表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/169

第22話 兄と賭けと

「ぅ、おぉう……」


 もう、俺はそんな情けない言葉と言うか。

 ため息しか漏らせなかった。


 厚みのある扉が閉まった瞬間。


 まず、灯りが点いて。

 驚いた俺はおじさんを見下ろすと。

「あ。戻ってる!」

 少年の姿だったおじさんが、元のもさいおじさん戻っていた。

 アバ化はしていなかった。


「おじさんはアバらなくてもいいの?」


「ぅんー~~まぁーまぁー焦らないで。くまちゃん」

「そうなの? おじさんがそう言うなら……」


 そして、俺は他の従業員スタッフを見た。

 

「『あぁ。本当に帰りたい』」


 翡翠さんは鎧武者というか――落ち武者のようなアバだった。

 身長は高いままで。

 ゆらゆらりと揺れている。

(結構カッコいいな! 俺もあんなのがいいかも!)

 ただ、カッコいいと思った。

 俺が今日見た従業員は動物形状が多かったからだ。


 次いで。

 後方さんを見当たらなかった。

「?! ぁ、っれ?? 後方さん??」

 思わず顔を左右に振った。

 すると。


「『ここ。あンたの周りに浮いてる煙が俺の《変態》なのよ。びっくりした? ごめんな』」


 灯り照らされた煙が、後方さんになった。

 流石にびっくりしたけど。

 なんからしくて、思わず納得のアバだった。

 あと一人の律さん。


「?? また、いない。煙的なアバなのかな??」


 《57:21:45》


 ちなみにもう時間は動いていて。

 ちっくたっくと進んでいる。


「『恵比寿君ってさぁー蜘蛛、嫌いじゃない?』」


 俺に翡翠さんが腕を組んでそう言った。

 それにザワりと嫌な予感がしてしまう。

 思わず、足元を伺い見た。


 赤ちゃんの手のサイズ程の蜘蛛が。

 俺のシューズの上に乗っかっていた。


 ざわ。


 ざわざわざわ――……


 声にもならない。

 いや。

 声が出せない。


「    ――~~っつ!?」


 顔面蒼白になっているに違いない。

 

「『おっもしっろい反応でごっざるなぁ~~‼ 愉快、愉快‼』」


 そんな俺を喜々として律さんが嗤う。

 何を思ったのか、足元から俺の身体を這って来た。

 俺の膝がガクガクと揺れてしまう。


「『これから何故なにゆえにして。このような異様な格好になるのかを。拙者た――ボク達が一から叩きこんであげるから。立派な従業員コマンド・ランナーになってよね』」


 俺は何度も、何度も強い頷いた。

 それに律さんも飛び降りてくれる。


「ぉ、ねがぃします……はぁ~~」


「『さてぇー和みタイムはお終いよぉー』」

 がっしゃん、と鎧を鳴らしながら翡翠さんが言う。

 台詞はアレだが、真剣で重い口調の言葉だった。

「『くまちゃーん。時間はぁ』」


「!? ぇっと」


 《56:48:21》


「56分でっす!」


「『よっし。一丁行こうかぁー』」

 両こぶしを当てて言う翡翠さん。

 何で、隊長じゃないんだろう。

 この中で一番の年長者は翡翠さんだし。

 恐らく、功労者であってこの職一筋だと思うのに。

 

「『あ。竜二君、兄ちゃんと賭けしないかい?』」


「しないよ?」

 おじさんはにこやかに断った。

 そりゃあ、そんな賭けに乗らない方がいいってもんだよね。

「『今回の商品確保をどちらが早いかを。負けたらさぁー兄ちゃんの分の《ポイント通貨》もあげちゃう』」

 あ。

 何かヤバい空気だぞ。

 おじさんが、おじさんが。


「……《Δ硬貨》は?」


 はい、乗った。おじさん乗りました。

 そんなに欲しいものなんだな。

 ポイントも、デルタも。


「『いいよぉー兄ちゃんには必要ないものだしねぇ』」


 がっしゃん、と。

 おじさんに腕が伸ばされた。

 拳になっている手に。


「乗った。今回、そちらの助っ人はなし、でいいのかなー」


「『ああ。コイツらは休憩時間に捕まえたから。給料も発生しないかんなぁ』」


「「『……ひどい……』」」


 翡翠さんの言葉に律さんと後方さんの言葉が。

 ため息交じりに重なった。


「ああ。でも、二人共安心しなさいなぁー今度、父ちゃんが直々に何かくれるってぇーよろしくな! て言えって言われたの忘れてたぁー」


「「『マジっスかっっっっ‼』」」


 律さんと後方さんの声が。

 今までにないくらいに弾んでいる。


 これは翡翠さんの計算なのか。

 それとも本当に忘れていたのか。

 どちらも分からないけど。


 何かやり手というか。

 手慣れたような感じだ。


 この感じは――おっさんのように不気味で、怖い。

 それでいて恐ろしい存在感だ。


 これが群青なのか。

 そして、長男なのか。


「兄さん。置いてってもいいでかなー?」


 おじさんが俺を抱きかかえると。

 身体が光った。


「え゛!」


 びっくりする俺や、翡翠さんが返事する間もなく。

 おじさんは翡翠さん達から奔り去った。


「ぇ゛え゛ええ゛え゛っっっ‼」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ