レポート38
ボチャンッ。そんな音を立てながら、海の中に入った俺たち。
高所から水面に落ちると、圧がどうとかいうダメージは一切入っていないが、ゲームでそんなものを入れたらリアル志向でもない限り、批判殺到だろうから考えないでおく。
海の中はかなり綺麗で、透き通っている。小魚達がおよいでいて、ドキュメンタリーでみるような水色の海となっている。
たまにHPバーと名前が見えるモンスターがいるが、襲ってこないかぎりは無視しよう。
「ていうか、ゴーグルもなにもつけないで、しかも普通に喋れるんだな」
俺は海中を泳いでスズネを追いかけながら、そう話しかける。そこで気づく――視界の左側に見覚えのないゲージがでている。それは徐々に減っている。
「まあ、メインストーリークエストでも強制でここにくるようらしいからね。それでゴボゴボ状態でもいやでしょ」
「まあ、それはそうだ……ところで、この左にでてきたゲージはなにかわかるか?」
「酸素ゲージよ。それがなくなると酸欠状態になって、苦しくはならないけどゲーム的にはHPが徐々に減っていくわ」
「深いところに行くと、結構きつくないかそれ」
「酸素補給アイテムか、海底にある気泡がでている場所に接触すると回復するのよ」
「そういうことか」
泳ぎはゲームのアシスト的なもので、問題ないし観光地に行くという旅行減りそうじゃね……いや、実際に行くことに意味があるから、観光好きの人たちは旅行するし、さほど変わらないか。
「あとは、海面が近いなら外に顔を出すことね」
「了解だ。それで、目的地はまだなのか」
「今いる珊瑚の森ってエリアを抜けた先になるから、しばらくは景色楽しみましょう。ほら、サブ職業《漁師》のプレイヤーがモリ装備してとってるわよ」
「泳ぎ早いな。さすがにプレイヤースキルも結構影響するんだな」
「それはそうよ。とはいえ、システムアシストで攻略できるレベルにはなってるわ……私、リアルだと泳げないけど、何度かここきた時も戦えたから」
「それはひとりでか」
「悪い!!」
「いや、悪くないけど……俺よりコミュ症ってお前」
「違うのよ! 話題を出すのが苦手なだけなの! 話題を振ってくれれば話は全然できるのよ」
気持ちはわかるけど、話題を振ってもらえる人間って限られるからな。
スズネと海中の景色をたんのうしながら、この後も5分程度泳ぎ続けた。
……あれ、これって海中デートとかそういうのじゃ。いや、ゲームだしリア友じゃないからノーカンだ!
俺はそう言い聞かせた。




