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あとがき第二部:キャラ雑感と設定について

 この作品は、自分の人生の半分近く使って煮詰めて煮詰めていった作品でもあり、なにげに長編の作品を完結と言えるところまで書いた最初の作品でもあるので、めちゃくちゃ思い入れがあります。

 ある意味、僕にとって自分の半身みたいなところのあるこの作品は、キャラクター達が僕の描写能力と共に成長していったという、希有な体験をした作品でもありました。

 今回は、その中でも印象的なキャラクターをピックアップして、コメントをつけようと思います。



1)リクサンデラ・メザロバーシーズ=キルキル・ポエニデッタ

 最初の設定からぜんぜん違うキャラになってから、安定してこのキャラのままだったひと。あんまり変わっていませんが、逆にそれだけに、愛着があります。

 なにげに、リッサが一番、ライの相方やってるんですよね。ライを頼るのではなくライを支える役。そしてライも含めてまわりのレベルがインフレしていく中で、最後まで初期設定の力のまま、ライナー砲というサポートスキルを除いては成長しないままに物語の最後まで駆け抜けたキャラでもあります。

 けど、みんなこのキャラ見せるとテンプレすぎるとか言ってけなすんですよね……なんでこのよさがわからんのじゃ!



2)サリ・ペスティ

 設定は変わりまくったけど、人格は最後まで変わらなかった子。

 サリは僕がよくやる「オーバーパワーなヒロイン」です。今風に言うと「チート能力者」ですかね? 序盤から主人公の横にいるくせに最初から最強クラスで、ただし敵も味方もそれを織り込み済みで行動しているために物語の決定打には絶対にならない、そういうキャラ。チート能力者なのにバランス破壊は絶対にしないのがこのポジションの鉄則です。

 とはいえ、設定は本当に変わりました。魔物を身に宿していることと千手観音(サウザンドアームズ)の設定は最初からありましたが、総合力としての強さは、激変したと言っていいでしょう。リッサ編を書いている段階では「フレイア・テイミアスと比べてどっちが強いことにしようかな?」とか考えていたのですが、煮詰めていくうちに「あ、これフレイアより強いわ」になり、さらに「これ誰が勝てるの?」になり、最終的には「もうこいつ誰も止められねえな」というところまで行きました。

 そこまで行ってもやっぱりバランスブレイカーにならないのがサリ。序盤は身に宿した魔物が、終盤は心の弱さが、それぞれ仇となって敵につけ込まれるという。最強なのに主人公のサポートを必要とする、そういうとこも含めてのサリです。

 それでも、最後には幸せになれたのかな、という感じで、そこは満足してます。このキャラは書き切った感があるかな。



3)センエイ・ヴォルテッカ

 はい。こいつはもう、こいつはもう、こいつはもう!

 そんなキャラです。最初設定すらなかったキャラが、召喚魔法師になり、外法使いになり、他人の技をパクる天才になり、ついにはルチアの魔技まで盗んで、死界王を倒し、あのフレイア・テイミアスから大金星を挙げるに至ったその経緯。どんどん設定が膨らんでいった典型ですね。

 なにげにやり方は違えど、昔から今に至るまでのすべてのバージョンでフレイアとなんらかのいざこざを起こし、ルチアともなんらかのいざこざを起こしているという、上位者に刃向かう率が一番高いキャラでもあります。強さリストを引っ繰り返すタイプというか。

 ハルカ曰く「未熟者」。フレイア曰く「凡人」。自称をして『偽物』。能力の研鑽で果てに究極に到達するのではなく、相手からの借り物と知恵で戦う彼女は、職人肌の先達にはおおむね評判が悪いです。しかし、サリにはめちゃくちゃ高評価されてますね、彼女は。これは、サリ自身は自分の職人芸に対するプライドがまったくないからです。一方で、サリの技は「特技」ではなくて「技倆」の類なので、センエイにはぜんぜんパクることができない(というか、パクっても使えない)技です。そのあたりの屈折した関係が、逆にこの二人がお互いをリスペクトしている理由なんでしょうね。



4)コゴネル・フリーナスタル

 こいつけっこう思い入れあるんですよね。

 元々、前回述べたように、最初にスタージン神官の設定があって、魔人たちの設定を作るときに「一人ぐらい知り合い作っとくか」という形でバグルルの設定ができて、コゴネルはそのおまけで「反抗期のバグルルの子供」というくらいの設定だったんですが。

 バグルルが「なんで魔人になったのかなー」的なことを考えていて、その出奔理由を考えているうちに「実はいいとこのぼっちゃんであるコゴネルを守るために行方をくらまして、身分を隠して魔人親子ってことにしてる」という設定ができたわけですが、この設定使うつもりはぜんぜんなかった。だってこの二人あくまで端役だしなー、という感じで。

 けど、リッサ編の最終版で、魔人たちのとりまとめ役が必要だとなったときに、こいつしか思い浮かばなかったんですよね。リッサ編だとテン負傷離脱、バグルルとペイは本編と同じ展開で行方不明、サリとセンエイ死亡、シン行方不明なんで、ハルカとミーチャとマイマイに場をまとめられるはずもなく。自然とリーダーになったのがコゴネルで、そうなると理由が必要で、……ということで、上記設定がここで初めて本編に出ます。

 で、小説にまとめようってなったときに、同じようにコゴネルがリーダーシップを取る方向しか考えられなかったけれども、その理由を求めたときに家の名前出すしかなかった。ということでいまに至ります。初期のおまけキャラ的扱いと比べてなんとレベルが上がったことか。

 なお、裏設定ですが、コゴネルは四大制御(エレメンタラー)系統の専業魔術師です。なぜかと言うと、サリが言っていたとおり、この系統だけは神話に記述があって、本来「魔術も魔物も厳禁」である神殿に復帰するに当たって、ギリギリ言い訳できる系統だからです。



5)シン・ツァイ

 こいつも設定がすんごい二転三転しましたね……

 ただの悪役⇒スパイ⇒説得されて悪堕ち⇒制約で仕方なく裏切り⇒最後に師匠と決着、と、どんどん設定が変わって、変わるたびに新しい設定が追加されていったキャラです。

 カイ・ホルサまわりの設定は「三日目に夢幻刀儀を出す⇒名前からなんかどんな技か考える⇒設定作ったけどなんかあんま強くないなあ⇒全力出すとすごいことにしよう⇒じゃあなんで弧竜戦で全力出さなかったの?⇒全力出すとやばいもの呼ぶことにするか⇒この流れで呼ばれるやばいのってルチアしかいねえ!」って感じで、五日目のフレイア戦あたりで完全に定まった感があります。ちなみにルチアの設定は別作品から引っ張ってきたものなので、一度出すと決めてしまえば簡単。でもここまでシンがキーキャラになると思ってなかった+センエイが悪用しまくったせいで、本編にけっこう出てきちゃいましたね、ルチア。

 シンの師に対する複雑な感情は、たぶんかなり早い段階から設定にあったんですよね。十日目(1)の、「老いたな、師よ」という台詞を書いたときにはあったはずなんで。ただ、こういう決着になることは想定してませんでした。そのあたりは次の項で。



6)グラーネル・ミルツァイリンボ

 はい、グラーネルです。こいつも最初の設定からだいぶ変わりましたね。

 二日目の最初のところを書いていたときには、深みのある悪役にするつもりとか特になく、単にこけおどしのつもりだったと思うんですよね。だけど気がついたら、設定負けするような簡単な死に方はしないだろうと思うようになってきて。王から討伐依頼が来るレベルの外法使いであり、それでありながら逃げおおせてなにか企んでいる以上、ただものではないような気がどんどんしてきたんです。

 で、設定とすりあわせる形で試行錯誤した結果生まれたのが、いまの超しぶとい妖怪ジジイみたいなグラーネルです。シンと出会って使い捨てる気だったタイミングから、万が一復讐されそうになったときに備えて呪いをかけておく周到さ。バルメイスにアクシデントで襲われても、その最強の技すら受けてなお逃げおおせるしぶとさ。いやーすごいですね。シンの言う通り、あのタイミングでなければこいつは絶対殺せなかったでしょうね。寿命の尽きる限り悪事を働いていたでしょう。

 それが幸せかはわかりませんけどね。結局は、シンの言うことがすべてだった気がします。



7)プチラ・フェノミナ

 まさかの最終版大出世。特になにも設定追加してないのに、「ここにこいつがいないのは不自然だよな」というところで出しただけでめっちゃ大暴れしました。個人的には超お気に入りです。

 元々人数合わせで急遽作ったキャラだから深い設定があったわけでもないんですが、魔人なんていうやくざ商売で、しかも汚れ仕事引き受けておいて天真爛漫な子供みたいなキャラ作れるのはそうとう根性いるんだと思います。だからこの子はすごく精神の強い子です。ガチ根性でライナーとタメ張れる数少ないキャラじゃないかと。

 なお、虹小人族は小人なんで、本来彼女にはリッサと同じくらいの長い名前があります。が、それは彼女は、人間社会で生きていくと決めたときに捨てました。ミスフィトも同様で、なんか平凡そうな名字がついているのはそういうことです。



8)バルメイス

 いやあ……グラーネル以上に驚いたのは彼ですねえ。どうしてこうなった。

 最初の設定では、べつに混沌でもなんでもなく、戦神のバルメイスの亡霊みたいなもので、バルメイスは岩小人から呪いを受けて発狂してるんでまともに話が通じない、ただの障害物みたいな扱いでした。それが、サリ編の十一日目あたりですかね? 設定的に、これサリに絶対勝てないよな、という感じになって、やばいこの時点で話終わっちゃうどうしよう、と考えた結果盛られたのが、「黒キスイとバルメイス、実は似たもの」という設定。

 もうちょっと前に予兆はあったんですがね。リッサ編書いているときに、最終的な魔王との戦闘で加勢してくれるという展開があったんですよね。そのときは「ライナーよりグラーネルの方が気に入らないから」という理由だったんですが。なんだこいつツンデレか、とかいろいろ考えた結果、いやこいつとは殴り合ってわかり合ったほうがいいだろ、ということで、以降基本的にそういう展開で考えるように。

 最後、ライが聖典世界に行く理由が「世界を救うため」ではなく「バルメイスを助けるため」だったのが、個人的には一番気に入っています。ライってのはそういう奴で、バルメイスはこういう奴だというのが、全部詰まっていると思うんですよね。

 ところで彼、この後どうするんでしょうね。もしかしたら、ライが悪党になろうとするんだから、自分は正義の味方を目指してやる! とか言い出したらおもしろいですね。



 とまあ、キャラ語りはそんな感じで。

 あとは、別作品用に取っておく必要のない、とはいえこの作品で特に語ることもなかった、そんな設定群についていくつか解説をしておきましょうか。



・世界の構図について

 だいたい地中海の北側区域を想定しつつ物語を書いていた感じがあります。トマニオがエルサレムで、ファトキアがローマですかね。

 ただまあ、現実と違う地理の部分は当然ながらかなり大きくあって、たとえば人間領はヴァントフォルン(ベルリンくらいの場所?)あたりまでで、そこからは辺境域になり、さらに奥に行くと岩巨人族の領地になったりします。

 また、人間社会も当然ながら一枚岩ではなく、トマニオとファトキアではぜんぜん文化が違ったりします。ファトキアが一番ガチガチに厳しい印象ですね。

 コゴネルがトマニオで武勲を上げたのは、ファトキア的には大事件です。フリーナスタル家はファトキアの名家ですので、これはトマニオにファトキアが貸しをひとつ与えたことになります。しかし一方で、その貸しを持っているのはファトキア自身ではなくてコゴネルなんですね。ファトキアの有力者たちはフリーナスタル家の御曹司を疎んでいる層も多いので、これはファトキアでコゴネルが安全を確保する強力な武器を手に入れたということでもあります。ファトキアは逆に、頭を抱えているでしょうね。



・魔人の設定について

 まず、魔人と魔女という言葉は、同じ言葉の男性形と女性形という位置づけです。どっちにも適用できるのは男性形の魔人の方です。本文でもそうなっているはずです。

 で、今回の話に出てきた魔人たちは、いずれも超ハイクラスの魔人です。最弱であるペイですら、実は中堅どころの魔人としての力はしっかり持っています。マイマイは師匠に頼らず自力で公認を得られるレベルなので当然めちゃくちゃ強いです。コゴネルは一流の精霊使いだし、バグルルは魔術はともかく剣技はすさまじいし、ミーチャは魔力量が圧倒的だし、と、目立ってない連中も含めて、世界救える級の魔人パーティだったと言えるでしょう。

 とはいえ、本物のサリ・ペスティまで入ってくるというのは、ちょっとやりすぎな気もします。実際、センエイはサリを最初、偽物だと決めつけて、化けの皮を剥がすつもりで喧嘩を売ってボコボコにされてます。ここまでしないと討てない相手だと思われていたグラーネルは、よほどやばい奴だったんでしょうね。



・岩巨人族の複雑な事情

 本来、岩巨人族は『生贄』を本国に持っていて、その『生贄』を頂点として崇める宗教的な国家を作っていたわけですが。

 お家騒動で、一五〇年くらい前に『生贄』を含む少数の屈強な護衛たちが出奔。そのまま人間族の領地に隠れ里を作って『生贄』を守っていまに至ります。

 元々精鋭の一族なので、岩巨人族の本来よりもはるかに厳しい鍛錬が幼少の頃からたたき込まれます。ドッソのような超人的な力を持った人物が生まれたのも、その環境故。本来の岩巨人はカシルが言う通り、あそこまで強くないです。



・種族同士の混血

 この世界の種族同士の混血ですが、できる種族とできない種族があります。

 ただ、それでハーフエルフみたいなものが生まれるかというとそうではありません。

 たとえば人間と森小人が結婚して子供が生まれたとすると、それは人間か森小人のどちらかになります。ハーフという概念はありません。これは、神話が種族名を厳格に規定していて、その規定から外れることを許さないからです。

 ただし、「なんか人間っぽい森小人」とかにはなります。まったく遺伝しないわけではないので。

 ややこしいのは神とか大巨人が子供を作った場合ですね。この場合、たとえばライナーがどっかの森小人と子供を作ったとすると、その場合は上と同じ「人間か森小人のどちらか」になります。ライナーの元種族である「人間」で判定されているわけですね。

 ところがこれは、「元種族が確定している」から起こることでして、世界創世の頃からいるプロムのような大巨人は「分類されていない」わけです。プロムが森小人と子供を作った場合、確定で森小人になります。プロムの分類が反映されないわけですね。

 では、「分類されていない」神や大巨人同士で子供が生まれたら、その子供はどの種族になるのか?

 実例もないわけではないのですが、法則についてはサンプルが少なすぎて、誰にもわかっていません。



 こんなところでしょうか。

 残った設定は、違う作品の展開に関わってくるので、ここまでとしたいと思います。

 いつその作品を公開できるかはわかりませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。


 では、その作品。『意地っ張りの魔王とわからずやの騎士』で、またお会いしましょう。

(実は第一話だけもう投稿しています。

 ご興味のある方は、以下のURL

https://ncode.syosetu.com/n3380fa/

をご覧下さい)

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