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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
エルネア編④豪雷地帯

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5傑

雷の魔女ホライは、今日も巡回を続けていた。


空は濁り、雲は低く垂れ込め、雷は絶え間なく大地を打つ。

それはこの街にとって、異常ではない。

むしろ、日常だった。


「……異常なし」


呟きながら、門の上から外を見渡す。


その時だった。


地平の向こうから、複数の影が現れた。


人間。

魔女。


「……あれが」


愛の魔女が語っていた存在。


(人間……?)


ホライは目を細める。


見た目は、ただの青年だ。

魔力の奔流も、圧倒的な覇気もない。


(拍子抜けだな)


そう思いかけて、違和感に気づく。


「……後方の女」


一人、明らかに浮いている存在。


街娘のような装い。

魔力を極限まで抑えた気配。


(一般人……いや)


背筋を、冷たいものが走った。


(……違う)


次の瞬間、ホライは息を呑んだ。


寒気。


本能が、警鐘を鳴らす。


「……あり得ない」


距離は、まだかなりある。

それなのに――感じる。


(この距離から……?)


心臓が、強く脈打つ。


(まさか……)


脳裏に、最悪の名が浮かんだ。


「……愛の魔女、ハレッサ」


喉が、ひくりと鳴る。


(……あの女か?そんな、馬鹿な)


だが、否定できない。


(報告しなければ)


ホライは、即座に踵を返した。


―――――――――――――――――――――――


スパークランド中枢。


雷晶に囲まれた広間で、マレイは静かに資料を読んでいた。


「……」


そこへ、ホライが駆け込む。


「マレイ様!」


息は乱れていない。

だが、声には緊張が滲んでいた。


「人間達が、やって来ました」


マレイは、顔を上げる。


「人間?」


「はい」


「……愛の魔女が言っていた者か」


興味なさげに言う。


「大したことはあるまい」


だが、ホライは首を振った。


「……いえ、それが」


一瞬、言葉を選ぶ。


「愛の魔女が、います」


空気が、凍りついた。


「……何だと?」


マレイの声が、低くなる。


「あの女が……?」


ホライは頷いた。


「間違いありません」


マレイは、ゆっくりと立ち上がった。


「……なるほど」


口元に、僅かな笑み。


「自ら、連れてくるとはな」


「それと――」


ホライは続ける。


「ペレア様、そしてラグナの存在も確認しました」


その瞬間。


「……!」


マレイの表情が、初めて変わった。


「……お姉ちゃんが?」


驚きと、苛立ちと、懐かしさ。


複雑な感情が交錯する。


「それに……ラグナか」


短く、息を吐く。


「……それは」


指を鳴らす。


「私が相手をするしかないな」


その時。


空間が、歪んだ。


五つの影が、同時に現れる。


「マレイ様、何事ですか?」


「緊急招集とは、珍しいですね」


「雷鳴が、騒がしい」


現れたのは、スパークランドが誇る五人。


雷の五傑。


マレイは、彼女たちを見渡した。


「……五傑か」


「愛の魔女と」


一拍置く。


「ペレアお姉ちゃんが、現れた」


空気が、一段重くなる。


「……ペレア様ですか?」


一人が、目を見開く。


「長らく、行方不明だったと聞いていますが」


マレイは、頷いた。


「生きていたようだ。それに……愛の魔女」


五傑の間に、ざわめき。


マレイは、淡々と命じる。


「五傑には、町で応戦してもらう」


「……了解しました」


「ホライ」


マレイは、雷の魔女を見る。


「豪雷地帯で、迎撃だ」


ホライは、即答した。


「分かりました」


一礼。


「直ちに」


ホライが去り、五傑も散っていく。


広間に残ったのは、マレイ一人。


雷鳴が、遠くで轟く。


「……」


マレイは、窓の外を見た。


雷に照らされる街。


「私達は」


静かに、呟く。


「他の魔女と、違う」


誇り。

選別。

断絶。


「変わらない」


過去も。

現在も。

未来も。


「……これからも」


その目に、迷いはなかった。


雷が落ちる。


スパークランドは、戦場となる。


愛と雷、信仰と執着。

そして、人間。


すべてが交わる夜が、始まろうとしていた。

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