夜へ
恐ろしい咆哮で私は目を覚ます。嫌な目覚めだ。龍の咆哮が目覚まし替わりとは……。
洞窟の外を見ると、既に日は傾き黄昏が広がっていた。もうじき夜が訪れる。もう少しすれば私も動こう。
咆哮と足音が近くから聞こえる。この辺りを徘徊している様なので私達の居場所は把握済みなのだろう。
夜になればヤツも動く気なのかもしれない。それまでは此処には手を出さないつもりか、はたまた王女様の防御魔法が強すぎて入れないのかは分からないが、コチラにとっては有り難い。
「夜が来る……」
ぽっつりと王女が言う。それに釣られて顔を伏せて居た女性達は顔を上げて外を見つめる。
「はぁ……」
正義のヒーローになる気は毛頭無いが仕方ない。私は髪の一房を掬い、三つ編みにし、師匠と同じ様な髪型を取る。師匠と同じ髪型をすれば強くなれる気がするからだ。まぁ、あくまで『気』だが。
「行くか」
私は外に出た。東の空には星々が出始め、日は東の果てに沈む途中だった。後、少しで夜が来るだろう。
全方からズンズンと音が聞こえて来た。真っ直ぐ向かって来る様なので、私の居場所を察知しているのだろう。
『グゥルルル』
目の前の草木が倒れ、大きく恐ろしい龍が姿を現わす。そして
『グォオオォオオオ!!!!』
辺りに咆哮が轟いた。
私は羽を広げ、空に舞い上がる。それに続き龍も空に上がる。
そして日は沈み、完全なる夜が訪れる。空には星々が煌めいているだけで月は無く、本当に真っ暗闇であった。
『グゥルル』
「マジで⁉︎」
夜になった途端、龍の首が更に2本生えて来た。3つでも多かったのに更に増えるなんて……。反則だ!
羽も一回り大きくなり、手足も太くなる。体は更に大きくなり、尻尾も増えた。コレが、この邪龍の完全体なのだろう。「夜になれば何とかなるかなぁ」なんて甘い考えだったが……。無理だな、コレは。
「怖いから近づかないでおこう」
近接は一切しない! だって近づいたら喰われそうだもの! あぁ、そうさ! 私はイモっているよ!
先手必勝! 私は手を空には高々と上げて、ドス黒く大きな球体を生み出す。
コレを闇系魔法の【終わる大地】と言う。かなりの大きさにした魔法を相手に向かって投げた。
結果は直撃したにも関わらず無傷。しかし、森は大変な事になっていた。終わる大地の打つかった場所は木々が消えて、大地は大きく抉れ、クレーターが出来ていた。地形が随分変わってしまった。流石、終わる大地。
次は相手番なのか、口がまた光出した。今回は5つなので、先程の様に防ぐ事は出来ないだろう。ならば、コチラも打って出る事に。私は両手に魔力を貯める。そして闇系魔法の【死の光源】を前方の龍目掛けてに向けて撃つ。
5つの首から放たれる超極太レーザーと私の死の光源が真っ向から打つかる。向こうのレーザーが太過ぎて私の魔法が細く頼りなく見える。
しかし、私は夜に強い! しかも、夜になれば闇系の魔法の威力も上がる。なので、撃ち合いの勝負が五分五分。先に根を上げた方が負けだろう。
結局、勝負は私の負け。やはり、極太レーザーには勝てなかった様だ。
私は押し切られる前に魔法を解除し、空高く飛翔しレーザーを避けた。
「おぉー」
夜空に撒かれたレーザーは何と綺麗な事か。夜空に虹が架かった様であった。
龍は先程のレーザーで電池切れなのか、一度地上に降り立つ。そして、口から煙を吐き出して暫しの休憩状態に入る。
ここを逃してはいけないだろう。休んでいる所、悪いが追撃させてもらう!
私は追撃の一手を加える為、魔力を手に溜め込む。そして、その魔力を放出し、雷系魔法と闇系魔法の複合魔法【邪悪な雷】を撃つ。雲1つ無い空から、真っ黒な雷が龍目掛けて降り注いだ。
かなりの悲鳴を上げた龍であったが、致命傷までには至らなかった。コレでダメなら何が良いのか……。恐らく闇系統の魔法はダメージが軽減されるのかもしれない。ならば光系魔法だろうか? それでも難しいかもしれない。
1つだけ思い付くモノが有るが、それは人間が撃てる魔法ではない為、却下。そもそも、私は闇と対極に有る光系魔法が得意ではないし……。
悶々と悩んでいると怒り狂った龍が私目掛けて飛んで来た。なので応戦する。今までワンパターンだった龍の攻撃が変わり、更に苦しくなる。
しかし何とか食らいつき、弱体化を図りたい。何度も魔法を撃ち、時には殊技で攻撃し、相手の体力を奪って行くが、それより先に私の体力が持たなさそうだ。
何とかしなければ……。




