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リュッ君と僕と  作者: 時波彷徨
四日目
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69/88

☆

 気が付くと、ユウキは、草原にいた。


 ゆうゆうと風に揺れて波打つ草原は、青々として背も高く生い茂り、雲ひとつない青い空は地平線の向こうまで続いていた。


 ユウキがぼんやりとして周りを見回していると、

「ファン!」

 という鳴き声が聞こえた。


 鳴き声の方を向くと、そこには小さなランスロットが、ハッハハッハ!と舌を出してお座りをし、ユウキのほうを見つめていた。


「ランスロット!」


「よかった!体、治ったんだね!」

 表情を緩めて、ランスロットに駆け寄っていくユウキ。


 すると、ランスロットがくるりと背中を向けて、駆け出して行った。


「何処に行くの?ランスロット!」


 駆け出したランスロットを後ろから追いかけるユウキ。しばらく走って距離を置くと、ランスロットはユウキのほうを振り返って、ちょこんと腰を下ろし、キョロッとした瞳でユウキのほうを見つめた。


「ランスロット?」


 ユウキが走ってそちらに行こうとするも、ランスロットとの距離が一向に縮まらない。


 そこへ、ザアアアアアーッと、強い風が草原の葉を撫でるように吹きぬけていった。


 思わず風から手をかざして身を守るユウキ。見ると、ランスロットのあたりは暗く日が落ちて、草間がザワザワと激しく揺れていた。舞い上がる強風にあおられ、ユウキが近づけずにいると、ランスロットは、くるりときびすを返して、暗く日が落ちていく草原の向こうに走り出していった。


「ランスロット?」


 まるでユウキの言葉が聞こえないかのように遠ざかっていくランスロット。


「ダメだよ!ランスロット!そっちへ行っちゃ!」


 ランスロットが、どんどん遠ざかって、暗く闇にかげった草間の向こうに消えていく。


「ランスロットー!」




 打ち出されたユウキがハッと目を覚ます。


 ふわりと空中に浮かんだランスロットの姿が、ユウキの視界に入った。目をこらして見つめるユウキを、舌を出したランスロットが、クリッとした丸い目でじっと見つめていた。


 次の瞬間、


 ドドドドドッ!


 無数の槍がランスロットを貫いた。


 貫かれたランスロットが、力の抜けた人形のように波打って、ぶらんと四肢が垂れ下がっていく。そして、貫いた無数の槍と共に、ランスロットは、その先にある鍾乳石の柱に貼り付けにされていった。


 遠ざかっていくランスロットに手を伸ばすユウキ。額の☆が、金色の光を強く放ち、見開いた目に涙を一杯に溜めたユウキの顔を強く照らし出した。


「ユウキィ!」

 リュッ君の声が大きくかぶさる。

「泣くのは後だあ!このまま竜の柱までいくぞおおおおおお!」


 叫ぶリュッ君が、空気を思い切り吸い込んで回転すると、


 ブフウウウウウウ!

 と思い切り空気を吐き出した。


 リュッ君の噴射によって加速するユウキとリュッ君。最後まで息を吐ききると、再び大きく息を吸い込んで、「あの最後の☆をゲットして、みんなで家に帰るんだああ!」と叫びながら、リュッ君は、溜め込んだ空気を力一杯噴射した。


 ぶふふふうふうううううう!


 勢い良く飛んでいくユウキの額の☆が大きく明滅して、金色の光が広がって行く。


 光の帯で繋がる、赤、青、そして、竜の口に収まっている緑の☆の光も、他の☆に合わせるかのように、その輝きを強めていく。ユウキは、☆の光に押されるかのように歯を食いしばって、飛ばされる先の竜の石柱をにらみつけると、その緑の☆に向かって手を伸ばした。


 黒いランスロットにまたがったユウキが、その様子を認め、再び槍を天に突き上げた。飛び交う蝙蝠たちが、黒い槍を形作っていく。そして、その鉾の先を、竜の柱に向かって飛んでいくユウキに向けると、勢い良く、一斉に槍を放った。


 ☆を全てそろえて!僕と帰るんだ!

 ユウキが心の中で叫ぶ。


 ランスロットも一緒に!


「うわあああああ!」

 ユウキはリュッ君と一緒に叫びながら、緑の☆に向かって必死で手を伸ばした。


 放たれた槍が、ユウキの背中を捕らえようとしたその時、伸ばしたユウキの手の指先が、明滅を繰り返す緑の☆に触れた。


 その瞬間、鍾乳洞全体が、光に包まれた。


 ユウキを包む☆の輝きに、飛んできた槍があおられ、黒い塵となって消えていく。


 鍾乳石の表面がきらきらとその光を反射させると、鍾乳石の柱は乳白色の輝きをきらめかせて、そのこぶのような凹凸がシルクのように柔らな光を放った。


 きゃあああおおお!


 鍾乳石の赤子の群れがその光を受けて眩しそうに顔をゆがめると、大きく叫び声をあげた。


 赤色、青色、黄色、緑色の☆がユウキの周りをぐるっと取り囲み、光の帯でユウキとリュッ君を包みこむ。そして、☆同士が溶け合って、一つのまばゆい輝きとなると、ユウキの頭の上にふわりと浮かんで白い大きな一つの☆になった。




 ユウキが気が付くと、そこは一面、白い色で囲まれた空間だった。


 床も空も白く、地平線も見えないが、ユウキの足は硬い地面に立っている。


 胸元にリュッ君はいない。


 ユウキの額には、白い☆がフワフワと浮かんでいた。


 見ると、ユウキの目の前に、小柄で小さな人影のようなものが立っていた。全身、黒い粒子で覆われて、その粒子がチリチリと千切れて舞い上がっている。やや小さく背中を丸めて、小刻みに震えている。その額の上には、小さく、黒い粒子で覆われた☆がくるくると回っていた。、


「オオ…、オオオ…、オオ…」


 口からうめき声のような音を発して、目の前の黒い人影が、ユウキのほうに手を伸ばして、よたよたと歩いてきた。


 ユウキは、近付いてくる黒い人影が、とても惨めで不憫な印象を受けた。それを見つめ、その場に立っていると、近付いてきた黒い影が、ユウキに手を伸ばして、その手に触れた。すると、影の額に浮かぶ☆の粒子がチリチリと舞い上がって、白い☆に吸い込まれていった。黒い☆が全て、白い☆に吸い込まれていくと。白い☆はグニャリと変形して。黒と白が半分に交じり合う大きな玉になった。


「イッショニカエロウ…」


 ユウキにすがりついた黒い人影の体が四散して消えていくと、その空間にはユウキとユウキの額に浮かぶ玉だけが残された。


 しばらくしてから、玉がフワリとユウキの胸元に降りてきた。ユウキが、その玉を両の手ですくうように包み込むと、玉の光が広がって、ユウキを光の中に飲み込んでいった。



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