違うやり方で
試作は、いくつも重ねられた。
失敗は、何度も繰り返された。
それでも——
崩れない配合が、ひとつだけ残った。
そして、回復薬は完成した。
数日後。
レオンの処刑は、公開で行われた。
広場には人が集まり、怒号が飛び交う。
石が投げられ、罵声が浴びせられる。
それでも、レオンは目を逸らさなかった。
何も言わない。
弁明も、否定も。
ただ、群衆を見ていた。
その視線の奥に、何があったのかは分からない。
それでも。
最後まで、言葉を曲げることはなかった。
ルーファスは、記録を取っていた。
数値を確認し、変化を追う。
ベッドに横になったまま、アイリスはそれを見ている。
顔色は戻りきっていないが、意識ははっきりしている。
「……レオンさんの処刑、今日の昼だったんだって」
アイリスが静かに言う。
ペン先が、わずかに止まる。
「……そうか」
短く返す。
それ以上は、続かない。
しばらくして、ルーファスが口を開く。
「……レオンさんって、天才だけど馬鹿だよな」
ぽつりと落とす。
「……レオンさんほど頭が良かったなら」
「もっと他のやり方で、差別をなくす方法も考えついただろうに」
すぐに言葉が、続かない。
「……なんで、あんなやり方をしたんだろう」
アイリスは、少しだけ視線を落とす。
「……強い気持ちって」
静かに言う。
「向け方を間違えると、自分を壊すから」
ルーファスの手が、わずかに止まる。
言葉は返さない。
ただ、聞いている。
「……僕は」
ぽつりと落とす。
「手の届くところで、やってみようと思う」
少しだけ、言葉を探す。
「……あの人みたいなやり方じゃなくて」
わずかに、言葉が途切れる。
「それくらいしか、出来ないけど」
アイリスが、少しだけ笑う。
「……それでいいと思う」
やわらかく、続ける。
「……出来るよ」
「だって、回復薬も作れちゃったんだもの」
軽い声だった。
ルーファスは、何も言わない。
ふと、思い出す。
——貴方ならできる
その言葉に、何度も助けられてきたことを思い出す。
折れかけたときも、迷ったときも。
胸の奥に、わずかに熱が残る。
それが、消えない。
理由は、分かっている。
だが——
何も言わない。
視線を、手元へ戻す。
届かない距離があることを、知っている。
胸の奥に残るそれを、そっと押し込める。
それでいいと、思った。
そのまま、ペンを動かす。




