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8)とあるご夫婦の謎

「それにしてもあの女、叩かなくても色々出てくるな」

スレイの言葉にライが頷く。

『あの女の不貞も調べたが、相手が幾人も出てきた』

「幾人もって、一人ではなかったのですか」

流石にそれは、うちもびっくりや。

「とんでもない女だ」

『夫婦でお互い様だ』

「え、お互い様って」

うちの言葉に、ライが肩を竦めた。


『もう君に王宮勤めはさせない』

「そういう意味でも止めておけ」

冷静なライとスレイが怖い。実の父親が不貞しとるって知って、うちに近づくなって言うってことは、えっとどういうことか考えるのは止めとこう。


 そやけど仕方ない。スレイはライよりも大きかったから、父親の再婚の異様さも理解出来たはずや。少し成長したらライも理解したやろう。その父親がさらに、まぁ、不貞をとなれば、嫌うやろうな。しかし王国は、国王夫妻が揃って不貞して、継承権とか気にせぇへんのかな。


 うちは気になるよ。

「そうなると、失礼ですがお二方の異母弟でいらっしゃるペドロ殿下は、一体全体どなたのたねでしょうか」

アスの言うことも気になるけど、それだけやない。

『どう思う。君は肖像画を沢山見ているはずだ』

「お顔立ちは、肖像画に似ておられますから、お父様は国王プリニオ陛下でいらっしゃると思います。多分ですけれど。あと」


 言うてえぇんか、ちょっと迷った。

『あと、何? 』

ちょっと何と言うか、お上品やないから言いにくいという、うちの機微を察してくれるライではないな。

「今はその、不貞をしておられるとはいえ、元は強引に結婚したお二人です。王妃パメラ陛下と呼ばれている方のお子様が、たったお一人でいらっしゃるのは何故でしょう」

声が小さくなったのは仕方ない。他所のご夫婦がなんで子作りせぇへんかったんや、他人と寝るんやなんて下世話なこと言うのは恥ずかしいやん。


 王妃パメラ陛下が、再婚して早々に、腹が目立ったことは、うちら旅芸人でも知っとるくらい有名なことや。喪中やのに色々とお盛んで、乱れてただれた関係やって有名な二人が、何で子供が一人なんや。ご懐妊の噂もない。


「イサンドロ様には亡くなられた方もおられますけれど御姉様が沢山おられます。イサンドロ様の奥方様であるカンデラリア様も、亡くなられた方を数えれば、十人前後のご兄弟で、一番年上のお兄様とは親子ほども年が離れておられますし」

子供がおらんと王家の血筋が絶えたら、それだけで争いの種になる。多すぎても権力争いになるけど。赤ん坊の頃に半分くらい死んでしまうし、大人になっても急にってあるから、王子様が一人二人ってのは国民の不安を煽る。


「まぁそうだな。流行り病だ何だと幼い子供はよく死ぬからな。血筋を絶やさないために、子供は多いほうが良いとされている。皇国の皇帝陛下であらせられるビクトリアノ伯父上には、ご自身含めて兄弟姉妹が確か、七人か八人生まれたはずだ。成人したのは皇帝となった伯父ビクトリアノ陛下と大神殿で大神官長となった伯父の弟ハビエル大神官長様、私とライが敬愛するフロレンティナ母上の三人のみだ」

成人した三人のうちの一人、黒真珠の君フロレンティナ様の魂は大地母神様の御許に還られた。ライが覚えていないお母様や。硬く握られたライの拳に、うちは手を添えた。


 皇国との和平の証として嫁いで来られた黒真珠の君フロレンティナ様と国王プリニオ陛下との間に生まれたスレイとライは二歳違いや。


 国王プリニオ陛下は、子供の頃に結婚の約束をした幼馴染のパメラ嬢と結婚したんやし。父親に決められた結婚相手が亡くなってすぐ、喪中やのに結婚したんや。念願かなって結婚したと思ってはるなら、子供はあと二、三人どころか、四、五人おってもおかしないやろ。


 不貞は勝手にしたらえぇけど。喪中に結婚したにしては変や。


「私たちが生まれる前から因縁があるとは聞いていたが。パメラと一族を始末しても、片付く問題ではなさそうだ」

真面目な話をしているスレイは、最初の軽薄な口調と違って、未来の王様にふさわしく見えた。


 ずっとこのまま振る舞ってくれたらえぇんやけど。うちはライの後ろに半分隠れたまま、ライのお兄様、スレイと呼んでくれと言った、第一王子シルベストレ殿下を盗み見た。


 うちの動きがわかったらしい。ライの背中が揺れた。笑っとるな。これは。ライの背中にうちは軽く頭突ずつきした。


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