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神様の剣と懲りない悪党(旧作)  作者: すたりむ
三日目~五日目:悪党、洞窟をさまよう
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四日目(4):悪党と関係のない変態

「はあ、はあ――」

 走る。

 周囲にまとわりつく影のような魔物たちが、降臨した女王(クイーン)の神力に圧されて蒸発していく。

 それでも、わたし――キスイは走るのをやめない。やめられない。

 あいつが、追ってきている。

「はっ、はあ、はあっ……」

 走りながら、後ろを振り返る。

 雲霞のごとき――そう呼んでいいほどの、怪物たちの大軍勢。

 それが、いっせいにわたしを目指して駆けてくる。

 その向こうに、最も恐ろしいあいつの姿を認めて、わたしは身震いした。

「はあ、――あっ……!?」

 足がもつれて倒れそうになり、慌てて前を向く。

 が。

「!――」

 止まる。

 正面に迫った岩の塊が、行く手をさえぎっていた。

 あたりはもう袋小路。逃げ場のない場所に追い込まれ、背を岩に付けて振り返る。

 すでに、周囲は多くの魔物たちに取り囲まれている。

『おるぅぅぅ……ぃええぇぇぇ……』

「消え去れ!」

 ペンダントをにぎり締めて叫ぶ。即座に、魔物たちが一斉に溶けて消えた。

 それを確認して、空いた魔物たちの間隙を縫って逃げようとする。

 が、その先にもすぐに、魔物の一部が回り込んできた。

(まずい……追いつめられたら、保たない)

 降臨の能力は継続して長時間使えない。そんなことをすれば魂が女王(クイーン)に浸食され、打ち砕かれてしまうからだ。

 それに。

「……っ」

『ほぉう……こんなところにいたか』

 のそりと。

 そいつは、まるで影が忍び寄るように、魔物たちの合間から現れた。

 人間をはるかに超える雄大な体躯は、まるで古代の大巨人たちの醜悪なパロディのようだ。

 周囲の魔物たちの態度を見ても、こいつがリーダーであることは一目でわかる。

 ――消し去るには、十分な距離。

「消えろっ!」

 叫び、そして……愕然とする。

 魔物たちはこちらを恐ろしそうに取り囲んでいるが――消えない。

 中心にいるそいつに、存在力による圧迫が効かないことはわかっていた。

 だが周りの魔物たちまで消えないというのは、明らかにおかしい。

『神格を瞬間的に跳ね上げ、運命律による圧力で魔物を排除する技術か。たしかに魔物には有効だが――

 異界の法理(ロウ)に従う我が領域では、神話の力もたかがしれたもの。効かぬ』

「うそ。神格持ちの魔物――!?」

 端的に理解する。

 この生物は、神話と異なるメカニズムによる『神格』を持つ、外世界の邪神だ。

 故に神話の法則は異界の法則と相殺され、強い力を発揮しえない。

「でも、そんなものが実在するなんて……」

『それは無知というものだ、神話の主よ。

 考えてみればよい。召喚を司る魔物使いどもの力を貴様らが何故禁忌と為すか。それは、我ら神話の敵を使役することができるからであろう。

 故に――貴様らは我らを『魔王』と呼び、忌み嫌う。貴様らを殺し得る、唯一無二の存在としてな』

「魔王……!」

 ぎり、と歯がみ。

 が、そこで。

「こらこら君、純真な子供に嘘を教えるんじゃないよ」

 声が聞こえた。

 闇の中。

 敵意に満ちた魔物の視線を泰然と無視しつつ、ぼやくように彼女はそう言っていた。

『嘘とは心外だな』

「じゃあ無知だ。だいたい禁忌の説明なんて笑うしかないよ。そんなことが言えるなら、幻影使い(イリュージョニスト)だって禁忌じゃないか。

 霊魂技師(ディアボロス)の技術が真に禁忌なのはね、世界の外を扱うからじゃない。世界の内と外を区別しないからだよ――まあ、それは脱線だがね。

 君が魔王だってのは、もっと嘘だ」

『嘘ではない。我らは――』

「そりゃ原理的には魔物とは言い難いがね。魔王と呼ぶには神話を脅かす力に欠けすぎている。

 昔から、そういうやつを偽物(・・)って言うのさ。世界にとって不愉快だがどうでもいい存在、まがい物の魔王とね」

『……それは侮辱か、魔女』

「まさか。ただの愚痴だよ」

 あっさり言って、そして魔女は怪物のとなりをすり抜けてこちらへやってきた。

「怪我はないかな、キスイくん?」

「あ、はい。なんとか……あなたは?」

「センエイ・ヴォルテッカ。君のようなかわいい子を守る、正義の味方さ。覚えていてくれたまえ」

「せ、せいぎのみかた……ですか」

「む、なぜそこで疑問を抱く。そもそもこの登場の仕方はヒーローの黄金パターンと昔から相場が――」

『それで掌中に収めたつもりか、魔女』

 怪物がうなるような声を出した。

 センエイは、まだいたのかおまえという表情で相手をにらみつけた。

「邪魔なやつだな。もうヒーローは来たんだから帰っていいぞ怪人」

『無様だな。無駄な美学など出さず、後背から奇襲を仕掛ければ我に勝つこともできようものを』

「君が言うと真実味がなさすぎて笑えるな。いや、偽物に真実味があっても困りものだがね」

『ほざけ。この量の魔獣、どうやって捌ききるつもりか――!』

 言葉と同時に、大量の魔物たちがいっせいに、わっと彼女に襲いかかる。

 が。

「量が問題なのか。ならこっちも量で対抗しようかな。

 返れ。弾け」

 とてもシンプルな、二語の命令。

 直後、彼女の手から解き放たれた光の矢が、先頭の魔獣の頭部を打ち砕いた。

『愚かな。それでは焼け石に水――』

 言葉が中断する。

 周囲の壁からにじみ出るように現れた幾条もの光の矢が、いっせいに魔物たちの頭に降り注いだのだ。

 ざああ、とまるで嵐の雨音のような轟音が響いた。

 後に残ったのは――魔物たちの骸の山。

 ぴくぴく動いている一体の頭をばきんと踏み砕いて、彼女は鼻で笑った。

「コダマの法理(ホーリィ)。反響した音がすべて呪言となって効果を発揮するってわけだ。あっけないね」

『……ありえん。これはいったいなんの魔術だ。精霊とは術者の身体によって扱うものだろう、魔女!』

「それはこの世界の法則。法則から外れた君が言うのは、むしろ滑稽だよ」

『く……たしかに魔術とは外法。だが納得できぬ。精霊の使役は殊更に禁忌ではないはずだ。そう簡単に原則から外れるとは――』

「だから言っただろう。霊魂技師(ディアボロス)の技は、世界の内と外を区別しないと。君の主である妖術師は、どうもそのへんの理解が足りないと見える」

『――気づいていたか』

「なにをいまさら。このタイミングで我々が足止めを食うのに、あいつが関わっていないわけがないだろ。ハルカだってわかるさ、そんなこと。

 ……ま、それはともかく。まだ戦う気はあるかい?」

『無論だ。貴様の術は我には届かなかった。ならば我が出るまでのこと』

 ずい、と彼が一歩前に出た。

『我は魔王。神格を持つ相手を魔術に依らず倒すのが困難であること、貴様も承知していよう。

 だが貴様は魔力を使いすぎた。手駒を失ったのは痛いが、その状況でどうやって我がイェルムンガルド外殻を打ち破るつもりだ、魔女?』

 言われて彼女は、小さく肩をすくめた。

「たかが7級程度の邪格でそこまで大見得を切れる君の気が知れないよ、私は」

『呆けるな。雑魚を倒すのに躍起になって、真の目的を忘れた愚を悔やむがいい!』

 ふう、と吐息して、彼女はぼやく。

「わかってないね。……そのザコを失ったのが、君の命取りだというのになあ」

『なんだと?』

 魔女は、あくまで憮然とした表情のまま、口の端だけをくい、と笑みの形に曲げた。

「さて、いいかげん悪役にはご退場願おうか!」

 ずい、と一歩踏み出す。

『ぬん!』

 呼応して、怪物の影から黒い矢が飛び出し、センエイに向けて走る。

 それは彼女の直前まであっという間に到達すると、急に戸惑ったように停止し、次いであたりの壁にぶち当たって四散。

『なにぃ!?』

「そら、行くぞ!」

 センエイが走る。

 あわてて怪物は影の矢を連発するが、それはことごとく彼女を外れて壁に当たって消える。

『馬鹿な!?』

「そぅら! 手刀!」

『ぐあ!?』

 センエイの手が怪物にぶち当たり、激しい火花を散らして怪物を後退させる。

「そらそら、次々行くぞ!」

『ば、馬鹿な! なんだこれは!?』

「ていや! 足刀!」

『ぐふぅ!』

 ばぁん、とすごい音がして彼女の足が怪物に突き刺さり、はじき飛ばす。

『こ、この……舐めるなぁ!』

 怪物の胴部分に、暗黒のよくわからないエネルギーが溜まっていく。

 それを見てセンエイは足を止め、ポケットからコインを取り出した。

『死ねぇ!』

 どんっ、と、にぶい音と共にエネルギーが射出される。

 それに合わせて、

「指弾!」

 センエイの指が弾いたコインが相手に向けて放たれる。

 それは、暗黒のエネルギー弾をわけもなく粉砕し、さらにその奥にいる怪物の胴に着弾、貫通した。

『ぐおおおおおおおおあっ!?』

「戻れ!」

 センエイの声。

 即座に、貫通したコインがターンして跳ね返り、怪物の背中に着弾して爆砕。

 胴を粉砕された怪物は、ばらばらになって吹っ飛ばされた。

 センエイはぱしっと戻ってきたコインを受け止め、小さく吐息。

「大道芸の一種だと思ってたが、なかなか見栄えがいいな、これ。今後も使うか」

『な、なぜ、だ――それは……それは、間違いなく、イェルムンガルド外殻……!?』

 肩から上だけになった怪物の頭が、息も絶え絶えにつぶやく。

 センエイは鼻で笑って、

「バカだね。神格持ちを倒すのに、直接の魔術行使なんて不要なんだよ。こっちにも神格があればいいんだから」

『馬鹿な。それでは、貴様は聖者ということか――!?』

「違うよ。私も偽物さ」

 つぶやいて、彼女は怪物の頭を踏みつぶした。

 ぎ、という声を残して、敵が息絶える。

「バカなやつだ。おとなしくしておけば、同族のよしみで逃がしてやったというのに」

 憮然とした表情のまま、言う。

 と。

『ありえぬ。貴様が同族だと? 貴様は人間であろう。人間が外存在たる魔王になど、なり得ぬはずだ』

 声に、ぴくりと魔女が眉を跳ね上げた。

 怪物の死体の周囲。そこに舞い上がったもやのような白い影が声を発している。

「しつこいな、君は。

 いちおう言っておくが、その残滓では私どころか、そこの子にも手をだせやしないよ。無様に滅ぶだけなのだから、さっさと消えてしまえ」

『元より承知。我が知りたいのは貴様の真実。それを冥府へ持って行けるのであれば、これ以上は望まぬ』

「冥途の土産ってやつか。はん、そんな言葉でだまされる奴がどこにいる。

 君が情報を持って行きたいのは、冥府ではなくべつのところだろう?」

『――――』

「いいさ。教えてやる。どうせ君の雇い主だって、調べればすぐに気づくことだ。

 いいかね、要するにだ。神格ってのは世界に対する『すり込み』なんだよ」

『なんだと……?』

「そうだろう? 世界にとって大切なもの、基盤を為すもの、正当なもの。その認識を得たものを我々は存在すると言い、そのための力を存在力と呼ぶ。

 つまり存在力を得るためには、世界さえだましちまえばいいのさ。それだけで、聖者なんかでなくとも神格を得ることができる」

 少し悲しみの混じった口調で、彼女は言う。

「だけどそれは偽物だ。偽物は看破されればそこで消える。世界自体は看破なんて行わないから、問題はその他の観測者の数になる。

 な、ザコを失ったのは命取りだっただろう? これはね、秘されたクラヤミのなかでしか成しえない、秘術なんだよ」

『……むう』

「だからこそ、私は観測者(・・・)に注意を払う。

 ――哀れな偽物の意識はとっくに散った。ならば先ほどから私に受け答えしている貴様は、誰だ?」

『!?』

 ぐぅん。

 世界が揺れた。

 白いもやが唐突に霧散し、代わりに地面から、なにか得体の知れないものがぐぐぐぐとせり上がってくる。

 はじめて――魔女が嗤った。

「ヒドゥナ・カラミテの夢幻刀儀だ。存分に味わっておけ――そら!」

 ざくん! と、にぶい音を立ててそのなにかが両断されて。

 そして、ごう、とそこから蒸気のような悪意が吹き付けた。

 だがそれは魔女には届かない。

 烈風のような殺気を傲然と無視し、センエイはあざけるように言った。

「……甘い! このクラヤミのなかで、その程度の攻撃が私に届くと思ったか、妖術師!」

『ぬふふ。たしかに、貴様はそれでは傷つけ得ぬなぁ。

 だが、後ろの娘はどうかな?』

「なに!?」

「あっ……!?」

 悪意は、魔女を無視して一直線にこちらに吹き付けてくる。

 そのおぞましい感触に、思わず全身を怖気が走る。

「い、いやああああああっ……!」

「神格だ! そいつを6級――いや、5級まで上げろ!」

『隙あり……!』

「ち!?」

 ぶぅん! という虫の羽音のような音とともに、魔女が大きくのけぞる。

 同時に、地面に現れていたなにかが、嘘のようにきっぱりと消え去った。

 のけぞった魔女は、そのまま2、3歩よろけて、壁に背をつける。

 はぁ、と大きく吐息。

「逃がしたか……うまくひっかけたつもりだったんだが、詰めが甘かったなあ」

「す、すいません」

「謝ることじゃないよ。この場の目的は君の安全確保。アレの退治は二の次だ。とりあえず、無事でよかった」

 言いながら近寄ってきたセンエイは、両手を広げてひしとわたしを――え?

「あ……あの?」

「んー、怖かったなぁ。よしよし」

「あ、ええと、そのぅ……せ、センエイ、さん?」

「んーなにかな。よしよしよし」

「さ、さきほどから……なんで、わたしのおしりをなで回してるんでしょう?」

「んー困った顔もかわいいねえ。よしよしよしよし」

「…………」

 どうしよう。

「あ、あのぅ――」

 ぐごんっ。

 すさまじい音がして、彼女の身体が横に数メートルほど吹っ飛んだ。

「キスイさまぁっ」

「う、うわっ!?」

 がばぁ、と抱きすくめられ、思わず声を出す。

「大丈夫ですか? 大丈夫でしたね? ああもう、間一髪のテーソーの危機でしたよぉ」

「ちょ、ま、ええと、あのぅ」

「あらあら、こんなに煤で汚れちゃって……さぞかし心細かったでしょう。もう安心してくださってけっこうですよ?」

「えと、そうじゃなくてジロロ、いまセンエイさんの頭にハンマーが危険な勢いで――」

「いやですねぇ、そんなことどうでもよろしいじゃございませんか。それよりキスイ様、お身体のほうになにかお怪我などございませんか?」

「どうでもよくないだろっ!」

 ばっ、とセンエイが起きあがる。

「ち。まだ生きてたのですね」

「当たり前だ! ていうか、殺す気だったんかい!」

「当然です。キスイ様のお身体をなで回すなどという不埒な行動、それ自体が死に値する冒涜だと思いませんか?」

「美少女は全人類の共有財産だ! なで回してなにが悪い!?」

「ふふ……わかっていませんね。花は独占されてこそ価値があるのですよ」

「あ、あのぅ……なんか、それは論点が違うんじゃ」

「はん、上出来だ! 貴様は私のポリシーから見た絶対悪だ! この場で粛正してくれる!」

「青臭い……見ているだけで吐き気がしますね。黙って叩かれていれば楽に死ねたものを、後悔させて差し上げますよ」

 だめだ。ふたりとも聞いちゃいない。

「ふん、威勢がいいのは結構だがね。さっきの一撃だって、私のイェルムンガルド外殻を打ち破ることはできなかったんだ。どうやって破る気だい?」

「技の正体がわかっていれば自ずと対策もできるというもの。べらべら正体を明かしたこと、悔やみなさいな?」

 ごごごごご、と地鳴りまで聞こえてきそうな雰囲気で、両者にらみ合う。

 ……まずいまずい。

(と、ともかくなんとかして止めないとっ)

「あ、あの――」

 じろり、とふたりともからにらまれて、思わずすくみ上がる。

 ごくりとつばを飲み込んで、それでもなんとか声をしぼり出した。

「ふたりとも……やめてください。わたしのことを思ってくれるひとたちが、わたしのために殺し合いするなんて、まちがってます」

 緊張して、手にじっとりと汗がにじむ。

 ふたりの様子は変わらず、じーっとこちらをにらみつけている。

 にらみつけている、というか、どちらかというと――

「か、かわいい……」

「ああ……天使のようです」

「え、えっと、そういうことじゃなくて――」

「くぅ。主義には反するが、この困り顔の前で殺し合いをする度胸は私にはないな。ちっ」

「あなたの意見に賛成するのは気に入りませんが――同意します」

「停戦か。……ふふふ、まあいい。またいくらでも機会はあるさ」

「その言葉はそっくりお返しします。覚悟なさい?」

『ふっふっふっふっふ……』

 なんとなく、思う。

(このふたり……じつはすっごく気が合ったりするんじゃあ……?)

用語解説:

【魔王】

神話に記載がないにもかかわらず、神格を持つものの総称。彼らの神格は邪格と呼ばれる。

ただしセンエイの言うとおり、魔王と認識させるためには、相応の有害性が過去に認められなければならない。邪格等級が低すぎるものは魔術で普通に掃討できるため、ただの魔物だとしか思われないことも少なくない。


【イェルムンガルド外殻】

古名、ヨルムンガンド外応核(アジャスタ)。神話の流れ、運命律を操作することで攻撃に対する防御を行う。

その本質は「極端に幸運になる」というものである。強い神格持ちは、世界から愛されているかのように幸福を得ることができる。そのため神格が高い者を矢で狙えば風で外れ、剣で狙えば足を滑らせて転び、まともに攻撃が通ることはまずない。上位神格になると幸運が物理的作用を持ち始め、領域の中に侵入したものをなんであろうと「偶然」はじき飛ばす、文字通りの「壁」を構築できる。

ただし、魔術に対しては効果が非常に低い。魔術師が神殿に嫌われるのはこのためで、魔術による神殺しはそれ以外よりはるかに難易度が低い。



魔術解説:


1)『コダマの法理』

系統:精霊術/意味変質 難易度:A+

精霊術の持つ「魔術は己の詠唱によって発動する」という法則をごまかし、周囲の音響すべてを自分の詠唱として用いて多重発動させた魔法の矢(マジック・ミサイル)

使う魔力は莫大だが、その見返りとしてとてつもない量の光の矢を一斉に放てる。

ただし、ひとつずつ狙いを付けるのは無理なので、物量で掃射するしかない。よってコストパフォーマンスは極めて悪い。


2)『イェルムンガルド外殻捏造』

系統:世界改変 難易度:SS

『偽物』の二つ名を持つ大魔女、センエイ・ヴォルテッカの必殺技。

世界を騙し、神格を偽造し、まるで神のように振る舞うことを可能とする。まさにチート魔術。

ただし、観衆が多いと世界を騙すためのコストが莫大すぎてまかなえない。一対一で観客がいない状況であれば本当に神の如き力を振るえるが、コロシアムで大観衆の前ではそもそも発動すらしない。

暗殺などの後ろ暗い仕事にものすごく向いた能力。


3)『ヒドゥナ・カラミテの夢幻刀儀』

系統:意味変質 難易度:A

夢幻刀儀のひとつ。コンピュータウイルスのような挙動を示すもので、最初に相手の術に干渉してそのつながりを強化し、容易には解除できなくした上で、本命の遡及打撃を送り込む。

一時的に術を強化する都合上、場合によっては逆に窮地に陥ることもあるが、ほとんどの魔術師は対応する間もなく殺される。速攻型の夢幻刀儀であり、対応するにはファイヤーウォールをあらかじめ作っておいて時間を稼ぎ、その間に術のつながりを絶つのが確実であるが、それでも魔術師の腕の差次第では間に合わない。

生き延びることに特化した魔術師グラーネルが相手でなければ、そう簡単には逃げられなかったと思われる。

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