第54話 口座凍結のお知らせ
「……まぁ。そりゃあ、そぅだとは。つぅかだよ? っはァあ゛あ゛?!」
俺とおじさんと作業着で、翡翠さんは中に私服も着ていたようで。
趣味の悪い柄シャツの半袖に、パーカーをだらしなく着込んでいる。
そのまま、俺達は街に繰り出したまではよかったんだ。
トトナは留守番にしたことには、悪いような気分にもなったけどしょうがない。
それはそうと、翡翠さんが素っ頓狂な声を出したのは。
ATMの前でだ。
何回か、同じような操作を繰り返した。
どうにも納得がいかないようで、また、目が見開いている。
その様子に、おじさんが言う。
「父さんなら口座を凍結すると思ったー」
どこか冷淡にため息交じりに、お腹を押さえた。
きゅるる~~と音も聞こえる。
「だって。オレんときも躊躇なかったしー」
おじさんの言葉に、俺も頷いてしまう。
確かに、おじさんのお父さんの竜之助さんならやりかねないと思った。
「でもー正直、これは嫌がらせレベルってもんじゃねぇよ。洒落にもなんねぇな」
おじさんが低い口調で言うのに、対して翡翠さんが、
「いいや。これは、多分……蓮さんだよぉううぅうう?!」
発狂しながら、頭を抑え込んでATMの前に、しゃがみ込んでしまう。
「あぁーそれはありそう。あの人ー兄さんのこと本当に好きだもんねーオレのこと目の敵にしてて、怖いもんねー……さっきの会話からも滲み出してたもんねー嫉妬が」
おじさんが腕を組んで宙を仰いでいる、と。
「でー兄さん。早乙女名義でのへそくりを出してもらってもいいかなー?」
顔をしゃがみ込んでいる翡翠さんへ向けた。
向けられた方はと言えば、
「――……はァ゛??」
常にしかめている眉毛の間のしわを、さらに深くさせて聞き返した。
「兄さんさぁー全く家に帰んないじゃなーい? でも、兄さんなら用心深いからさー……あるんだろぉう? へそくりってのがさぁー」
唇を突き出す翡翠さんに、
「はい! 出せー♪」
両手の人差し指をおじさんが差した。
満面の笑みを向けるおじさんに、
「……――しょうがないなァ、群青の末っ子には敵わねぇのなぁ」
翡翠さんの観念したかのように失笑する。
「出世払いのツケだかんなぁ? 勿論、手前もだぞぉ。たくま君」
「!?」
思いもしない俺へと言葉に。
俺の身体が大きくビクついてしまう。
「っふぁ、ふぁい! っも、もちろんっす!」
「うん。いぃ、返事だねぇ」
ゆっくりと立ち上がった翡翠さんは頭を掻いた。
「じゃあ、コンビニは無理だからぁ。もう少し歩くよぉ」
身体を翻して、俺達はコンビニを後にした。




