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魔物となりて王を目指す

主人公とは思えぬ悪の道を進むようです。これ以降は暫く悪の道。ご注意を。

 自分の中の守護者以外の存在。

 アレとの対話は初めてだった。そもそも自分は何を感じていたのか。

 酔った勢いで、その勢いに任せてあれやこれやと言ってしまった。

 それと似たような感じの事をしたような気がする。

 冷静になってみてみれば…この世界で自分は終わりかもしれないな。


 怖い、死ぬかもしれん。アレの機嫌損ねたら自分どうなるのだろうか。

 感じていたが、自分の中にいる存在がどんなものか。

 守護者も分かっていたんだろう?



 ―――確認 現状 悪くは思われていないようです



 はい、そうですか。悪く思われたらどうなると思います?



 ―――確認 その質問には答えられません



 はい、分かりました。せめて慰めて?



 ―――確認 このヘタレ蛇



 はい、元気になりました。なので少しぐらいはやさしくして下さいな。

 でもまあ…今更だ。ソレがどれほどの存在なのかは分からないが。


 ロード中のあの感覚から、何かが自分の中に居る感覚を毎度ながらに感じていた。

 長く生き抜いた後のロード時間は体感で長くなっていく。


 10年ぐらいの時を生きて。あの程度のちょっとした接触しか出来なかったが。

 どうにか…ほんの少しの対話をする事が出来た。


 自分の中に眠る『蛇王』とやらと仮定するが。

『蛇王の呪い』とやらもそれに由来する物…なんだろうか。



 …

 ……

 ………

 決意するとしよう。

 念じて分かるかどうかは知らないが。

『蛇王』よ、お前の名前は知らないからそう呼ばせて貰う。


 今回の世界は君を蘇らせる為に自分は行動しよう。

 それが世界を敵に回す事になってもだ。

 理解しているかは分からんが、言ったことは守るさ。自分は。

 こう…言っておかなければ、また逃げてしまうだろうから念入りに。



 さてと、今回の世界で生きる者には悪いが。

 今回は自分の命をかけて、遊ばせて貰おう。

 国の名前も係わった人物の名前も…何も覚える気がなかったのは

 心のどこかで拒否していたからに他ならない。


 どうせ先延ばしにするのであれば。

 やるならば今。この場で。自分は身も心も魔物となるのだ。


 …そう、決意を固める。固めた。自分は魔物。恐れられる存在になるのだと。



―――称号 『魔王の種子』を得ました


 

   *   *   *



 その日、世界に一粒の魔王の種子が誕生したと予言された。

 それが伝わると同時に慌しく世界が動く。


「『呪い』の存在を確認 対象の発見 可能であればその始末を」


 それが成長しきる前に速やかに発見、処理するべし。

 そう冒険者達に『呪い』の正体を正しく伝える事もなく森へ赴くように。

 クエストとしてその呪いを排除すべく各地にふれわまる存在があった。


 【ガルドラル教会】と呼ばれる存在であった。

 その教会の一室で。5名の男女が重苦しい表情で円卓を囲んでいた。


「早すぎる…前回の対処からまだ一月もたっていない…」

「予言によるとあと10年後には世界に災厄が訪れるとあるが」

「これもその災厄とやらの前兆なのかもしれん」


「冒険者には悪いが…呪いについては犠牲になってもらうしかあるまい」

「ですが呪いの存在がこうも短期間で現れては…」

「処理したものは確実な死を迎える呪い等と、知られる訳にはいかんのに」

「なぜ、こうも魔物の存在は我等の頭を悩ませる…」


「仕方あるまい。それ等を対処するのが我等の仕事よ」

「忌々しい魔物共め…。一体どうすればあの呪いを消し去れるのか」

「…魔人の存在にも悩まされている最中だというのにな」


「災厄とは、魔王の動向にだけ注意していれば良いかと思っていたが」

「………この呪いが災厄だとでも言うのか?」

「分からんか?【彼女】の予言が外れた事は一度もない。一度もだ」

「…その要因は分からんが、全ての可能性を潰し。

 災厄とやらの被害を最小限に抑えねばならん」


「判断を誤る訳にはいかん。今回ばかりは…

 災厄を防げる可能性が我々には無いと断言されてしまったからな」

「ならば我等にどうしろというのだ?」

「さっきも言ったであろう。被害を最小限にせねばならんとな」

「せめて…その災厄の正体とやらが分かれば良いのだが」


 彼等はこの教会という組織の重役達であったが。

 一人だけその場に似つかわしくない女性が口も開かずにただその円卓に座していた。


 【彼女】と呼ばれた者であろう女性は一切の口を開かず。

 感情と呼べる一切の表情も見せず淡々と周りの会話を聞き続けていた。


 彼等の様子を見てうんざりとしているのか。

 そもそも興味すらないのか。

 もしくは他の事を考えているのかも分からない。


 ただ一回。溜息をついた意外の一切の反応はなく。

 他の者達も気に留めた様子もなく。

 いつ終わるともしれない会話を延々と続けていた。


 

   *   *   *



 その日、いつもと変わらない日常が打ち砕かれた。

 冒険者の宿として賑わいを見せていた【蛇の通り道】


 ほんの数分で生ける者の大半が別のモノへと変貌していた。

 変貌していたという表現を使ったのには理由があります。

 死んでしまったであるなら。それで済む話だったのに。


 死んじゃった人もいたけど、それ以外の他の人達は、生きていたんです。

 私達は大きな蛇の魔物に襲撃された。

 確か『エビルパイソン』っていう魔物だったと思う。

 でも私の学んだ知識とは掛け離れた姿をしていました。

 手も足も出ませんでした。

 誰も逃げられませんでした。

 猫耳さんが食べられちゃいました。

 あの瞬間、あの表情は忘れられません…



 私達は死んだかと思った

 私達は生きていた

 私達は生きていたけど

 私達は蛇になっていたんだ



 何がなんだか分からないけれど。

 生きていはいたんだ。

 魔物になってしまった?

 猫耳さんは食べられてしまったけれど。

 他の冒険者の方も…襲われて…なんでこんな事に…?



 私以外の他の子達を見れば、

 私の記憶だと『ダークパイソン』って言う魔物と

『エルダースネーク』のような姿の者達に変えられてしまったようです。


 私はずーっとそれが夢と思い寝転がっていたせいか。

 反応が遅れていてるうちに放置されたようでした。


 他の方はみーんな、襲撃した『エビルパイソン』と思わしき魔物に付いて行きました。

 そして私もその後に続いていこうと思ったのですが。

 他のみんなと違い、自分は体が思うように動かせず、見失ってしまったのでした。


 私は。私は。途方にくれましたが。

 どうにかこの事を知らせたいと思い、どうにか手も足もない体を引きずり移動したのです。


 でもそんな努力も空しく。

 私は森を抜けられる事無く力尽きてしまったのでした。


 これが夢であれば。

 夢であればよかったのに。



   *   *   *



 その城は【グラニール城】と名がついていた。

 この世界の国としては中程度の規模の国ではあるが。

 その武力。兵の質においては高水準で整っていた国であった。


 だがそれも一夜にして落城の危機に陥ってしまった。

 原因は魔物の群れによる奇襲攻撃によるものである。


 城壁の外からではなく。内側から突然魔物が溢れ出したと言うのだ。

 その数は尋常ではなく。魔物自体の様子がおかしい。

 辺り構わず襲う者がいれば、逃げるだけの魔物もいる。

 挙句に、苦しむような素振りをみせ続け、動けぬ魔物もいた。


 奇襲により対応の遅れた、兵士達は戸惑った。

 魔物の湧いたと思われる場所で、助けるべき住民の姿が極端に少なかったからである。

 

 辺りには植物の根と思われし物がそこらかしこに存在し。

 建物が覆われ。中への進入は困難な場所も多く。

 さらにはその中にも魔物の気配があるではないか。


 兵士達は魔物が極端に弱い事を知り。蛇のような魔物だけで構成されているという情報を得た。

 淡々と作業的に魔物を処理し。残った住民の救出を行い。そして避難の誘導をする。

 時間はかかったものの、目立った民の死者は出ていない。

 もしや魔物に食べられてしまったか?

 と思うも、その体躯より大きな者を血痕一つ残さず綺麗に食べつくすとは考え辛い。


 なんとかなったか…そう思う兵士達の前に。

 森の魔物達の大群が押し寄せてくる。その光景が目に入る。

 血相を変え、兵士は城内に報告に向かったが。

 彼等の前に国王が姿を現す事はなかった。



 王座を打ち壊し。その上には蛇のような巨大な魔物が鎮座してたのだ。

 兵士達は声も出せず立ち竦む。

 なんて…巨大な魔物?


 城内がやけに静かであると気付いた時には既に遅かった。

 目の前の一人が蛇になる。

 さらに隣が蛇になる。

 そしてみんな。生きるモノ全てが…蛇の魔物となった。



 日が昇る。

 その【グラニール城】から人間と呼べる者は消え去った。

 その事に気が付くものはまだ、誰もいない。


 魔物は咆哮する。大地を揺るがす程の咆哮で存在を世界に知らしめる為に。

 その魔物の種族は『ソウルイーター』と呼ばれるランクB+と分類される魔物と良く似ていた。



 数日後。世界が大きくざわついた。

 魔王の種子が実を結んでしまったのだと報じられたからだ。



 間もなく各国による対応策が決められるだろう。

 冒険者募り、情報を集めるか。

 勇者を選定し、討伐するか。


 しかし軍隊を編成し、総力戦になる事は考えられないだろうと予想された。

 武力が万全であるとされた国が数日のうちに消えていた。


 各国のバランスが大きく崩れれば民衆の不安がどう転ぶか分からない。

 ましてや陥落したとされる都市の住民全ての安否が一切全てを確認出来ていないのだから。


 下手に情報もなく刺激を加える事により。自分の国が同じ轍を踏んでしまうのは避けなければならない。

 各国が慎重にならざるをえないのは仕方のない事であった。


 全ては、蛇の王である呪いの主の計画通りに事は進んでいた。



   *   *   *

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