第24話 《ネクストループxxx》
「ぉ、おじっさぁああああンん゛ン゛っっっっ‼」
勢いよく俺を抱きかかえながら走り出した。
俺は、その風圧に驚いた。
もっとも、驚いたのは。
意外と細い腕で俺の身体を支えていることだ。
「何ーくまちゃーん」
「降ろして! 今すぐに‼」
「ダメだ」
「降ろしてってば‼ 今すぐにっっっっ」
俺が息巻くとおじさんも一息吐いて。
渋々と俺を腕から下ろした。
そして、後ろを振り向く。
「こんなところで揉めている暇はないんだよねー」
低い口調で言うおじさん。
身体は光りに包まれている。
「……それも。群青的な能力なの?」
俺は立ち上がっておじさんに聞いた。
「――……」
おじさんは無言で頭を掻いた。
そして、身体の光りが収まている。
「『おいおい。こんな状況で痴話喧嘩かよっ!』」
「!?」
俺は後方さんの声を驚いた。
だって、姿形もないんだぞ。
なのに、声だけが聞こえるんだぞ。
幽霊のように。
「っこ、こうほう、っさん?! っど、どこ??」
俺も慌てて辺りを見渡した。
そこで気がついたのは靄のような白いものが。
辺りに漂っているんだ。
すると。
「っは、っはっはっは! はいはいっと!」
白い靄のようなものが。
集まって人の形になった。
後方未来さんに。
「やぁ。群青の末っ子」
「ああ。後方さんがオレの監視なのか?」
少しキツイ口調でおじさんが後方さんに言った。
それに後方さんも、
「監視? ぃっや、いやとんでもない! んなの柄じゃねぇよ、俺ぁ」
手を軽く手前で振った。
「じゃあ。後方さんもおじさんと競うのか?」
「ま。そうなるわな? 俺もさぁ、欲しいもんがあっから《Δ硬貨》が必要なのさね」
デルタ硬貨と言う言葉におじさんの目が細くなった。
険しい顔つきだ。
俺が分からない専門用語が並べられる会話。
(いい加減に。うんざりだ)
俺も苛立ってくる。
だって、それは無視されているようなもんだ。
ここに居る、俺という存在を。
(《新人》だから……なのわさ、知ってんだけど)
「お前みたいなのが必要って。おじさん、びっくりだわ」
「そ? 時代は《Δ硬貨》だ。どんな望みも叶うんだし」
にこやかに笑いながら後方さんは煙草に火を点けた。
辺りがチカチカと、火花が散った。
「《ネクストループXXX》」
「――お前……」
低いおじさんの声に俺の背筋が凍った。
だから、思わず。
「後方さんっ」
後方さんの胸ぐらを掴んでしまった。
「いい加減にしろよ!」
それに後方さんがはにかんで、
ふぅうう~~……
煙草の煙を俺の顔に吹きかけた。
俺も煙たくて手をを離して煙を仰いだ。
「本当にクソ餓鬼。何も出来ねぇくせによぉ」
後方さんの姿がなくなって靄みたいなものが。
辺りに漂った。
チカチカと火花を散らしながら。
「反吐が出らぁ」
俺は後方さんにぐぅ音も出ない正論を吐かれた。
それを言われたら、言われてしまったら。
もう、何も言えないじゃないかよ。
「っく!」
「子供を苛める子は嫌いだよ。後方君」
ぽんぽん、とおじさんが俺の頭を優しく叩いた。
撫ぜたともいう。
「おじさんも怒るよー」
靄に戻った後方さんの表情は見えない。
一体、どんな顔をしているんだろう。
「っく! っはっはっは! なぁ? 時間は大丈夫?? 竜二ちゃん!」
俺は時計を見た。
【37:56:11】
「!? ぉ、おじさん?!」
「行こう――たくま」
おじさんは走り出した。
今度は俺を抱きかかえることもなかった。
少し、がっかりしたけど。
「うん!」
おじさんに幻滅させないように。
俺、頑張るよ。
【35:21:00】




