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ドラゴンとの遭遇

 何度かの長い眠りについた頃だろう。


 慣れた。馴染んだ。理解が出来た。

 我ながら適応力が凄い。恐ろしいものだ。


 意識が覚醒すると、自分の体の具合をチェックする。

 今の自分は、今までの自分は、なんだったか?


 そうだ、今の自分は…自分の姿は。

 『ヨルムンガンド』となっていた。


 ………あのう。

 自分、『ワールドイーター』じゃなかったんですか?



―――確認 反応あり 反応確認 もしもし 生きてますか?



 はい、生きてます。

 とんでもない事をしてきたと自覚しています。

 その自我もいつまで持つか分からないので手短に。



―――確認


・『ヨルムンガンド』

 世界を取り巻く程の大きさを持つとされる巨大な蛇の魔物。

 毒の息で神をも殺すと神話で伝えられている。

 現世で確認されている固体は無し。新種です。

 故にその他の情報は一切無し。


・『ワールドイーター』

 世界を食らい尽くすと伝えられる蛇の魔物。

 頭部を潰しても胴体を切断してもその命を断つ事は難しいとされている。

 数百年前に世界を食らい尽くさんと現世に現れ。

 ドラゴンに討伐されたという逸話が残っている。



―――確認

 『ワールドイーター』より『ヨルムンガンド』へ進化しました



 へぇ、全く記憶にございません。

 一体…自分の身に何が起こったのでしょう?



―――確認

 『ワールドイーター』へ進化した時点で異変が起きました

 此方の呼びかけは一切通らず。

 何度か『セーブ&ロード』を使用しましたが、即座に『ワールドイーター』へ変身

 一切の自我が確認できず。守護者がなんとかしました。感謝をどうぞ。



 ………なんだって? 一体なにが?

 ずーっと食って寝てと繰り返していただけの気がするんだが。

 だが守護者が言うのだ、助けられた…のだろうか。

 未だに理解が追いつかないが。

 感謝しよう。でも後で詳しく話を聞かせて貰うよ。



―――確認

 現在はデータ3よりロード後。10年が経過しています。

 既に世界に存在する人類の6割を主が食らい尽くしており。

 最後の都市は情報を整理するに

『アスピス』が恨み事をネチネチ呟いてる。

 教会が残るとされる聖都のみです。



 ああ、何かを食らっていたと思てはいたが。やっぱりそういう事だったのね。

 となるともう、自分の存在は人間の敵で確定的に明らか。

 人間世界を敵に回してしまった。流石にロードをする以外に戻る事は出来まい。

 ロードして世界を戻しても永久に人間側の敵になってしまうものなら。

 自我を取り戻す意味なんて無くなってしまうかな。

 考えるのはやめておくとしよう。後回しだ、そんなものは。  



―――確認 心配したぞ 良く戻ってきたな ~>`)m


 

 ああ、そういえば。『アスピク』くんも自分の中にいたのね。



―――確認 死にたくなったら我が食ってやるから安心せい ~>°)m



 ………まだ得慮しておきます。でもアレに食べられるならと…

 ………ちょっと心が揺らぐのは内緒だ。



―――確認 ともあれ とんでもない事になってるぞ ~>°)m



 …ん? とんでもないこと?



――m(`<~ ドラゴンに目を付けられた 今のお前じゃ敵わんだろうな



 …へぇ。ドラゴンねぇ…ドラゴン?

 あの、ドラゴン? 力の象徴みたいな系の?



―――確認

 すぐに襲ってくる様子はありませんが

 敵対の意思を感じました



 うーむ、初ドラゴンか。見てみたい。

 だけど敵対してるみたいだし、そもそも。戦えるのか自分?

 体を動かすのだけで精一杯なんだが。



―――確認 自我が戻った弊害ですね



 全くです。本能のままに動いていたあの感覚。

 あれを取り戻さない限りにはどうしようもない。

 何度でも死ぬ覚悟を決めて覚えるしかないか。

 戦うのであれば…『蛇王の呪い』を使わずに打倒してみたい。

 そんな思いもあるし。念の為にセーブをする。



―――確認 データ1にセーブしました



 意を決し、鎌首を持ち上げ外界へ頭を出したその時だった。



 ピュウゴォオォウ!!!



 この世の物とは思えない音がした。

 頭部へ物凄い衝撃を受け。

 体が重機で高速で引っ張り上げられるような。そんな感覚を覚えた。


 あれ、懐かしいな。この感覚。

 自分より強大な相手に成すがままにされる。この感覚。


 それを理解した時。

 行動に移すのもその瞬間だった。



 グゥウゥギッギィィィイァアアアアーアアー!!!!!



 力任せに引き剥がす!

 どう動かせば良いのかなんて考えない。

 どうせ分からんのだ。

 この体躯だ。ゴリ押さねば。状況を理解せねば。

 この世の物とは思えない悲鳴であるなら此方も負けてはおらん。



 力の限りに、叫びながら、暴れるだけ暴れてやる!



 頭を振り回す度に衝撃音が聞こえる。

 なんだこりゃあ…しかも思うように体を動かせない。

 体を動かせばどこかしらに引っかかり破砕音が鳴り響く。

 動きづらいったらありゃしない。

 飛び上がれば引っ張り降ろされ体中からガスや異様な体液が漏れ出るような妙な感覚を覚える。

 そもそもに…何も見えん!

 首が千切れる? 胴体今どの辺?

 スキル!スキルは何かあるか!?

 激痛で集中出来ない!痛みが全ての行動を阻害する!

 血反吐だかなんだか分からないモノが頭部に溢れて何も考えられん!

 動け!暴れろ!とにかく…引き剥がせ! 



 時間にして1時間は格闘していたようだ。

 守護者が必死になるぐらいに何度も声をかけてくれていた。

 また自我が失われるんじゃないかと思っていたらしい。

 

 そのお陰もあってか引き剥がす事には成功した。

 自分の状態など分からないが首だけは繋がっている。

 見れば首元に食らいついていたであろう、その魔物は自分よりも小さかった。

 いや、本来であれば相当にデカイ筈なのだろう。


 自分の体躯が規格外すぎるだけなのだ。

 『ヨルムンガンド』へと進化した自分のデカさが異常すぎるだけなのだ。


 客観的な構図としてみるのであれば特撮映画の怪獣役vs戦闘機


 ぐらいにサイズ差があるではないか?

 だけど、強さで言えば、その戦闘機の方が強いという

 さらに奇妙な図であると推測される。


 そして先程の組み付きで理解が出来た。

 目の前のドラゴンであろうソレは確かに今の自分よりも格上の存在だ。


 あくまで、今の自分より…であるが。

 睨みあう中で首元の再生が終わったのを確認した。

 ドラゴンであろうその姿を観察していたが。

 まさしく思い描いていたドラゴン像の…ミニチュア版といった所だ。

 

 広げた翼は体躯に見合う大きさではあるがちょっと物足りない。

 雄々しい角が生えているものの、なんとも自分の視界から見下ろすソレは小さい。

 爪も牙も。宝石のように胸元で輝く鱗も何もかもが魅力的だが。やはり小さい。


 何度も繰り返すようだが、デカイ筈なのだ。あのドラゴン。

 今の自分から見れば小さいだけである。


 どう戦う?

 むしろ自分はどう戦える?

 何が出来る。何が使える。

 やはり魔法か?それとも触手か?

 思いつくのはその二つだけだ。


 体当たり。牙。ありえない。

 もう一度組み付かれたらまたあの苦しみを再び味わう事になる。

 尻尾での攻撃も考えたが、そもそも尾での攻撃はその尾が見つからない。

 地平線の彼方まで体が続いてる。どこまで長いんだ。自分の体。


 そもそもなんで、自分は襲われている?

 人間相手ならまだしもだ。


 相手はドラゴンだ。

 人間を守るためか?

 それとも世界を脅かす魔物を退治する為か?

 そういえば、『ワールドイーター』を討伐したとか説明にあったな。

 その系の相手だろう。多分。


 対話…してみたい。

 そういえば『呪術』使えるか?

 思うが早いか、念じてみる。



(おはようございます 私はヨルムンガンド よろしくね!)



 言葉が思いつかなかった。後悔はしていない。

 でも通じているかもしれない。怪訝そうな顔をしている。

 ちゃんと表情あるんだな。ドラゴンの表情っぽいのが見える。

 明らかに…困ってた顔をしているぞ?



「オハヨウ ワタシは始祖竜であるユミル ヨロシクね」



 ………まじっすか?

 返事来ちゃったよ。何も考えてないっす…

 でも…これで話せるのが分かった!

 次は…次はどうする?



(えー 本日はお日柄も良く………暗闇に包まれてますね)



 全っ然!………だめだぁ!!!

 空見てみたらすっごく毒々しい暗雲立ち込めてる。

 そもそも何を言ってるんだ自分は。

 今すぐ『ロード』して時を遡りたい!



「分カッテイルようで何ヨリ 少しオドロイタが ヤル事はカワラン」



 ………おぅ、やっぱり駄目みたいですね。

 殺されるわ。確実に。でもどうせなら。

 何度でも挑んで、1回ぐらい勝ってやらねばな。

 ついでにやりあう前にも情報は欲しい。

 意思は通じるんだ。少しぐらい話をしても良いだろう。



(その前に一つ。折角自我を取り戻せたんだ。お前の事が知りたい)

(目覚めたばかりで。自分の体すらまともに動かせんのだ)



「…イイダロウ。我ハ世界の理を守るべく使わサレタ竜族の一つ

 オマエのヨウナ世界を破壊し尽くすかのヨウニ暴れマワルダケの

 力を持チスギタモノを止める役割をモッテイル」



(つまり、私はやりすぎたという訳だ)

(理解はしているが。正直。今の状態の私は木偶の坊)

(私を殺すというのなら。抵抗はさせて貰うが。期待はするなよ?)



「何ニ期待シロトイウノダ?我はタダオマエを止メルダケ」



(なんだ。戦いを愉しみたいとか。そういうのは事では無いのか?)

(先にも言ったが。ついさっき自我を取り戻した所でね)

(戦おうにも体もロクに動かせん程度の魔物だよ)



「…フム。ドウヤラ。私が思ッテイルヨウナ固体デハナイという事カ」



(このまま自我が無ければ、そのような個体だったのだろうけどな)



「…ダガ。危険ナ個体でアル事には変わりナシ」



(なら聞いてくれるも聞かぬも良いが。ただのお願いだ。良いか?)



「イッテミロ」



(少しだけ時間をくれないか?)

(せめて自分の体の動かし方ぐらい確認しておきたい)



「ソノグライなら構ワナイ。ニゲヨウ等とオモワヌコトダ」



(感謝する。この体躯で逃げられるとは思わんし。逃げようとも思わん)

(ただ少し派手に動くつもりだから離れておいてくれ)



「ワカッタ 信ジヨウ 準備が出来タラ言エ」




 …これで無駄に殺される回数は減ったかな。

 中々の結果に持ち込めたのではないか?

 操作方法チュートリアルぐらいの時間は稼げた。

 守護者よ。セーブだ。この機会無駄に出来ん。



―――確認 データ1にセーブしました 検討を祈ります



 さて、後はこの始祖竜とやらの忍耐力がどの程度のものか。

 気は長そうなイメージはあるが。あまり怒らせたくはない。


 多分だが。

『不死の肉体』『蛇王の呪い』すらもどうにかしそうな覇気が備わっている。

 こりゃあ。本当に死ねるかもしれんな。



   *   *   *

主人公は隙あらばドラゴンをペロペロしたいと思っているようです。

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