に。
失敗する方が難しいというものよ。
とはいえ…初見はしっかり楽しまないとね。
* * *
主人公の判断により、ハイエルフ編は廃止されました。
潜入。ハチの巣要塞が始まります。




