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第58話 金を稼ぐ方法

「翡翠さぁ~~ん!」


 おじさんを背負ったままの翡翠さんに、

「本当に! 翡翠さんの家に行きましょうってばァ~~っっっっ」

 俺は吐き捨てるように言った。

 だって、だってですよ。

 空腹に背は変えられないってもんでしょうに。


「嫌だ! ぃ、っやっでっすぅ~~‼ 絶っっっっ対にぃ!」


 思いのほか、大きく翡翠さんが吠えたもんだから。

 周りの通行人も俺達へと。

 怪訝な表情で視線を送ってきやがるし。


「でも! それくらいしか! 食う手段がないじゃんか! そうじゃないの?!」


 もう、俺だって黙ってなんかいられない。

 おじさんが限界を超えて、倒れてしまっている以上。

 翡翠さんにも反抗をしなきゃなんだ。

「でも! ボクはっ、オイラは帰りたいないんですぅ!」 

「駄々こねないでくれますかぁ?? おじさんが倒れちゃってんだかんね!」

「~~嫌なもんは嫌なんだよ! 手前、しつっけぇんだよっ! 糞野郎がッ!」


 歯を剥き出しなって俺と、翡翠さんが睨み合った。


 だから。

 余計に――……


「「腹が減ったァ」」


 空腹が増してしまって、俯いてしまう。

「本当に……帰りたくないんですかぁ?」

「……ヒゲと髪も……変えちゃったしぃ。たくまくぅん、勘弁してくれねぇかなぁ?」

 萎れた表情で言われちゃったら。

 俺だって、もう何も言えないじゃんか。

「……――今回は、ねぇ? おねがぁい♪」

 頭を俺は掻きながら、俺はため息を吐いた。

「じゃあ、どうします?! 何かいい案を出して下さい! 俺だって腹ペコです!」

「そぅだねぇ」


 ワァあああっっっっ!


「――ん? 歓声……かなぁ? 喧嘩かなんかしてるのかな?」

 俺はびっくりして翡翠さんを見上げたんだけど。

「ぇ、えぇと……翡翠、さん?」

 すごく、いいこと思いついたとばかりに。

 すんごくいい表情で嗤っていたんだ。


「たくま君♪ いい稼ぎ場所ぉ、思いついちゃったんですけどぉ」


 身体を少し浮かして、背負っているおじさんの身体を抑え直すと。

 歓声が起こっている場所へと、翡翠さんが力強い足どりで向かっていた。

 

 ◆


 この山全体が《ワールドルーツ日本支部》であって。

 ある種の王国のような場所だろう。


 だから、居住区にいるのは全員が従業員だ。


 日本における秩序や法律は。

 ここでは意味を成さないのかもしれない、とか。

 むしろここは。

 日本じゃなくて異世界――そのものなんじゃないのかな、とか。


 目の前には人だかりがあって。

 白熱するかのように歓声が起こっている様子に。


「――ファイトクラブ的なことをしてるの?」


 俺は目を疑ってしまう。


「そぉだよぉ。血の気の多い連中の発散場所でねぇ、腕を競って争う場所」

「金銭の賭けとかなら捕まっちゃいますよ」

「この王国ワールドルーツでは大丈夫なのさぁ」


 場所は巨大なゲームセンター前。

 

「エントリーしてこよっとぉ」


 喜々として行く翡翠さんの様子からいえば。

 参加して――金を稼ぐようだった。


 


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