表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/7

第六話 宝箱と徘徊強敵



 東街道。


 ゴブリンたちとの戦闘が終わり。


 騎士団による。


 現場の後始末が始まっていた。


「負傷者は?」


「全員治療済みです!」


「馬車の被害確認を!」


「はい!」


 商隊。


 冒険者。


 王国騎士。


 それぞれが。


 慌ただしく動いている。


 そんな中。


「……」


 リーナは。


 長槍を片手に。


 目を閉じた。


「リーナ?」


「念のためです」


 杖は使わない。


 リーナの身体から。


 淡い赤色の魔力が。


 静かに広がっていく。


「《索敵魔法サーチ》」


 ――キィン。


 見えない魔力の波が。


 円状に。


 周囲へ広がった。


 街道。


 草原。


 森。


 さらに。


 その奥。


「……」


 数秒。


 リーナが。


 目を開く。


「周辺約五百メートル」


「敵性反応はありません」


「リーナも索敵できるんだ」


「できますよ?」


「てっきり」


 リリスが。


 少し首を傾げる。


「槍と攻撃魔法と回復と支援だけなのかなって」


「私をどれだけ不器用だと思っているんですか」


「万能なんだ」


「《赤魔法師》ですから」


 リーナが。


 少し得意そうに胸を張る。


「赤魔法師は」


「攻撃」


「回復」


「支援」


「そして基本的な補助魔法を」


「幅広く扱える万能職です」


「じゃあ《サーチ》も?」


「汎用支援魔法の一種ですね」


「便利」


「ただし」


 リーナが。


 指を立てる。


「索敵専門の斥候や探索職には及びません」


「範囲や精度なら」


「彼らの方が上です」


「なるほど」


「それに」


 リーナの赤い瞳が。


 リリスを見る。


「リリスの《気配察知》と《危険察知》」


「あれはかなり高性能です」


「そうなの?」


「私の《サーチ》より先に」


「森の伏兵に気づいたでしょう?」


「あ」


 確かに。


「特に《危険察知》は」


「単純に敵の位置を探す魔法とは少し違います」


「危険そのものを察知できる」


「場合によっては」


「私の《サーチ》より厄介な奇襲に強いでしょう」


「取っておいてよかった」


「本当に」


「良い判断でした」


◇◇◇


「さて」


 リーナが。


 周囲を見る。


「敵がいないことも確認できましたし」


「戦利品を回収しましょう」


「戦利品?」


「はい」


「素材ならもう」


 《自動収集》によって。


 ほとんど。


 《インベントリ》へ入っている。


「素材ではありません」


 リーナが。


 少し離れた場所を指差す。


「宝箱です」


「……宝箱?」


 見る。


「おお」


 草原。


 街道。


 森の入り口。


 ゴブリンたちが倒れた場所の近くに。


 いくつもの。


 箱が出現していた。


 木製。


 金属補強されたもの。


 少し大きな箱。


「こんなに?」


「今回は数が多かったですからね」


 リリスが。


 一番近くの宝箱へ向かう。


「魔物を倒すと出るんだ」


「知らないのですか?」


「ちょっとだけ知ってる」


 LGOにも。


 似た仕組みはあった。


 けれど。


 実際の世界でも。


 宝箱が出るらしい。


「通常の魔物を討伐した場合」


 リーナが説明する。


「宝箱が発生する確率は」


「およそ五割です」


「50%」


「はい」


「結構高い」


「ただし」


 リーナが。


 別の箱を見る。


 ホブゴブリン・リーダーが。


 倒れた場所。


 そこには。


 他よりも。


 一回り大きな。


 金属製の箱。


「ボス」


「強敵」


「ネームドモンスター」


「そういった個体は」


「基本的に宝箱が確定します」


「確定……」


 リリスの目が。


 少し輝いた。


「リリス」


「何?」


「今」


「強敵を探しに行きたいと思いましたね?」


「ちょっとだけ」


「駄目です」


「まだ何も言ってない」


「顔に出ています」


◇◇◇


 通常ゴブリンから。


 出現していた宝箱。


 合計。


 二十七個。


「本当に半分くらい」


「確率ですから」


「毎回ぴったり半分にはなりませんよ」


「なるほど」


 一箱目。


 開ける。


 ――カチャ。


━━━━━━━━━━


《宝箱》


銀貨×8


初級HP回復ポーション×2


━━━━━━━━━━


「お金とポーション」


「典型的ですね」


 二箱目。


━━━━━━━━━━


銀貨×5


解毒薬×1


鉄鉱石×3


━━━━━━━━━━


 三箱目。


━━━━━━━━━━


銅貨×40


ゴブリンの短剣×1


━━━━━━━━━━


「普通」


「通常のゴブリンですから」


「全部がすごい物ではありません」


「そっか」


 その後も。


 次々と。


 宝箱を開ける。


 銀貨。


 銅貨。


 初級ポーション。


 解毒薬。


 保存食。


 鉄鉱石。


 革。


 安価な短剣。


 小型盾。


 その他。


 冒険者向けの。


 比較的普通の品。


 けれど。


「楽しい」


「宝箱を開けるのが?」


「うん」


「何が出るか分からないから」


「気持ちは分かります」


 そして。


 最後。


 ホブゴブリン・リーダー。


 強敵個体から出現した。


 金属製宝箱。


「これ」


「他より良さそう」


「強敵からの宝箱ですからね」


「開ける」


「どうぞ」


 蓋を開く。


 ――カチャン。


 淡い光。


━━━━━━━━━━


《強敵宝箱》


《大魔石》×1


《指揮者の腕輪》×1


金貨×5


上級HP回復ポーション×3


━━━━━━━━━━


「腕輪」


 取り出す。


 黒革と。


 銀色の金属で作られた。


 小さな腕輪。


「《鑑定》」


━━━━━━━━━━


《指揮者の腕輪》


分類:装飾品


品質:希少


━━━━━━━━━━


「希少」


「当たりですね」


「使える?」


「もちろん」


 ただ。


 今すぐ必要というわけでもない。


「とりあえず収納」


━━━━━━━━━━


《指揮者の腕輪》


《インベントリ》へ収納しました。


━━━━━━━━━━


「装備しないんですか?」


「今はまだいいかな」


「なるほど」


 他の戦利品も。


 まとめて収納。


「終わり」


「では」


 リーナが。


 王都を見る。


「今度こそ戻りましょう」


「うん」


◇◇◇


 東街道を。


 王都へ向かって歩く。


 商隊は。


 騎士団に護衛され。


 少し先を進んでいる。


「宝箱かぁ」


 リリスは。


 まだ少し。


 嬉しそうだった。


「そんなに気に入りました?」


「敵を倒す」


「素材が手に入る」


「宝箱も出る」


「……」


「すごくいい」


「完全に冒険者向きですね」


「そう?」


「間違いなく」


 その時。


 ――ゾクッ。


「……!」


 リリスが。


 突然。


 足を止めた。


「リリス?」


 《危険察知》。


 先ほどとは。


 違う。


 ゴブリンなど。


 比較にならない。


 強い反応。


「何かいる」


 リーナの表情が。


 一瞬で変わった。


「方向は?」


「左」


 街道。


 西側。


 少し離れた森。


「かなり強い」


「……」


 リーナが。


 すぐに魔力を広げる。


「《索敵魔法サーチ》」


 赤い魔力波。


 森へ。


「……!」


 リーナの眉が。


 僅かに動いた。


「一体」


「大きいです」


「魔物?」


「間違いありません」


 その直後。


 ――ドォン。


「……?」


 森の中から。


 低い音。


 ――ドォン。


 さらに。


 ――バキバキバキッ!


「木が……」


 一本。


 二本。


 巨大な木々が。


 押し倒される。


 そして。


 森の奥から。


 黒い巨体が。


 現れた。


「ブオオオオオォォォォッ!」


 咆哮。


 大型の猪。


 ただし。


 普通ではない。


 体長。


 五メートル近い。


 全身を覆う。


 黒い。


 金属のような硬質皮膚。


 頭部には。


 二本の巨大な黒角。


 一歩進むだけで。


 地面が沈む。


「大きい……」


 リリスが。


 《鑑定》。


━━━━━━━━━━


黒鎧大猪ブラックアーマー・ボア


分類:


徘徊強敵ワンダリング・モンスター


Lv:38


━━━━━━━━━━


「ワンダリング……モンスター?」


 リーナが。


 槍を構える。


「《徘徊強敵ワンダリング・モンスター》です」


「何それ?」


「フィールドを」


「不規則に移動する強力な魔物」


「固定された巣や」


「ダンジョンの最奥にいるボスとは違います」


「どこに出るか」


「完全には予測できません」


「……」


 黒鎧大猪が。


 地面を。


 前脚で掻く。


 ――ガッ。


 ――ガッ。


「強い?」


「普通に強いです」


「普通に?」


「ええ」


 リーナが。


 真剣な顔になる。


「この辺りの新人冒険者が遭遇すれば」


「逃げるべき相手です」


「中堅冒険者でも」


「単独なら危険」


「討伐には」


「複数人で挑むのが普通ですね」


「Lv38……」


 リリス。


 現在。


 Lv12。


 数字だけなら。


 三倍以上。


「リリス」


「うん」


「私が前へ出ます」


「Lv48だもんね」


「はい」


「ただし」


 リーナが。


 横目で見る。


「あなたも援護を」


「いいの?」


「実戦経験になります」


「それに」


 リーナが。


 少し笑う。


「昨日の訓練を見る限り」


「遠距離からなら十分戦力になります」


「分かった」


◇◇◇


「《加速》」


 リーナの身体を。


 赤い光が包む。


「《防御強化》」


 続いて。


 自分へ。


 支援魔法。


 そして。


「リリス!」


「何?」


「あなたにも!」


 赤い光。


━━━━━━━━━━


《防御強化》


が付与されました。


━━━━━━━━━━


「おお」


「《赤魔法師》を舐めないでください」


「舐めてないよ」


「ならいいです」


 黒鎧大猪。


「ブオオオオッ!」


 突進。


「来ます!」


 速い。


 巨体なのに。


 一瞬で。


 加速した。


「――っ!」


 リーナ。


 正面からは受けない。


 横へ。


 飛ぶ。


 直後。


 黒鎧大猪が。


 先ほどまでリーナがいた場所を。


 通過。


 ――ドォン!


 そのまま。


 大岩へ衝突。


 岩が。


 砕けた。


「……強い」


「だから言ったでしょう!」


 方向転換。


 再び。


 突進。


「私が止めます!」


 リーナ。


 長槍。


 赤い魔力。


「《炎槍》!」


 ――ゴォッ!


 槍先へ。


 炎。


 横から。


 黒鎧大猪の肩へ。


 ――ガァン!


「硬っ……!」


 火花。


 皮膚。


 僅かに。


 傷。


 しかし。


 浅い。


「防御力も高いです!」


「じゃあ」


 リリスが。


 魔力弓を形成。


「硬いなら」


 一つ。


 適した戦技(アーツ)


━━━━━━━━━━


貫通魔矢ピアシング・マナアロー


━━━━━━━━━━


「狙う」


 《上級魔弓術》。


 距離。


 速度。


 風。


 装甲。


 動き。


 すべて。


 頭の中へ。


「右肩」


 弦を引く。


「《貫通魔矢ピアシング・マナアロー》」


 ――シュンッ!


 青白い一閃。


 ――ガンッ!


「ブオッ!?」


 黒い皮膚。


 貫通。


「入った!」


「さすが!」


 だが。


 倒れない。


「まだ来ます!」


 黒鎧大猪。


 今度は。


 リリスを見る。


「……私?」


「ブオオオオオッ!」


 完全に。


 狙われた。


 突進。


「リリス!」


 《危険察知》。


 進行方向。


 速度。


 危険。


 分かる。


「大丈夫」


 《身体強化》。


 最低より。


 少し上。


 地面を蹴る。


 ――ドンッ!


 横。


 黒鎧大猪が。


 目の前を。


 通過する。


「近い……」


 その時。


 リリスが。


 黒鎧大猪の。


 腹部を見る。


 装甲。


 背中ほど。


 厚くない。


「そこ」


 距離。


 三十メートル。


 魔力弓。


 構える。


 一本。


 魔力矢。


 そして。


「……」


 少しだけ。


 追加魔力。


「リリス?」


 リーナが。


 嫌な予感を察した。


「何を使うつもりです?」


「《魔爆矢》」


「少量ですよ!」


「分かってる!」


 昨日。


 防壁を。


 大きく抉った。


 だから。


 今回は。


 さらに。


 魔力を絞る。


 《魔力操作》。


「このくらい」


 矢へ。


 魔力を圧縮。


━━━━━━━━━━


魔爆矢マナ・バーストアロー


━━━━━━━━━━


「発射」


 ――シュン!


 腹。


 命中。


 直後。


 ――ドンッ!


「ブオオォッ!?」


 爆発。


 今度は。


 巨大な爆風ではない。


 黒鎧大猪の腹部だけを。


 内側から。


 抉る。


「できた」


「今のは良い加減です!」


「褒められた」


「戦闘中です!」


「あ」


 まだ。


 倒れていない。


「ブオオオッ!」


 怒り。


 魔力が。


 黒鎧大猪の身体から。


 噴き出す。


「リリス!」


「?」


「下がって!」


 リーナが。


 前へ出る。


「《赤雷槍》!」


 長槍。


 炎ではない。


 赤い雷。


 ――バヂィッ!


「はぁぁぁっ!」


 突き。


 傷ついた腹部へ。


 ――ズドンッ!


「ブオォォォォッ!」


 黒鎧大猪の巨体が。


 大きく。


 よろめく。


「今です!」


「うん!」


 魔力弓。


 次。


 確実に。


 仕留める。


「《雷装魔矢ライトニング・アロー》」


 雷。


 矢へ。


 纏わせる。


 青白い光。


「行け!」


 ――バシュンッ!


 一瞬。


 黒鎧大猪の。


 胸。


 先ほど。


 リーナが作った傷。


 そこへ。


 命中。


 ――バヂィィィィッ!


「ブ……オォォ……」


 巨大な身体が。


 ゆっくり。


 傾く。


 ――ズズンッ!


 地響き。


 沈黙。


━━━━━━━━━━


黒鎧大猪ブラックアーマー・ボア


討伐しました。


━━━━━━━━━━


「……倒した」


 次の瞬間。


━━━━━━━━━━


大量の経験値を獲得しました。


━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━


レベルアップ!


Lv12



Lv21


━━━━━━━━━━


「……二十一」


 リーナが。


 振り返る。


「今」


「レベル上がった?」


「十二から二十一」


「…………」


「リーナ?」


「あとで聞きます」


「はい」


◇◇◇


 そして。


 黒鎧大猪の身体が。


 淡い光を放つ。


━━━━━━━━━━


《素材獲得量上昇》Lv10


発動


━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━


《黒鎧大猪の硬皮》×10


《黒鎧大猪の大牙》×20


《黒鎧大猪の黒角》×20


《黒鎧大猪の大魔石》×10


《黒鎧大猪の肉》×100


━━━━━━━━━━


「……いっぱい」


「また嬉しそうですね」


「だって」


「初めて見る素材」


 黒い硬皮。


 巨大な角。


 大魔石。


「錬金術に使えるかな」


「まず戦闘が終わったことを喜びませんか?」


「それも嬉しい」


 そして。


 ――キィィン。


 黒鎧大猪が。


 倒れた場所。


 光。


「……!」


 そこへ。


 一つの。


 銀色に輝く大きな宝箱が。


 出現した。


「宝箱」


「はい」


 リーナが。


 槍を収める。


「《徘徊強敵ワンダリング・モンスター》は」


「強敵扱いです」


「つまり」


「宝箱は確定」


 リリスの目が。


 また輝く。


「開けていい?」


「どうぞ」


 宝箱の前へ。


 しゃがむ。


「何が出るかな」


「本当に楽しそうですね」


「うん」


 蓋へ。


 手をかける。


 ――カチャン。


 開く。


 眩い。


 青白い光。


━━━━━━━━━━


《徘徊強敵討伐宝箱》


《黒鎧の護符》×1


《高純度魔力結晶》×5


《上級回復薬》×10


金貨×15


━━━━━━━━━━


「護符」


 手に取る。


 黒い。


 小さな角を模した。


 装飾品。


「《鑑定》」


━━━━━━━━━━


《黒鎧の護符》


分類:装飾品


品質:希少


━━━━━━━━━━


「また希少」


「ワンダリングモンスターの宝箱ですから」


「良い物が出やすいですよ」


「……」


 リリスが。


 少し考える。


「ワンダリングモンスター」


「探しに行きませんよ」


「まだ何も言ってない」


「言う前に止めました」


「普通に強いんだよね?」


「ええ」


 リーナが。


 真剣に答える。


「今回の個体は」


「私がいたから比較的安全に戦えました」


「ですが」


「地域によっては」


「私でも一人では危険な個体がいます」


「もっと強いのも?」


「当然です」


「……」


 リリスの黒い瞳が。


 また。


 少し輝く。


「なぜ嬉しそうなんです?」


「未知の素材がありそう」


「そこですか!」


◇◇◇


 改めて。


 《索敵魔法サーチ》。


 リーナが。


 周囲を確認する。


「敵性反応なし」


「私も」


 《気配察知》。


 《危険察知》。


 特に。


 反応なし。


「今度こそ帰れる」


「そのはずです」


「またワンダリングモンスター出ない?」


「出てほしそうに言わないでください」


 二人は。


 今度こそ。


 王都へ向かった。


◇◇◇


 冒険者ギルド。


 扉を開ける。


 ――ざわっ。


 中にいた。


 冒険者たち。


 受付嬢たち。


 一斉に。


 こちらを見る。


「戻ったぞ!」


「ゴブリン討伐組だ!」


「商隊は?」


「無事らしい!」


「五十以上いたんだろ!?」


「ホブゴブリンまでいたって……」


 リリスと。


 リーナ。


 受付へ。


「お帰りなさい!」


 ミレアが。


 少し身を乗り出す。


「ご無事で何よりです!」


「ただいま」


「状況は?」


 リーナが答える。


「ゴブリン集団」


「全個体討伐」


「商隊救出」


「負傷者も治療済み」


「ホブゴブリン・リーダーも確認」


「討伐しました」


「……全部?」


「はい」


 ミレアが。


 ほっと息を吐く。


「ありがとうございます」


「すでに商隊側からも」


「先行して報告が入っています」


 そして。


 視線。


 リリスへ。


「リリスさんが」


「かなり活躍されたと」


「ちょっとだけ」


「ちょっと?」


 リーナが。


 横を見る。


「五十体以上の群れ相手に」


「《多重捕捉射撃》で複数体をまとめて討伐」


「ホブゴブリンも援護」


「重傷者まで回復」


「……」


「これをちょっとと?」


「リーナもいっぱい倒したでしょ?」


「私はLv48の騎士副隊長です!」


「私はFランク」


「そうです!」


 ミレアが。


 頭を抱えた。


「そのFランクという部分が」


「一番おかしいんですよ……」


「それと」


 リーナが。


 続ける。


「帰還途中」


「《徘徊強敵ワンダリング・モンスター》と遭遇しました」


 ギルド内。


 空気が。


 少し変わる。


「種類は?」


「《黒鎧大猪ブラックアーマー・ボア》」


「……!」


「討伐済みです」


「討伐!?」


 ざわめき。


「黒鎧大猪ってCランク級じゃ……」


「新人が?」


「嘘だろ」


 ミレアが。


 恐る恐る。


 尋ねる。


「討伐したのは」


「リーナ様ですよね?」


「共同です」


「共同……」


「最後の一撃は」


「リリスです」


「……」


 ミレアが。


 リリスを見る。


「Fランク」


「はい」


「登録初日」


「はい」


「ゴブリン五十以上」


「はい」


「ホブゴブリン」


「はい」


「ワンダリングモンスター」


「はい」


「……」


 長い沈黙。


「ランク制度って」


 ミレアが。


 小さく呟く。


「何でしたっけ……」


「ミレアさん?」


「大丈夫です」


「少し現実を整理しています」


◇◇◇


 緊急依頼。


 商隊救助。


 ゴブリン討伐。


 さらに。


 ワンダリングモンスター討伐。


 確認が進み。


 やがて。


 報酬が提示された。


━━━━━━━━━━


《緊急依頼達成》


《ゴブリン集団討伐》


《商隊救助》


《ホブゴブリン・リーダー討伐》


《徘徊強敵討伐》


━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━


《総合報酬》


金貨×32


銀貨×180


━━━━━━━━━━


「結構もらえる」


「命の危険がある仕事ですから」


 リーナが答える。


「それに今回は」


「緊急依頼と強敵討伐が重なっています」


「なるほど」


 収納。


━━━━━━━━━━


金貨×32


銀貨×180


《インベントリ》へ収納しました。


━━━━━━━━━━


「それから」


 ミレアが。


 少し複雑そうな顔をする。


「リリスさん」


「はい」


「今回の功績ですが」


 冒険者証。


「Fランクの実績としては」


「明らかに過剰です」


「過剰」


「はい」


「ギルド内部で」


「昇格について協議させていただきます」


「いきなり?」


「普通ならあり得ません」


「ですが」


 ミレアが。


 遠い目をする。


「登録初日にワンダリングモンスターを倒すFランクも」


「普通はいません」


「……」


 リーナが。


 小さく笑った。


「やっぱり」


「?」


「リリスは」


「普通の新人冒険者にはなれそうにありませんね」


「普通にやってるつもりなんだけど」


「その普通を」


「まず修正しましょう」


「難しそう」


「でしょうね」


 リリスは。


 自分の《インベントリ》を見る。


 大量のゴブリン素材。


 新しい宝箱の戦利品。


 《黒鎧大猪》の素材。


 金貨。


 そして。


 Lv21。


 冒険者になって。


 まだ。


 一日目。


「……」


 でも。


 悪くない。


 むしろ。


「楽しい」


「何がです?」


「冒険者」


 リリスが。


 笑う。


「次はどんな魔物がいるんだろ」


「その前に」


 リーナが。


 ぴしゃりと言う。


「休憩です」


「え」


「今日一日で戦いすぎです」


「まだ動けるよ?」


「私はあなたの体力ではなく」


「常識の方を心配しています」


「それどういう意味?」


「そのままです」


 赤髪の騎士が。


 ため息を吐く。


 その隣で。


 リリスは。


 もう一度。


 《黒鎧大猪の黒角》を眺める。


「……これ」


「錬金術に使ったら何ができるかな」


「ほら!」


「?」


「もう次のこと考えてるでしょう!」


 王都の冒険者ギルドに。


 リーナの声が。


 大きく響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ