5話 デカい都市、デカい偉い人?えらいこと
■惑星ネザリア 森林区域中心都市 行政管理部 城
「それでは担当官が来るまで待機を。用を足す場合などは我々に一言いただければ」
「何から何までお手数をおかけします」
「これも仕事ですから」
概ね2日ほどの移動工程となったが、都市に到着したらしたでほぼ隔離状態のまま移動。そのまま丸1日は健康診断や検疫等の検査をずーっと受けていた。そんなもんでこの惑星に落ち……降り立ってから3日ほど経ってしまった。途中ポリの採血や予防接種の同意に連れ出され、大人しくしてもらうように頼むこともあったが。
ポリは相当暴れたようで……女性騎士らで包囲するレベルを見せられて彼女らに同情をしたわけだが・今行われようとしているのは嫌がる犬を連れて行く予防接種とは違い、潜入任務中にある軍用犬が検査を受けなければならないという状況。
なのでポリが警戒しているのは、当然のことなのだ。現在私たち2人(1人と1匹だが)推定敵地で早速スケジュールにないスタートを切っている。なにかしら抵抗したほうがいい気もするが。
しかしかといって、ここで引き受けないで暴れているのは先に進むことができない。もしかしたら検疫を受けないことで、そもそも送還されてしまうかもしれないのだ。また隔離されたままというのもある。
なので2人とも彼女らの言う通りにしたいところだが、人と犬との対応はちょっと違う。例えば21世紀では犬の迷子防止であったり照会用のチップを埋め込む事があったが、それに近いことで彼女らに監視される何かを埋め込まれるかもしれない。
あれ、これ私もではないか?
いやでもそう何もかも疑ってもしょうがない。彼女らの難民を受け入れる政策を信頼し、ポリには私と共に予防接種を受けてもらうしかない。とかく警戒しているポリに対して……後でおやつをあげるから予防接種を受けてね、というのは流石に犬であると舐めすぎてるので言えず、ただ頭を下げて何度もお願いすることで手打ちにしてもらった。不承不承というものか、何度も頭を齧られたが……
「それにしてもすごい都市だ……ここって辺境で開拓放棄された惑星って話だったよね」
検疫等の後で通されたこの場所は城だ。移動中に見せてもらった外観はまさしくキャッスル。未来時代にあるサイバーキャッスルの摩天楼ではなく、中世ヨーロッパ領主の家みたいな城がでんとあり、そこの周辺に市街が存在するようなファンタジックな景観なのである。いくら開拓途中であった惑星といえど中世レベルまで文明落としてるわけなんてないのだろうが、ビジュアルがまず目を引くもので驚いてしまう。
かといって全て石畳や木で出来ているわけではなく、この通された城もであるが内装含め相当なハイテックに支配されている。私が通されたこの応接間、と女性騎士が呼ぶものであるのだが……内装の調度品が豪華で中世っぽいのに、外壁は全て城から見渡せる風景を見渡せるモニターとなっているようだ。応接室が全周囲モニターになっている文化聞いたことがない。
「それはほんの少し、昔の話。今は誰もが苦なく暮らせる統治が完成している。理想郷とまではいかないが、それを目指してはいる」
応接間に入って来た人物……部屋にいる女性騎士が一斉に礼を向けるもので、相当に偉い人だろう。その物言いからも要職にある人物に違いない。彼女らより頭1つ分大きいようだしデカければデカいほど偉いのだろうか。私は壁に張り付いて外を眺めていたものだからワンテンポ遅れてしまい、慌てて頭を下げた。
「礼は不要、である。むしろ軌道上の警備が至らなかったことには、こちらが謝意を示せねばならないな。地球人類の男よ」
その人物?は長い長い髪を……いくつかある球体ドローンらしき存在に持たせ、細い体に繋がる長い足をさらに延ばすような高いヒールを鳴らし入って来た。女性騎士らと同じく白いカラーベースに、瞳や一部に入るラインに暖色の光。瞳に宿る赤と黄色の混ざった光がこちらを見つめている。一目で人間ではないな、とわかるシンボリックな姿。何より頭に輪っかが浮いている……34世紀に流行っているタイプの自撮り用LEDライトではないよな?でないなら機械天使って言えばいいのか……
「はぁ……いや、私も何がなんだかさっぱりで、大変だったのは覚えているんですが」
「幸いなことに避難民は全て無事だ、貴君の働きによるものもある、そのような人物に会えたことは喜ばしいな」
「そんな、なんといいますか……場当たり的な対応で、なんとかうまくいったはいいのですが」
ポリには相当無謀なことに付き合わせてしまった……と反省の意味も込めて屈みポリの顎を撫でようとするが。噛まれることもなく邪見に手を払われてしまい、許してくれよと何度か接触を試みるも全て受け入れられなかった。悲しい。この惑星に来てから滅茶苦茶不機嫌だ。
「そう言うな。我々としてもそうした善き人が再生者であることは大変喜ばしいことだと思っている。こと現在の宇宙の情勢から考えればな」
うんうん、中々こう……人柄について良く言われなかったものでそう言われるとホッとするのではある。何かをやってよかったか、よくなかったか。よくない時はみんな大抵強く言ってくれるが、よい時がなんかこう微妙に遠回しなところなもので正解か不正解かがわからないのだ。アンジェラからは正解も不正解もない、と返ってきそうだが……とかくこうしていいんじゃないか?と言われるのは悪くない。
「えぇまぁはい、よく怒られていますが……すいません、今なんて?」
悪くはないが今何か言われたらまずいことを言われなかったか?
「難民に紛れてこちらを伺いに来る、まぁ悪くはない発想だったがあぁいう事態が起きてしまうとな。まぁ互いに異常な事態が重なった、不幸な事故。それを最低限の被害にまで抑えたのだ、お前もそれでよかったのだろう?」
なんのことかサッパリでございます、などトボける暇もない。彼女が指を鳴らすと応接室の内壁ディスプレイ・モニターに映し出される光景が変わる。それは……この惑星を外から見た時のような姿、位置的にこの惑星の衛星軌道上から撮影されているものだろうか。そこには難民船がギルドの船の衝突により割れ、落下していく光景。
そしてその割れて落ちていってしまった船体の方から……青白い光の帯が出て、緩やかに惑星へ向けて落下していく映像が続いていくのだ。
続いてそれが、落下を制動しながら惑星に落下していく姿と共に軌道データや数値を並べて見せられる。よくSF映画とかで隕石ではなく人工的なものだ、と反証するシーンのような映像を今見せられている上に……これはお前だなと言われているのだ。いやあれこんなことになっていたのか!?
「あらためて、再生者よ。旧植民開拓惑星ネザリアへようこそ。私はマシウス、銀河連邦方面の機械福音信徒を束ねる四使徒の1人だ」
いきなりとんでもない相手に出会うことになってしまった。もうこの時点で潜入作戦が失敗しているのだが……監獄要塞でもこんな感じじゃなかったか!?しかも今度は一番偉そう……いや、四天王みたいな相手にすぐ捕まってしまった!計画も何もあったもんじゃない!
いや元からあったかなぁ!?そういえば惑星に降りた後の計画を聞いてない!
リィン導師やソニアはどこまで考えているんだ!?




