表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/196

幼女と触手と蛇さんが

 お風呂屋さん並みに広い大浴場にてトラブル発生です。

 個人で入るには広すぎるようにも思えますが、考えてみればアレですよ。

 魔物用も兼ねているっていう説もあるんじゃないですかね?

 何個かに分かれて浴槽ありますし。

 滝のようにお湯を流すギミックもありましたし。


 ともあれ今はそんな事に思考を回す余裕は廃して周囲を見渡すも出入り口はこのドアだけ。

 窓やら排水溝やらありますが、自分もアリエルもすぐには通れそうもありませんね。

 しかしなんだってドアが開かなくなってしまったのか。


「一体何でなのよ? どういう事なのよ? 鍵なんて元から付いてないんだけど。」


 ふむ? 覗き防止に鍵を掛けていた訳でも無し。

 もう一度このヨルンがドアを押してみます。


 ぐいぐい。むぎゅーっ。


 ふむん?

 やっぱり微動だにしませんな。

 いや、動いてはいるんです。妙な感触なんですよ。

 押し戻されるというか。反発されているというか。


 ふむむ?

 一瞬ですが。

 視界全てが赤に染まった気がします。


 ふむぅ…?

 もしもヨルンに汗線があるとしたらその一瞬で汗まみれになっていた事でしょう。

 嫌な予感ではありません。確信を得てしまったのです。


 ふむむん?

 それが何か分からない。分からないのだが、覚えがある。

 アリエルを見れば不思議そうにドアの押し引きを試みている状態である。


 ふむふむ?

 アリエルは呑気な顔をして頑張っているようですが…

 ヨルンさん、どうにもならない恐怖の存在を前にして硬直中であります。


 この感覚、近所の子供のイタズラとか、暴漢が襲撃してきたとか、

 暗殺者がやってきて場を整えているとか、そんな可愛らしいモノでは断じてない。

 魔物としての本能と、自身の知識より導き出された答えが…

 確実に死ぬ。殺される。万分の1の勝率もあり得ない相手が近くに。


 近くに? どこに? 既に見えている筈なのに?

 一瞬感じられたあの強大な気配は何処へやら?


 そこまで考えて、アリエルがドアに体当たりを敢行しました。

 止めねば、止めさせなければ!

 あらん限りの声量でヨルンは鳴き声を上げます。


 少なくてもドアから離さねばアリエルの身が危ない?

 相手にその気があるのなら既に手遅れ…の筈ではあるのだが。

 何もしないよりは良いだろう。



 クルヌギャー!クルヌギャー!



 叫ぶヨルンの声を聞き、何かを察したアリエルは此方へすぐさま寄ってくる。

 全裸の幼女が素早い動きでヨルンの傍へやってくる筈だった。

 どさくさに紛れて体でソレを受け止めてやろうかと構えていたヨルンは、

 その少しばかりの時間で迫る危険を忘れて楽しんでやろうと思っていたのに。


 あと一歩という所でアリエルの動きが止まる。

 止まるだけならば良かった。

 まるでビデオの逆再生ボタンを押したかのように、アリエルは此方へ向かうそのポーズのままドアへ引っ張られていったのだ。

 その速度は激しく、壁に衝突するかのように。

 脳裏に過ぎる結果は一瞬で骨が砕け、肉が飛び散り、壁の染みと化してしまうかとの予測をしてしまう程の勢いだった。


 ぽよんっ…?


 予想に反し、柔らかな弾力でアリエルを弾くドア。

 そのまま重力を無視したかのように続けて壁にぶつかり続け、跳ね続けるアリエル。


 ポヨンッ、ポヨン、ポヨン。ポンポン、ポンッ…


 幼女が壁に貼り付けられた。

 その手足には、そんな幼女を拘束するかのようにプヨプヨしていそうなゲル状の何かが巻き付いてた。

 足枷、手枷、首にも輪っかで、体中に規制に引っかかりそうな特に危なそうな部位は透明度のないグネグネした物体で覆われていた。

 あれですか、これは触手でしょうか?

 ゲル状の触手ですね。触手界隈の中でも比較的グロくもなくソフトで優しい触手ですよね?

 スライム系の魔物から良く放たれて、対象を傷つける事なく動きを封じる系の。

 まあスライムの種類によっては、掴まれた途端に消化されたりなんなりのグロい展開があったりしますけど。

 今目の前で起こっている事象は、どちらかというと前者で動きを封じている感じですな。

 そんな触手はアリエルの口の中へ侵入し、奥へ奥へと突き進んでいっておりました。


 ああ…考えている場合ではありません。

 一体なんだってこんな事に?

 裸の幼女を触手で拘束するなんて、けしからんにも程がありますぞ!

 そもそもに…アレは一体なんなのだ?

 なんだって突飛も無く現れた?


 これがアリエル関連で絡んでくる奴等?

 触手は絡んでますけど、奴等っていうからには人間だと思ったんですが。

 そいつ等が使役している魔物とか?


 どちらにしろ今は行動あるのみ。

 あの卑猥な触手からアリエルを助けねば! 

 幼女を苦しませるような触手に遠慮はいらぬ!


 しかしテールハンマーではアリエルに傷をつける恐れがある。

 ここは自分自身、魔物として生まれ持って得ている蛇の牙を受けるが良い!


 左足付近の触手にガブーッ!


 もぐもぐと顎を動かす前にパシュンと弾けて四散する触手。

 あらま、意外とあっけない?

 

 続けて右足の触手にガブリンチョ!


 此方もあっさりパツンと弾ける触手だった。

 反撃もこなければ声も音も聞こえない。

 ええい、訳が分からんがお口の中の触手も食らってやるわー。

 ついでに左手右手と絡みつく触手も食ってやるわー。


 ガップン。ガブガブー。


 という訳で残りは胴体に巻き付く触手なのですが、アリエルに巻き付く触手が増えてるんじゃないですか?

 四肢に一本ずつだった筈の触手が各所3本ずつとなりより強固に拘束してるではないですかー。

 一番ヤバそうなお口責めの触手も、心なしかぶっとくなってますし。


 幼女のお口にそんな太い触手をぶちこむなんて…許すまじ。


 一体どこのどいつなんだ。

 本体なんて頭文字の欠片も見つからぬ。

 ええい、こうなれば時計回りに噛み千切ってくれるわー。


 パクパクパクパクパクパクパク。パワーエサ欲しい!?


 という訳でアリエル周りを1周しましたぞ。

 足りないので2周しましたぞー。

 まだまだなので3周しましたぞー!


 結果は変わりなしです。

 ああ…時間だけが過ぎていく。

 目的があるとしたら、時間稼ぎなのでしょうか?

 相手さんから再生以外、何のアクションもないってどういう事よ?


 もしこれが単なる時間稼ぎだとしたら、詰みですね。

 目論見通りに時間を稼がれております。


 そんな事を気にする余裕もなく、現在進行形で触手をガンガン食べ続けてますが。

 ヨルンさんのお腹たっぷんたっぷんです。

 水でデブっちゃいますね、ぽよんぽよーん。


 動き辛いったらありゃしないので消化吸収してしまえ!


 気合でお腹に命令を送ればお腹が引っ込んでいきました。

 やったぜ、ヨルンさんはデブじゃなかった。

 味としては…単なる水ですな。

 噛み砕けば動かなくなる触手でしたし不思議である。


 思いつく所で水と言ったらお風呂場ですし辺りは水が豊富です。

 そんなモノをこれ以上食べ続けても何ですな。

 でも食べちゃう、アリエルさん苦しそうですし。

 というかアリエルさん息出来てないんじゃないですかね?

 触手に溺れてるといるという表現で合ってます?

 触手に巻かれる幼女を見ればお腹がぽっこり膨れてる気がします。

 流石にアリエルにはお腹に溜まった触手を強引に何とかできる手段なんて無さそうですからね?


 ぐぬぬ…お口の中の触手が痛々しい。

 対抗手段も見つからぬ、むしろ探していなかったから少しは考えるべきだろう。

 あれはもう肺の中全てを侵食されてしまったのではないか?

 触手をぶち切って、気道を確保した所で既に手遅れだろう。

 あのゲル状物質全てを取り除く方法さえあれば良いのだが。


 こういう時はスキルだ!

 何か…何かあった筈だ。今の自分でも出来そうな何かが?

 考えるのだ、多分この程度の事なら簡単に出来た。

 でもアリエルのお口の中にヨルンさんは入れません。

 小さいですし、幼女のお口ですもの。


 であるならば、キス! 幼女にキッス! 

 ただのキスではありません。

 舌を入れて濃厚でディープな…でもありません。

 魔法の力でこのゲルを操作するのです。

 液体操作であります!


 ペロペロ―。

 幼女をペロペロー。

 幼女のお口に舌をペロペロー。


 ヨルンさん変態じゃありません。

 大雑把な操作ですが、ゲル状触手を絡め取る。

 ヨルンさんそんな難しそうな行為がちゃんと出来てます。

 ゲル状触手を捉えることが出来ています。


 このまま引き抜く事が出来ればアリエルを助ける事が出来るでしょう。

 生きてさえいれば、あのペストマスクのサイレンの所にでも行って治療して貰えるだろうし。


 準備は完了、アリエルに残された時間がどのぐらいあるか分からない。

 やーってやるぜー! 引き抜くのじゃー!

 液体を固定さえすれば後は力任せにっ!


 ゴポゴポゴポゴポッ!ゴポォー!


「あひぃ、ゲホッ…ゲホッ…ゴホッ! あふっ! えほっ! うえぇ!」


 見事に引き抜けましたが、荒れ狂う触手がヨルンをぶち当たり、

 勢いに任せて吹っ飛ばされてゴロゴロ転がされましたよ。

 でも…アリエルが生々しく液体音を交えながら咳き込む音が聞こえます。

 ヨルンさん間に合いました? 成功しました? アリエルは怪我とかしてません?


「あい…な、何なのよ! えふっ…えふあっ! あうぅ…。。。」 


 しかし触手を一度引き抜いたといっても未だにそれ等は健在である。

 未だに拘束され続けるアリエルを目掛けてゲル触手が向かう。

 まずいですよ。ヨルンさん直に止められる間合いじゃありません。


「ああー、うっとおしいわ!」


 そんな触手に幼女のヘッドバッド攻撃。

 触手は爆砕霧散。幼女ツエー。

 時間は一瞬稼げましたな、ゲル状触手の再生も一瞬です。

 埒があかんぞ何かないか、手はないか?

 手は無かった。ついでに足も無かった。

 蛇系ノルマを達成しつつに考える。


 あのゲル状触手の弱点を探すも水の弱点はといえば、電気ですか?

 アリエルがビリビリする未来しか見えません。

 それはそれで見応えがありそうな気がしますがそんな事はしたくありません。

 そもそもにヨルンさん電気は使えませんから試せない。


 他の弱点は思いつく限りで蒸発させたり吸い取ったり、でも今まで食べ続けてもダメでしたし。

 ならば外部からの水はどうなのだろう?

 そう考えて、目に入るはお湯を滝のように流すレバー。

 分からんが、現状何をしても無意味なのだ。

 なんだって試してみるモノさ!


 ガコンッ…


 レバーを引けばヨルンの頭に流れ落ち続ける温水。

 うおー! あったけぇー! だけど今はあったまる時じゃあないぜー。


 ガブガブガブガブ。ゴクゴクゴクゴクッ!


 腹んナカがパンパンだぜー。

 ジョバジョバとヨルンさんのお腹に流し込まれるお湯は一体どの程度入るのか。

 キャパシティーがどの程度か分からんのですが長々と飲み続けても仕方ありません。

 この程度で十分であろう量をその身に取り込み…

 狙いを定めて。リバースじゃあー!


 ブシャー!


 命名…ハイドロリバースですぞ。

 お腹に溜まったお湯がポンプのように勢いよく射出されました。

 なるべく、アリエルには引っかからないように触手へ向かってドバドバ吹っかけております。

 何気にMPが減っている感覚を覚えているのですが…スキルですかコレ。

 ともあれそんな行為の結果の程は如何となりました?


 …

 ……

 ………


 幼女に纏わりついた触手はぶくぶくと太り自重に耐え切れず地面へ落ちていく。

 どうやら狙いに沿った結果の一つを得られたようだ。

 しかし…それも単なる一時しのぎだったと直に気がついた。


「一体何なのよコレー! なんでこんなの沸いてくんのよ!?」


 叫ぶアリエル。その声色から必死な様子が伝わってきますよ。

 よーく見れば、太った触手から生えてくる無数の触手。

 それは幼女の足元から、すくすくと元気に育ってます。

 どうやら予想していた結果の一つが始まってしまったようだ。

 水分を得てパワーアップしてしまったのですね。


 やはり、今の手持ちで触手に襲われる幼女を、アリエルを助ける事は出来ないのか?


 最早考える思考の枠は残っていない。

 アリエルが何か指示でも与えてくれればその通りに行動してやるのだが、当の本人はあの状態。

 自身が可能な行動、あるとすれば…残る方法は一つ。

 しかし…隠し通すと決めていた呪いの力をアリエルの前で使って良いのか?

 そもそもに、自分へ向かっての攻撃が無いこの状況で呪いの力を発動する事が出来るのか?


 答えはノーである。

 発動を試みましたが…どうやら今のこの状態では呪ってやるのだー攻撃は不発のようですね。


 幼女に纏わりつく触手には…

 自分ではなく、アリエルを襲う触手に対しては…

 ヨルンの持つ切り札である呪いの力を発動する事は叶わなかった。

 何かしらの手順を踏めば出来そうなのだが、今は思いつかない。


 つまり手詰まりである。


 ヨルンさん…ガブガブ触手を呑み込む事しか出来ません。

 触手水中毒でも起こしそうですよ。

 お腹たっぷんたっぷんです。


 ガブガブガブガブ。パクパクパクパク。


 そんな無意味な時間を続ける事数分間。

 アリエルも必死に頭突きで触手に応戦しておりました。

 決定打は無く、手を休めれば幼女のお口に触手がぶちこまれます。


 なんでこんなに執拗に狙ってくるの?

 そんな疑問がようやく沸いてきました。


 そういう趣味があるの?

 幼女の空いたお口を眺めるのがお好きなんですか?

 それだけに飽き足らずお口の中に入っちゃうんですか?

 そのまま奥まで突き進んじゃうんですか?

 ヨルンさんなら奥まで入ってお昼寝しちゃいたいぐらいです。

 いや、別にヨルンさんにそんな趣味がある訳ではありません。

 変な事を考えるのはよしましょう。


 多分ですが、この触手の目的は時間稼ぎと予想していました。

 ならばこの触手自体に意思はあるのでしょうか?

 答えはノーであると推測します。


 となれば自動で動いてるんじゃないですかね?

 単純な命令を与えられて、それだけを実行する為に動いているとか。

 この触手の行動を振り返るに、今までに得られた情報の全てを鑑みても、

 お湯にちょっとした魔力が籠ってる程度の代物ですし。


 その魔力を狂わせる事が出来れば?

 と言ってもアリエルの口から触手を引き抜いた時に同じような事をしていたんですよね。

 ならば今度は意識して命令系統の操作をしてくれようではないか。

 触手に触れて、自らの魔力を割り込ませ、命令してあげましょう。

 ただの一言、単純な命令を。


 ―――止まれ。


 その一言であっさりと触手は止まった。

 マジで? 本当に止まったの?

 いやぁ、ダメ元でやったんだけど楽勝だったわー。

 そんじゃ続けて命令を行ってみましょう。

 

 ―――元に戻れ。


 その一言であっさりと触手はほんのりぬるくなった、ただのお湯となった。

 マジで? あっさり解決だよ?

 いやぁ、出来るとは思ってたんですよ。

 なんとなくこういうの…得意だと感じてましたし。


「あれ、終わり? 助かった? …っていうか。何だったの? コレ?」


 分かりません。密閉されてしまった室内。

 あまりに突然であった触手の来訪。

 現状の把握をしようにも、ヨルンさんは首を傾げるばかり。

 そしてそれはアリエルも同じでお互いに心当たりなど無きに等しい。


 一先ず、この場に居続けるのは良くないと思われる。

 開かぬドアをどうにか開いて外に出ようとヨルンさんが尻尾のタマゴをドアへ叩き付けようと尻尾を振り上げた時だった。


「ようやく到着しましたぞー」


 今の今まで、壁の如しに開かなかったドアだった物。

 必死になって押したり引いたり体当たりを敢行したりとしていたのに…

 向こう側から普通にドアが開かれましたね。


「うんうん、いますね。当たりです」


 響いた声は自分達へ向けられている。

 自身の魔物としての本能が、かつてない程の危険を告げていた。

 視界の全て。ありとあらゆる見えるモノが赤く染っている。


「しかし未だに健在とは、驚きましたな」


 どうやら、触手での時間稼ぎは終了。

 本命様の登場って所ですか。

 一体この来訪者には何の目的があってやってきたというのか。

 何か喋ってますし話を聞き出す事ぐらいは出来るかもしれない。


 アリエルさん。お任せしましたよ。

 そう意思を込めて、ぼーっと佇む裸の幼女と顔を見合わせる。


 問題は山積みであった。

 ヨルンの思考は、せめて服を着させてあげたい。

 そんな方向にまずは向いてしまうのだった。



   *   *   *

最近のアニメって、このぐらいの戯れ普通にしてるイメージある。

殆どアニメとか見てないから偏見です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ