第86話 オフレコの竜之助
翡翠さんが荒らしに荒らした、あの古い一軒家に戻って来た。
「つぅかぁ? 手前にとっちゃあ沢山ある別荘の一つじゃねぇかよ」
「何? ここのこと知ってるの? 君」
「知ってるつぅかぁ? ……知らないよぉ」
肩を並べながら、饒舌に言う翡翠さん。
本当に悪びれる様子も、反省をする様子もないんだから。
(本当に。おじさんのお兄さんには見えないんだよなぁ)
性質が悪いったらない感じがするんだよ。
でも。
(俺も、か)
バツが悪くなってしまうんだ。
だって、俺だっておじさんや、翡翠さんにも嘘を吐いたんだから。
(笑えないったらないもんなぁ)
「いいから。黙って、親孝行をしろ」
「っはぁいぃ??」
鍵を横に置かれた木の植木から取り出すたんだけど。
あのとき、翡翠さんはどうやって入ったっけかな。
靴を雑に脱ぎ捨てて、リビングへと行けば。
あぁ、はいはい。
「こりゃあ。盛大、に……ですねぇ」
棒読みにも俺が声を漏らしてしまう。
「でしょう? こんな古い家に金物なんかないってのになぁ」
腕を組んで大きく息を吐いて、ぼやくおじさんのお父さん。
ハラハラ、と俺の胃も痛く待ってしまう感じだ。
「金物あんでしょうぉ? ほらぁ。母ちゃんと喧嘩して来るのって、頻繁にここだって聞いたもぉんねぇ。オイラぁ」
「……ふむ。なら、ここに来るのは――概ね、想像はつくな?」
目を細めるおじさんのお父さんに、
「はいはいぃ。あぁ、たくま君♪ 一緒に協力して助け合ってくれるよな? な??」
翡翠さんが目を見開いて俺に聞くって言うか。
半ば、強迫をしてきたもんだから。
「よ、喜んで」
頷く他もないじゃないか。
この展開は。
◆
やっぱり壊した分だけ時間もかかるよね。
壊したものの燃えるゴミに、燃えないゴミにと。
分別させていくのが一番大変だった。
いちいち、おじさんのお父さんに確認もしたんだから。
「疲れた」
「お疲れ様だったね……たくま、君だっけ? 君の名前は」
「はい。えび――牛男たくまです」
「あの馬鹿と愚息2号と一緒は大変じゃないかい?」
「大変だとか。思ったことないですよ? まだ、出会って二日目だし」
俺が分別をし始めて、終わった頃には。
ソファーに倒れ込むかのように寝ている翡翠さんの姿があって。
殺意は湧くよね、やっぱりさ。
「こういう賑やかなのって……初めてだったから。嬉しいです」
「賑やかな、か」
そういうとおじさんのお父さんが二階へと向かった。
俺は翡翠さんの顔を見下ろして、ソファーの前に座って背中を預けた。
「ふぁあ~~っ!」
朝から拉致されて、商品確保しに行かされて。
翡翠さんのせいで、また拉致されて片付けを強要されて。
俺だって眠いんだけど。
「その馬鹿は身体が弱いんだ。だから、少し身体を離して貰えるかな」
毛布を抱えたおじさんのお父さんが俺に言い放った。その言い分に、俺も口をへの字にさせてしまう。
一応、家主の言うことは聞いて。
俺は、もう一つのソファーに腰を据えた。
「どこから話そうか。ただ、この話しはオフレコで頼むよ」
オフレコなら言わなきゃいいのに。
「いいね?」




