小を殺し大を生かす
考える隙を与えぬ様にか、龍は休みなく攻撃を続けてくる。何とか避けられるのだが、私の肉体が限界に近づいて来た。このまま何もせず死んでなるものか! っと思うのだが……。試しに魔法を撃ってみたが硬い鱗に覆われた龍には効いてる気がしない。
だが、何か手は有る筈だと思考を止める事無く必死で頭をフル回転させ、解を考えるが……。
「うわぁ……」
痺れを切らしたのか3つ頭の龍達の口が光出し、見るからに光線でも放って来そうな状態になった。コレは私を早急に仕留める気か
私は防御魔法を展開。一重では足りないと思い3つまで重ねた頃、3つの龍の口から極太のレーザー砲が発射された。
「ウソッ⁉︎」
いとも容易く割れた1枚目の防御魔法。防御魔法は使う者によって硬度が異なるが、普通はそんなに簡単に割れる事は無い。まるで紙の様にあっという間に溶けた1枚目の防御魔法。2枚目もその直ぐ後に破れ、3枚目の命綱もヒビが入る。
「うぐぐぐっ」
必死で力を込めて破れるのを防ごうとしたが敵わず、無情にも最後の砦は破れて四散した。守る物が無くなった私は急遽、背に有る羽を私の体に巻き、難を凌ぐ。何とか凌ぎきったが、もう飛ぶ力も無く重力に任せて下に落ちる私。
幸いにも下に有った川に落ちた為、大事には至らなかったし、龍の目からも逃げ果せた。しかし、この森から逃げるのは至難の業である。そして王女をどうするか……。
私は川から上がり、私を見失いキョロキョロと辺りを見回す龍を眺める。先程の光線は下手を打てば肉体が消滅しかねない威力が有る。もう2度とくらいたくはないものだ
私はボロボロになったジャージの上着を破り捨て、タンクトップ姿で歩きだす。髪も解けて背中に流れて居るが気にして居る暇は無い。私は逸れた王女を探す事に。
頭上に龍が居なくなった。恐らく地上を闊歩して獲物を探して居るのだろう。龍は鼻も効くと王女が言って居た気がするし。
「貴女は……」
「あ、王女発見」
王女だけではない。他の生け贄の娘達も発見した。洞窟内に皆で入り隠れて居るらしい。
「見つかりますよ?」
「……。今は私の防御魔法で凌いで居るから大丈夫。でも、夜になれば……」
王女の防御魔法は非常に強力で、かの龍も昼間は手は出せないレベルなのだとか。しかし夜になり、更に強くなれば破られて貪り喰われる予定らしい
私の防御魔法も強力なのだが、先程は紙同然だった。なので、ちょっと信用ならない
「ごめんなさい。巻き込んでしまって……。でも怒りを鎮めないと龍が国を襲ってしまうの」
洞窟内に女性達の啜り無く声が聞こえてくる。外では龍の咆哮と辺りを闊歩する音がしている。龍は知って居るのだろう。女性の足では、そう遠くに行けない事を。だからこの辺りを徘徊し、獲物を探して居るのだ。
「申し訳有りません、お父様」
幾ら国の為に生まれた存在とはいえ、命を差し出す事に抵抗が無いわけではないのだろう。気丈に振る舞って居るが先程から体の震えは誤魔化せて居ない。
師匠には要らぬ情けはかけるな、自身に不必要な者は切り捨てろ、大事な者は作るな、自身は何も言わぬ剣であれっと教えられている。コレは感情をコントロールする上で1番大切な事なのだとか。
こう考えると私も結構冷たい奴だなぁ。師匠達の事をとやかく言えない
「すみません王女様。私は少し休みます」
私は怯えて震える女性達に慰めの声を掛ける事もせずに休息に入る。無情の様な気もするが私はこの女性達にどう声を掛けて良いか分からない。何故なら私には此処で怯えて震えるだけの、ひ弱な女性の気持ちが分からないからだ。
恐ろしいならば逃げれば良い。逃げられないのならば立ち向かえば良い。でないと、誰も助けてはくれないのだ。私の家は誰も助けてはくれなかった。どんなに苦しくても助けてくれる何処ろか、むしろ喜ばれた。
師匠だって、私が使えなくなれば簡単に切り捨てるだろう。
いつだって世界は無情で冷酷なのだ。己の力を信じて進まねば未来など無い
そこまで考えてフッと自傷気味に笑う。いつの間に、こんなに酷く醜い考えをする様になったのだろうか。出来る事なら私も彼女達の様に何も知らず無垢なる者で居たかったものだ。
最も、あの家でそれが出来るとは思わないが……。
私は目を瞑る。暫しの休憩だ。夜になれば動こう。勝てるか分からないが、勝たねば先は無い。逃げる事は出来るが、それでは後に響く。
夢を見た……
それは薄暗く悲しい場所。
それは長く久遠の時を渡った様な……途方もなく長い時間をそこで過ごす夢だ。
それは生け贄だ。これは生け贄だ。大を生かす為に、小を殺した後だ。
そう、私は小だった




