第27話 事情と事情と信念と
おじさんと翡翠さんが睨み合う。
律さんと後方さんが睨み合う。
「本当に! どいつもこいつもっっっっ」
俺ははぶられている。
どうせ、俺は新人のペーペーさ。
話したところで話しにならないってのは。
俺にだって理解は出来るよ。
でも。
理解する時間や、頭の中を整理する時間とかだって。
くれたっていいんじゃないのかよ。
「望むなってことなの。俺なんかが、身の程を知れっての?」
自分で言った言葉に俺が傷ついている。
こういうときに実績や、功績が俺なんかとは違うってことを。
見せしめられる。
今後、こんな展開に俺は歯痒い思いをして。
おじさん達を見上げるんだ。
でも、いつかは。
「! そだ! えぇと!」
俺は《英雄の拳》をめくって軍手の甲を押した。
唯一、恐らく俺の言葉を聞いてくれるかもしんない人物が。
1人だけいる。きっと、あの人なら。
「オペレーターの人! 聞こえてますか?! 恵比寿たくまです!」
必死に言う俺だったけど何の応答も返事もない。
心臓音がバクバクと聞えてくる。
これで、何もなかったらどうしたらいいのか。
――あーた。何よ、商品確保が遅いんでないの? 全く役立たずの新人だわね。
「!? ぉ、オペレーターさんンんっっっっ」
安堵に俺は涙声になってしまった。
それに、向こうのオペレーターさんも無言になってしまって。
誰かと話しているのか聞こえる。
少し、ざわついているようだ。
「助けて下さい! 助けて下さいぃいい!」
――あーたの仕事は何? 言ってみな。
「? 俺の仕事は商品の確保をすること……」
――僕の仕事はあーたを導くことしか出来ないの。他の従業員が役に立たないようなら。あーたが頑張る他ないでしょうに。職場放棄は許さないわよ、いいわね。恵比寿。
「うん。――うん! お姉さん、名前は何て言うんですか??」
俺はオペレーターさんに名前を聞いた。
すると、また他の人と話すのが聞えてくる。
「ぇえと。聞いたらダメなの? ごめんなさいっ」
――蓬田よ。さぁ! 教えてあげたんだから! さっさと《パステル46色》の商品確保に向かいなさい! 時間は金なりよ! あーた。
「うん! ……で、パステル46色はどの辺りにあるのかナビをしてもらってもいいですか?」
とっても大きなオペレーターさんの、蓬田さんがでかいため息を漏らした。
それに俺も、ちょっとショックなんだけども。
今は、いいや。
【22:51:09】
◆
「『あ。恵比寿君が何かをしょうとしてんな』」
そう後方が律に言う。
だが、
「『良い。どうせ、今回の商品確保は群青の兄弟で。《P通貨》も彼らのモノでござる』」
律は鼻先で一蹴させた。
「『あの者は所詮。《殉職者》になる者でござる』」
目を細める律に後方も。
頭を軽く振った。
「『あンたは人の見る目もなくなっちまったみてぇだなァ』」
「『お主は昔から何も変わらぬでござるな。人を愛するという戯言を好む』」
「『っふ、っは! 戯言結構だねぇ! 来いよ!』」
蜘蛛達が一斉に後方へと飛びかかった。
それを後方の靄が火花が散ると。
バチ!
バッチバッチ‼ と光ると。
蜘蛛達が焼き焦げた。
律も後方の靄から身体を離した。
「『お主。本気で拙者と殺り合う気でござるか』」
蜘蛛の上半身を人にさせて。
後方に確認をした。
表情が真剣そのもので、笑みもなく無表情だ。
「『んな気なんざねぇよ。俺ぁさぁ~~こう見えて平和主義なんで♪』」
へらっと肩をすくめると後方は姿を消した。
律も表情を和らげて、肩をすくめた。
「『平和主義でござるか。お主はいつも、自己犠牲をしたがるには困ったものでござるな』」
そして、律は群青兄弟へと足を奔らせた。
◆
「『兄ちゃんは別に竜二君に害をなそうとか思っていないし。むしろ――まぁ、いいや。あぁ。帰りたい』」
投げやりな翡翠に竜二も。
「はぁ~~兄さんは本当に性質が悪いんだよー」
頭を掻きながらわざとらしく息を吐いた。
「魔物を呼び寄せるんだからさぁ‼」
「『ま。そぅじゃなかったら、オイラも隊長になれたんだけどねぇー出世も見込めないのってさぁ。やっぱり……ま。いっかぁ。うん、いいやぁ』」
がっしゃん、と腰に手を当てて宙を仰いだ。
彼にだって彼の事情があって。
それは《ワールドルーツ》内部では知らない従業員はいない。
もちろんのこと、竜二も身内の事情は知っている。
体臭が人外のみに好まれるのだ。
しかも、汗をかきやすい体質でもあるから。
勤務時間や、出勤も限られていて、だ。
今回の勤務は《無断出勤》だった。
「『さぁー《獣王》の能力を見せてくれよぉ!』」
大目玉は覚悟の上だ。




