俺は岸シェロ
「俺は、たしかに警戒をしていたよ。だけど君がカムイくんだと知って安心に変わったんだ、だから警戒とは違うのだと解ってほしい」
「どういうこと? 僕の知っているシェロとはちがう人なの?」
「そういうことになる、でもこの姿は黒耳シェロという少年で間違いないんだ」
「肉体はシェロのもので、じゃあ中のキミはだれ?」
「俺は……岸シェロだ」
そのようにいう他はない。
中身の俺が君のような警官で、事件に巻き込まれて死亡後、この体に転生したなどと。
そして先ほどそのことに目覚めた。
ぼーっと歩いていた時はまだはっきり自分が解っていなかった。
「そう覚えておいて。そしてこの場所から離れないと危険が身に迫ることも、信じてほしいんだ」
「それじゃ、僕と行こう!」
えっ、そんなあっさりと。
「俺は君の知る、黒耳シェロじゃないんだよ? どうして一緒に?」
「だれでも関係ない。困ってるんでしょ? 僕が保護するから。どこにいけばいい?」
「そんな。悪い奴かもしれないのに、カムイくんはお巡りさんに向いてないんじゃない? もっと疑わなきゃ勇者なんかにはなれないよ。あ、作家さんは勇者って言わないんだっけ」
「そ、それって! 僕とシェロしか知らないはずなのに……」
いや、俺。君に以前、職質かけて聞いてるから。
もしかして、そこも忘れているのか。
これは確実に中身はカムイくんで間違いはなさそうだ。
だがその姿を見れないから、カムイくんがあのまま成長したのか、それとも君もなのか。
君も。そうだとすれば、だれの肉体だ?
「姿は警官なんだよね?」
俺はカムイにそう告げた。
彼は平然と返して来た。
「姿は、って? 僕はずっと僕だよ」
前者のほうなのか?
転生はしておらず、ありのままのカムイくんなのか。
警官としての名がほかにあったりしない?
「カムイくん、ラビという同僚に心当たりはないかな?」
「ううん。そんな人、周囲には居ないけど」
「わかったよ。ここを離れよう。あいつが来てしまう」
あいつだ、いま俺たちのやり取りを遠目に見ているだろう。
俺の中身はシェロに入っているのだ。
そこに居るのは俺ではない、中身は俺じゃないんだ。
そうだ、茶屋の前で様子をうかがい声を掛けて来ない警官がいるはずなのだ。
「カムイくん、近くに茶屋があるだろう?」
「うん」
「そこにこちらをじっと見つめる警官がいないか?」
「あ、いるね! どうしてわかったの?」
「やっぱり。あいつね、俺を誘拐するかもしれないニセ警官なんだ」
「えっ、じゃあ懲らしめて、捕まえなきゃ」
「とても太刀打ちできないよ! 一緒に逃げて、お願いだよカムイ」
そいつが、あの憲兵である可能性が俺の中で浮上した。
肉体はもはや俺でもない。ひとつ手前の転生後の俺だ。
憲兵の記憶があやふやだとしても、いつか俺とシェロを殺りにくる。
接触は避けねば、シェロの姿と俺の存在で目覚めさせては不味い。




