安息〜レクイエム〜
「ハロ〜、グリドさん」
「……⁉︎」
グリドの真後ろに出た私。グリドが驚く気配が私に伝わって来たが構ってられない。私は情け容赦無く、そして無慈悲にグリドを攻撃。反応が出来なかったグリドは、私の攻撃を諸に喰らい地面に倒れた。
グリドが地面に伏したと同時にパリンっという音が聞こえ、とうとう私の右目の視力が戻って来た!
お帰り、右目! そして、さよなら、左目!
「な、何が⁉︎」
ついでにグリドのお供も地面に転がし、お掃除完了。イェーイ! 完勝だ!
右目の視力が戻った為、自身の身なりを見下ろす。着せられていたドレスは見るも無残な布切れと化し、体は傷だらけ。これでは流石に人前に出れない。今出たじゃん、なんてツッコミは要らないからね
影からジャージを取り出し、着替える。そしてその辺にドレスの残骸を放置し、髪を結び、準備OK!
眼帯を取り出し左目に付けようか迷ったが、今は猛烈に痛いので締め付けに耐えられる気がしないので辞めておく。
「……左目無いじゃん」
左目がどんな状態か確認しようと、手鏡を取り出す。そして左目を移すと、なんと眼球が無い! 抉ったな! そりゃ、痛い訳だ!
「顔は女の命なのに! 酷いわ!」
1人で芝居をうっておく。女の命は髪だったっけ?
手当の仕方が分からない為、未だに血が流れる左目を放置して、他の面々を探す。気休めだが痛み止めは呑んでおいたので、効いてくれるといいなぁ
人が来たら影に逃げ、過ぎれば影から脱出し、師匠達を探した。師匠達も恐らく牢屋に入れられているので、そう遠くない筈だ
「君の弟子は優秀だね。でも、例の薬を打って痛い目見たから……流石に戻っては来れないよ?」
あ、居た。私は影の中で様子を伺う事に。
師匠とハイド、その近くに王様が居る。そして、その近くに六花最強の存在が……。これは助けるの無理だ。諦めて他に行こう。えっと……コルネリア様は何処かな?
「佳月は吐かなかったか」
「そうだね。何も言ってくれなかった。でも、代わりにコルネリアが話してくれてね。あの子の前にソフィアを連れて行ったら、話してくれたよ」
「外道め」
師匠から黒いオーラが漏れ始める。偶に黒いのが出て居た時が有ったが、ここまでハッキリと出るのは始めてだ。かなりお怒りの様子
「リンドヴァル、抑えろ」
横に居るハイドが師匠に言うが、収まる気配は無い。それ所か睨み始める始末。師匠、怖い……。
「おぉ、怖い怖い。君の弟子をお人形にしてしまった事を怒ってるのかな? それとも、コルネリアの事? ソフィアの事? まぁ、どうでも良いけど」
興味無さげに欠伸した後、王様は踵を返し師匠達の前から離れる。六花最強はその場に残るらしいので、やはり師匠は後回しになるな
「あ、そうそう。君の弟子の殊技は良いね。闇を操るなんて。これなら、【闇其の物】の邪神も操れる。正直、僕だけの能力で抑えられる自身が無かったんだ。助かったよ。だから、抜け殻になったお弟子さんは、大切に使ってあげるから安心して」
バレとるやないか! もう一度言う! 完璧にバレとるやないか!
しかも、抜け殻って? そういえば、さっきから人形にしたとか言ってたな?
え? 私、人形なの? 人間じゃないの?
「大変です!」
「何事だい?」
再度、踵を返し今度こそこの場を離れ様とした王様の元にグリドがやって来た。
「宝玉の半球の持ち主が逃げました」
「何だと⁉︎」
余裕をこいていた王様が初めて動揺し、大声を出した。
「無理な筈だ! あの子は完璧に壊した! 戻って来られる筈は無い!」
「ですが、我々が行った時には既に牢には居らず……」
かなり慌てた様子の王様。こんな余裕の無い表情は初めて見る。まぁ、会って間もないんだけどね。
「くっ! やはり、カミルは付けるべきだったか……。しかし、どうやって、戻って来たんだ?」
「分かりません」
あぁ! 思い出した! そういえば、王様は薬を打つ前に、こう言っていた。
《この薬は危険な薬でね。名前を【安息】。その名の通り、打ったれた者に安息を齎す薬なんだ。
拷問や暴行を与え、精神的に追い詰めた後に、この薬を打つと人は皆安らかな夢に付ける。そう、苦痛から解放され自身の望む夢が見られるんだ。
だから、誰も起きて来ない。幸せで幸福な夢だから。起きようとも思わないんだ。そして、夢で幸せな最後を遂げる。
即ちそれは、精神の死。でも肉体は残っているから、ソフィアみたいになる。そう、抜け殻になるんだ。僕らはコレを【人形】って呼んでるんだ》
その後、私の首にプスっと注射器を挿入してくれた訳だ。
つまり、私はその【安息】を打たれて帰って来た猛者か!
というか、幸せな夢を見るって言ってたけど、私が見た夢は悪夢だったんだけど。
……そりゃ起きるわなぁ




