表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名前のない英雄譚【無能の白銀騎士】  作者: 木ノ添 空青
神殺しの少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/85

ぼくのきおく

「おーい二人とも、はやく来いよ」

「まってよヤマトにいちゃん! だ、大丈夫?」

「うん、平気だよ。ふぅ、まったく、にいさんてば子供なんだから」

「お前の方が子供だろ!? ジン、しってるか? こいつ、おとぎ話に出てくる英雄と結婚したいんだって。あはは、こいつの方がお子様だよな!?」

「あぁ―ッ! ジンくんにはナイショって言ってたのにぃ!!」

「それってしろいマントの英雄さんのお話だよね!?」

「おいジン、今はそんな話じゃないだろ? こいつがまだ子供だって話」

「え? えへへ、ヤマトにいちゃんたちと一緒なのが、うれしくなっちゃって」


 初めてじゃない、初めての記憶。

 あれは、小さい頃の僕と、あの女の子の兄、ヤマトにいちゃん。そして、あの子が。


「ぼくもスキなんだぁ! かぐやと一緒だね!!」


 そう、“かぐや”という少女。

 僕たちはずっと一緒だった。


 あの頃はよく、英雄ごっこをしていた。

 大好きなおとぎ話の英雄に憧れて、ぐだぐだな三人でなりきりって。


 年下の僕に英雄役を毎回譲ってくれたヤマト兄ちゃん。

 お姫様らしからぬ活発さではしゃいでいたかぐや。

 そして、強くて、かっこよくて、憧れてしまうような魔王役がヤマト兄ちゃん。

 朝から夕方まで思いっきり遊んで、帰るたびに泣きそうなほど寂しくなって。

 悲しくなるほどの、楽しかった記憶。


 そうだ、あの日は突然訪れたんだ。


「けほっ、けほっ。ホコリまみれじゃんココ。秘密基地にできるかな?」


 ヤマトにいちゃんたちの家の裏にあった大きな蔵。正面の扉は大きな錠がかけられていたんだけど、こっそり換気窓から忍び込めるようになっていた。

 そこには沢山の衣類や、古くなった家財道具の他にも、剣のような武具なんかも置いてあった。


「暗くてカビくせぇけど、秘密基地にはピッタリだな!!」

「ちょっと、にいさんやめようよ。ママたちも入っちゃダメって言ってたのに」

「それに、まっくらで怖いよ。オバケがいるかもしれないよ」

「そんなものいねぇって。それより、宝探ししようぜ!」

「にいさんやめよう? わたしまで怒られちゃう」

「おれが代わりに怒られてやるから。おっ、なんかすごそうなのあった!!」


 それは、とても古びた装丁の本。

 子供の体の幅くらいで、やたら大きく見えたのが印象的だった。


「なんだこれ? よめねぇじゃん」

「……みたこともない字」

「うん、べつの国の文字なのかな?」

「やっぱりお前たちも気になるんじゃないか。にしし、開けてみようぜ」


 文字ばかりが埋めるページを捲っていくと、あるページから挿絵が増え始めた。


「――ッ! ヤマトにいちゃん、これお話に出てたアクマじゃない!? こっちも、こっちも!!」

「にいさんこれよんじゃダメな本じゃないの!?」

「そ、そんなわけないだろ。それに、アクマとかいないって言ってんだろ! ……あれ? おれ、この字わかるぞ!!」

「うそ? そんな字、よめないよ……?」

「オレは兄貴だからな、当たり前だろ! えっと、なになに?」


 ダメだッ――!! それを読んじゃダメ!! 唱えちゃいけないんだ!!


「『エロイム…エッサイム、フル、ガティ、ウィ…エ、ト、アッペ、ラウィ…??』だって、なんかの精霊術かな!? つよくなったりして!?」

「どうなんだろう、きいてもわかんない」

「ねぇにいさん、もうやめよう? ちょっと怖いよ?」

「大丈夫だから。もうちょっとだけだって。……えっと、こっちもよめる! んっと、ちの、けいやくをかわせ?」

「にいさん!! もうやめて!!」

「あっ、こら、はなせよ! まだ読んでるだろ!? 破れるって!」

「ふ、二人ともやめなよ。あぶないよ」

「ダメ!! はなして!! これパパにわたしてくる!!」

「あとちょっとなんだから!!」


 しかし、年上の、まして男の子の力には及ばなかったかぐやの手は本から外れ、引っ張っていた勢いのまま、後ろに倒れてしまった。


「かぐや!? だ、大丈夫?」

「もう! 血がでた!!」

「わ、悪かったよ。……これは、オレがとうさんに返してくる。すぐに薬持ってくるから外で待ってろ。ジン、ちょっとかぐやをみててくれ」

「う、うん。大丈夫?」

「もう、にいさんが言うこと聞かないから」


 慌てて外へ出ていくヤマトにいちゃんを見送って、泣きそうになってるかぐやの頭をそっと撫でる。しかし、すっかりむくれてしまっている。

 ようやく動く気になったらしいかぐやと、一緒に蔵の外に出て待っていたのだが……。なかなか帰ってこない。


「ヤマト兄ちゃん、おそいね?」

「きっと怒られてるんだよ。いい薬! もう、行こうジンくん。待ちくたびれちゃった」


 そうして家に入ったが、子供ながらに感じる違和感。

 何度か出入りしていたからわかる。こんなに静かな事ってあったかな?


「ねぇ、みんないないの?」

「ううん、パパもママもじぃじも、今日はみんないるよ?」


 じゃあ、なんでこんなに……。




 ――ッドン!!




 二階から大きな音がした。


「すごい音……」

「どうせにいさんでしょ? にいさん! ママは~?」


 返事はない。


「もう~! わたしちょっと見てくるね?」


 そう言って、静まり返った家に小さな足音が消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ