プロローグ 500年後の世界へ
――残り、一分。
夕暮れに染まる空を。
リリス・ルクスヴィアは、白亜の神殿から静かに眺めていた。
ここは《始まりの白神殿》。
世界最大級のフルダイブ型VRMMORPG。
《リリンズ・ゲート・オンライン》。
通称――LGO。
運営期間、十年。
世界累計プレイヤー数――一千二百万人。
世界中の多くのプレイヤーに愛され続けてきたこのゲームも。
今日。
ついにサービス終了の日を迎える。
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《サービス終了まで》
00:00:58
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「……本当に終わっちゃうんだ」
リリスは。
誰に言うでもなく、小さく呟いた。
《リリス・ルクスヴィア》。
それは。
彼女がLGOで十年間使い続けてきた名前。
現実での名前は。
黒瀬莉央。
二十一歳。
ごく普通の女子大学生だった。
莉央がLGOを始めたのは十年前。
初めてフルダイブした日のことは。
今でも鮮明に覚えている。
頬を撫でる風。
草木の匂い。
川の水へ触れた時の冷たさ。
自分の足で大地を踏みしめる感触。
剣。
魔法。
魔物。
どこまでも続く世界。
初めて降り立った時には。
本当に異世界へ迷い込んだのではないかと。
そう思ったほどだった。
それから十年。
莉央は。
数え切れないほどの場所を旅した。
深い森。
広大な草原。
灼熱の砂漠。
雪に覆われた山脈。
空に浮かぶ島々。
海底へ沈んだ古代都市。
地下深くまで続く巨大迷宮。
強大な魔物とも戦った。
仲間たちと攻略した場所もあれば。
一人で。
何日も素材を探し回ったこともある。
そして。
莉央が何よりも好きだったもの。
それは。
素材を集め。
新しい物を作ることだった。
「最初の頃なんて、初級ポーション一個作るのにも失敗してたなぁ」
思い出して。
小さく笑う。
薬草。
鉱石。
魔物素材。
宝石。
魔力結晶。
珍しい素材を見つければ。
とりあえず持ち帰る。
使い道が分からなくても。
まずは保管。
そして。
何に使えるのか試す。
薬。
武器。
防具。
装飾品。
魔導具。
失敗すれば。
素材を集め直す。
配合を変える。
加工法を変える。
何度でも挑戦した。
そんなことを。
十年間。
ひたすら続けた結果。
リリスは。
LGOでも最高峰に位置する錬金術師へ到達していた。
その称号は。
《神級錬金術師》。
「……十年かぁ」
長かったような。
短かったような。
視界の端。
カウントダウンが。
静かに減っていく。
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《サービス終了まで》
00:00:10
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とうとう。
残り十秒。
「十」
最後くらい。
自分で数えることにした。
「九」
「八」
「七」
夕暮れの風が。
肩にも届かないほどの短い黒髪を揺らす。
「六」
「五」
「四」
リリスは。
眼下に広がる景色を目に焼き付ける。
白亜の王都。
連なる山々。
夕陽を反射する大きな湖。
空を舞う飛竜。
雲の向こうに浮かぶ巨大な浮遊島。
何度も見た。
大好きな世界。
「三」
「二」
「一」
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00:00:00
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「……ありがとう、LGO」
その瞬間だった。
「……?」
何も。
起こらない。
「え?」
本来なら。
強制的にログアウトされているはずだった。
けれど。
リリスは。
まだ《始まりの白神殿》に立っている。
「ログアウトされない……?」
周囲を見る。
そして。
すぐに異変へ気づいた。
「鳥……?」
空を飛んでいた鳥が。
止まっている。
翼を広げたまま。
完全に静止していた。
神殿に掲げられた旗も。
風に揺れていた木々も。
雲も。
何もかも。
止まっている。
「なに……これ」
メニューを開く。
ログアウト。
選択。
――反応なし。
「え?」
もう一度。
「……できない」
その時。
――ピシッ。
「……?」
頭上から。
何かが割れるような音。
見上げる。
夕焼け空に。
一本の亀裂が走っていた。
「え……」
まるで。
巨大なガラスに。
ひびが入ったように。
――ピシッ。
――パキッ。
亀裂が。
どんどん広がっていく。
「ちょっと待って……」
空だけではない。
山。
街。
神殿。
足元の大地。
世界そのものへ。
無数の亀裂が走っていく。
「何が――」
次の瞬間。
――パァァァァン!
世界が。
砕け散った。
「――っ!」
白亜の神殿。
王都。
山々。
空。
大地。
すべてが。
無数の光の欠片となって。
暗闇へ消えていく。
そして。
リリスの意識も。
その光へ飲み込まれた。
◇◇◇
「……ん」
ゆっくり。
目を開く。
「ここ……どこ?」
暗い。
何もない。
上も。
下も。
前も。
後ろも。
ただ。
果てしない暗闇だけが広がっている。
「ログアウト……じゃないよね」
自分の身体を見る。
姿は。
まだリリスのまま。
短い黒髪。
黒い瞳。
十年間。
使い続けてきたアバター。
「どうなってるの……?」
その時。
暗闇の中へ。
一つ。
小さな光が灯った。
「?」
もう一つ。
さらに一つ。
次々と。
光が増えていく。
「星……?」
気づけば。
周囲には。
無数の星々が広がっていた。
真っ暗だった空間が。
果てのない星空へ変わっていく。
「……綺麗」
その中央。
リリスの足元から。
白銀色の階段が。
ゆっくりと姿を現した。
「階段?」
星々の間を縫うように。
上へ。
上へと続いている。
その先。
星海に浮かぶ。
小さな白い神殿。
「……行ってみろってことかな」
他に。
進めそうな場所はない。
リリスは。
白銀の階段へ足を踏み出した。
◇◇◇
階段を上り切る。
目の前には。
純白の神殿。
扉は。
すでに開かれている。
リリスは。
少しだけ警戒しながら。
中へ足を踏み入れた。
「ようこそ」
「……!」
柔らかな声。
神殿の中央に。
一人の女性が立っていた。
長い銀白色の髪。
神秘的な瞳。
純白の衣。
身体の周囲には。
淡い光が漂っている。
人間とは思えないほど。
美しい女性。
「あなたは……?」
「私はエルシア」
女性は。
穏やかに微笑んだ。
「この世界を創造した者です」
「この世界?」
「はい」
エルシアは。
静かに答える。
「あなたたちが」
「《リリンズ・ゲート・オンライン》と呼んでいた世界を」
「……え?」
リリスは。
数秒。
言葉を失った。
「LGOを……?」
「ええ」
「ゲーム会社の人……じゃないですよね」
「違います」
エルシアが。
少し楽しそうに笑う。
「私は」
「あなたたちの言葉で表すなら」
「創造神と呼ばれる存在です」
「創造神……」
あまりにも。
現実離れした話。
けれど。
世界が目の前で砕け。
星の海に浮かぶ神殿へ来ている時点で。
普通ではない。
「でも」
リリスが尋ねる。
「LGOを創ったって……どういう意味なんですか?」
「正確には」
エルシアが。
リリスを見る。
「あの世界は」
「あなたたちのために作られたゲーム世界ではありません」
「……え?」
「《リリンズ・ワールド》」
「それが」
「あの世界の本当の名前です」
「リリンズ・ワールド……」
「はい」
リリスが。
ゆっくり尋ねる。
「じゃあ」
「LGOの世界って」
「本当に存在するんですか?」
「存在します」
「……」
「あなたたちの世界からは」
「特殊な仕組みを通じて」
「ゲームという形で接続されていたのです」
「それじゃあ……」
「街も?」
「存在します」
「森も?」
「存在します」
「魔物も?」
「もちろん」
「……NPCは?」
その問いに。
エルシアは。
少しだけ。
優しい表情になる。
「あなたたちがNPCと呼んでいた者たちも」
「《リリンズ・ワールド》では」
「一人一人が命を持って生きています」
「……」
十年間。
ゲームだと思っていた世界。
そこで出会った人々も。
本当に。
生きていた。
「じゃあ……」
リリスは。
少し間を置いて。
尋ねる。
「今も」
「あの世界はあるんですか?」
「あります」
「今も?」
「ええ」
「ただし」
エルシアの声が。
少しだけ真剣になる。
「あなたが知っている時代とは」
「大きく異なります」
「どういうことですか?」
「あなたがLGOとして知る時代から」
一拍。
「《リリンズ・ワールド》では」
「すでに五百年が経過しています」
「…………」
リリスは。
固まった。
「五百……?」
「はい」
「五百年?」
「五百年です」
「……五百年!?」
声が。
白い神殿へ響いた。
「そんなに経ってるんですか!?」
「ええ」
「じゃあ」
頭の中へ。
次々と疑問が浮かぶ。
「私が知ってる国は?」
「残っている国もあります」
「なくなった国も?」
「あります」
「街は?」
「新しく生まれた都市も」
「歴史の中で消えた都市も存在します」
「……」
五百年。
それだけの時間が経てば。
世界は変わる。
国。
文化。
技術。
人々の暮らし。
そして。
「魔物も?」
「新たに確認された種が数多く存在します」
「素材は?」
「あなたの知らないものも」
「たくさんありますよ」
「錬金術は?」
「五百年分」
エルシアが微笑む。
「発展しています」
「…………」
リリスの黒い瞳が。
明らかに輝いた。
「……見たい」
「ふふっ」
「え?」
「いえ」
エルシアが。
楽しそうに笑う。
「五百年経った世界と聞いて」
「最初に興味を持つのが素材と錬金術なのですね」
「だって」
リリスは。
少しだけ視線を逸らす。
「知らない素材がいっぱいあるんですよね?」
「ええ」
「LGOにはなかったものも?」
「たくさん」
「知らない錬金術も?」
「もちろん」
「……」
行ってみたい。
その気持ちが。
急速に大きくなっていく。
「黒瀬莉央さん」
「はい」
エルシアが。
静かに手を差し出した。
「あなたに」
「一つ、提案があります」
「提案?」
「五百年後の」
「《リリンズ・ワールド》へ」
一拍。
「行ってみませんか?」
「……え?」
リリスが。
目を見開く。
「私が?」
「はい」
「本当に?」
「もちろんです」
「この姿は……?」
「そのままで構いません」
エルシアが。
穏やかに答える。
「黒瀬莉央としてではなく」
「あなたが十年間使い続けてきた」
「《リリス・ルクスヴィア》として」
「……」
十年間。
冒険を共にしてきた。
もう一人の自分。
考える時間は。
ほとんど必要なかった。
「行きたいです」
「五百年後の世界」
「見てみたいです」
「ふふっ」
エルシアが。
嬉しそうに微笑んだ。
「そう言うと思っていました」
◇◇◇
「それでは」
エルシアの掌に。
白銀の光が集まり始める。
「あなたが」
「これから先」
「長い時間を自由に旅できるように」
「私から」
「いくつか贈り物をしましょう」
「贈り物?」
「まずは」
白銀の光が。
リリスの胸へ飛び込んだ。
「――っ」
身体中へ。
温かな感覚が広がる。
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《創造神エルシアの加護》
を獲得しました。
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続けて。
新たな表示。
━━━━━━━━━━
《創造神エルシアの加護》
《全状態異常完全無効》
《全属性ダメージ半減》
《物理ダメージ半減》
《魔法ダメージ半減》
《精神干渉完全無効》
《呪詛完全無効》
《即死完全無効》
《能力低下完全無効》
《体力自然回復超強化》
《魔力自然回復超強化》
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「…………」
リリスは。
一覧を。
上から下まで見る。
そして。
もう一度見る。
「……すごくないですか?」
「そうでしょうか?」
「すごいと思います」
「ふふっ」
エルシアは。
楽しそうに微笑んでいる。
「そして」
もう一つ。
白銀の光が。
リリスを包んだ。
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《不老不死の加護》
を獲得しました。
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「……不老不死?」
「はい」
「私が?」
「あなたが」
「本当に?」
「本当に」
「年も取らないんですか?」
「取りません」
「寿命も?」
「ありません」
「死なない?」
「死にません」
「……」
リリスは。
自分の胸へ手を当てた。
「とんでもないもの貰っちゃった……」
「あなたには」
エルシアが。
優しく微笑む。
「《リリンズ・ワールド》を」
「心ゆくまで見てほしいのです」
「……」
「十年ではなく」
「百年」
「千年」
「その先も」
「あなたが望む限り」
「自由に旅をしてください」
「百年……千年……」
普通の人間なら。
決して届かない時間。
けれど。
今の自分なら。
「全部の大陸を回っても」
「まだ時間が余りそう」
「何周しても構いませんよ」
「それも楽しそう」
自然と。
笑みがこぼれた。
「それと」
「まだあるんですか?」
「もちろん」
エルシアが。
指先を上げる。
星々の光が。
次々と集まってくる。
一つ。
二つ。
三つ。
やがて。
十個。
白銀色の光が。
リリスの周囲へ浮かんだ。
「これは?」
「あなたの旅を助ける」
「十のスキルです」
十個の光が。
一斉に。
リリスへ吸い込まれた。
「わっ」
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創造神エルシアより
《初期スキル》を授与されました。
取得数:10
全スキルLv10
━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━
《初期スキル》
《獲得経験値上昇》Lv10
《必要経験値減少》Lv10
《獲得AP上昇》Lv10
《獲得SP上昇》Lv10
《ポイント消費軽減》Lv10
《素材獲得量上昇》Lv10
《自動収集》Lv10
《鑑定》Lv10
《インベントリ》Lv10
《錬金術》Lv10
━━━━━━━━━━
「……錬金術」
リリスの視線が。
最後の項目で止まる。
「ちゃんとあります」
「あなたには」
「何より必要でしょう?」
「はい」
即答だった。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
さらに。
エルシアが。
リリスへ手を向ける。
「最後に」
「あなたの身体そのものも」
「この世界で十分に力を扱える器へ整えておきます」
「器?」
瞬間。
リリスの身体へ。
今までとは比べものにならないほど。
濃密な力が流れ込んできた。
「――っ!?」
熱い。
けれど。
苦しくない。
身体の奥。
今まで意識したことのなかった場所へ。
巨大な何かが。
満ちていく。
「これ……」
「魔力です」
「魔力……」
「確認してみてください」
「どうやって?」
「念じるだけで」
言われた通り。
意識する。
すると。
目の前に。
小さな表示が現れた。
━━━━━━━━━━
《魔力》
MP:100,000
━━━━━━━━━━
「……十万?」
「はい」
「MPが?」
「十万です」
「…………」
数字を。
もう一度見る。
「多いですよね?」
「かなり」
「やっぱり」
どうやら。
気のせいではなかった。
身体の中に。
とても使い切れる気がしないほど。
膨大な魔力が満ちている。
「これなら」
リリスが。
少しだけ笑う。
「錬金術もいっぱい使えそう」
「やはり最初にそこなのですね」
「大事なので」
「あなたらしいです」
エルシアが。
嬉しそうに笑った。
◇◇◇
「さて」
しばらくして。
エルシアが。
静かに周囲を見る。
「そろそろ時間です」
「時間?」
「あなたが」
「《リリンズ・ワールド》へ向かう時間ですよ」
その瞬間。
神殿の床に。
巨大な魔法陣が浮かび上がった。
「……魔法陣」
見覚えのない。
複雑な術式。
白銀の光が。
ゆっくりと広がっていく。
「現在」
エルシアが説明する。
「《リリンズ・ワールド》に存在する一つの大国」
「《聖ルミナス王国》で」
「異世界から人々を招くための」
「《勇者召喚》が行われようとしています」
「勇者召喚……」
「はい」
「そこへ」
エルシアが。
ほんの少し。
いたずらっぽく笑った。
「あなたも一緒に送ります」
「……勝手に混ざって大丈夫なんですか?」
「大丈夫です」
「本当に?」
「神様ですから」
「便利ですね、その言葉」
「便利ですよ」
「……」
二人とも。
少しだけ笑う。
「でも」
リリスは。
足元の魔法陣を見る。
「王国に召喚されるなら」
「最初から人のいる場所なんですね」
「ええ」
「五百年後の世界について知るにも」
「都合がいいでしょう」
「確かに」
知らない世界。
知らない時代。
その最初が。
人の暮らす大国なら。
情報を集めることもできる。
「ただし」
「はい?」
エルシアの表情が。
少しだけ真面目になる。
「これから先」
「あなたがどこへ行くか」
「誰と出会うか」
「何をするか」
「それは」
「あなた自身が決めることです」
「……」
「誰かに」
「あなたの人生を決めさせる必要はありません」
「自由に?」
「はい」
「好きな場所へ行って」
「好きなものを見て」
「好きなことをしてください」
その言葉に。
リリスは。
小さく笑った。
「それなら」
「世界中を旅します」
「ええ」
「知らない街へ行って」
「はい」
「知らない素材を集めて」
「はい」
「錬金術もいっぱいやって」
「ふふっ」
「五百年で変わった世界を」
黒い瞳が。
楽しそうに輝く。
「全部」
「自分の目で見てみたいです」
「それでいいのです」
エルシアが。
優しく微笑んだ。
足元の魔法陣が。
徐々に。
強い光を放ち始める。
「……もう行くんですね」
「ええ」
「エルシア様」
「はい?」
リリスは。
少し考えてから。
頭を下げた。
「ありがとうございます」
「この世界へ行かせてくれることも」
「加護も」
「スキルも」
「魔力も」
「全部」
顔を上げる。
「私」
「いっぱい旅してきます」
「ええ」
「百年でも」
「千年でも」
「好きなだけ」
「そうしてください」
エルシアの声は。
どこまでも。
優しかった。
「……また」
リリスが尋ねる。
「会えますか?」
エルシアは。
少しだけ。
目を細めた。
「縁があれば」
「きっと」
「またいつか」
「……分かりました」
白銀の光が。
リリスの足元から。
ゆっくりと身体を包んでいく。
「それでは」
エルシアが。
最後に。
優しく微笑んだ。
「行ってらっしゃい」
「リリス・ルクスヴィア」
その言葉に。
リリスも。
笑って答える。
「はい」
「行ってきます」
白銀の光が。
一気に強くなる。
星の神殿。
無数の星々。
そして。
創造神エルシアの姿が。
白い光の向こうへ。
少しずつ消えていく。
「良い旅を」
それが。
最後に聞こえた。
エルシアの声だった。
そして。
リリスの視界は。
完全な白に包まれた。




