7)幼馴染の君の秘密
ライと似た顔から、声が聞こえるのが少し不思議や。
「あの二人は幼馴染だと散々聞かされている。幼い頃から結婚の約束をしていたと。私達の母は、後から皇国の権威を背に王宮に乗り込んできて、二人の仲を引き裂いたなどと言われていた。お前も覚えているだろう」
ライが頷いた。ライは覚えとらんお母さんのことを、そんなふうに言われとったんか。つくづくライは可哀想や。
「幼馴染の君とやらが、平民とはいえ、人を二人も殺めていたとは」
アスの言葉にはどこか嘲る響きがあった。
「美しい金髪の幼馴染の君だという触れ込みだったが」
スレイの言う通り、黒髪の美しさで有名やった皇国の黒真珠の君に対抗してか、幼馴染みの君は金髪が美しいという触れ込みやった。
「あの男、まんまと騙されていたわけか」
スレイの言うあの男は、国王プリニオ陛下やろう。実の父親をあの男とスレイは言う。ライもそうや。
仕方ないことなんやろうけど、少し悲しい。うちには父親はおらん。座長とクレト爺ちゃんが父親代わりや。父親がおるのにあの男と呼ぶスレイもライも可哀想や。国王プリニオ陛下は、自業自得やけど、自分の息子二人にあの男と呼ばれるのは、ちょっとだけやけど可哀想なんかもしれんな。
『どうした』
ライの広い背中は落ち着く。子供の頃のライは、誰かの背中に甘えたことはあるんやろうか。
「国王プリニオ陛下は、知っておられるのでしょうか」
長男と次男に、あの男と呼ばれるほど嫌われていることを。とは、言えんかった。
「知らぬとは思えないな。閨でも鬘をかぶったままで過ごせるとは思えん」
率直なスレイの言葉に、うちはライみたいに頷けんかった。
「暗ければ、わかりませんよ」
「お前が言うならそうだろうな」
アスの言葉にスレイとライが納得しているけど、どういうことなん、それ。そんな事がわかるってことは、アスはやることやっとって、それはスレイも公認ってことなんか。
「淡い髪の色は年齢で変りますからね。固執しても仕方のないことです。黒髪のあなた達もいずれ白髪になるでしょうし。真っ白になるまで長く生きて欲しいものです」
うちは戸惑っとるけど、フィデリア様は落ち着いてはる。
それにしても、黒髪が真っ白になるまでどのくらいかかるか知らんけど、三人とも死にかけたんやなと思うと、フィデリア様のお言葉の重みが変わってくる。
「真っ白ですか。お祖母様。ビクトリアノ伯父上も、まだ真っ白ではありませんが」
皇国皇帝ビクトリアノ陛下も、スレイにとってはお母様のフロレンティナ様のお兄様や。親子ほどに年齢が離れとるはずやから、フィデリア様のご年齢に近いはずやけど。
「あら、越えたらよろしいのです」
何でもないことのようにフィデリア様がおっしゃった。
「そうありたいものですね」
アスが、短くなっているライの頭を乱暴に撫でた。ライは皇国にいったことがないはずや。アスなりの気遣いやろうか。ライがくすぐったそうに笑う。アスはお兄ちゃんみたいな人なんやろうな。
スレイもアスもご無事でいはって本当によかった。




