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+++第十六話:強襲

 王国軍兵士の任務は種類が多い。地方支部においては、亜人への対応や政策の徹底・・・・さらには外国勢力に対して、戦争行為に力を入れている場所もある。

 たとえば北西方面では、厄介な遊撃民族との交戦が続く。南でも緊張が高まっている状態だ。王都本部においては、枝分かれした支部の統制や増援、王都の治安や結界の維持など、こちらも様々な役を担う。

 ――――と、ここまでは基礎の基礎。言ってしまえば教養で、兵士でなくても”知っていなければおかしい”レベルの話である。

 

 「・・・・では、なぜそんなことを一から話さなくてはいけないんです?いくらなんでも納得がいきません」

 そう言って【ジルヴィット・カーン】は、上司であるロッカ・ノセアダの方を向いた。

 

 「いきなりなにさあ・・・・後輩たちのためでしょ?」

 「それは理解していますが」

 

 休日の朝・・・・すこし期待をしたのはやはり罪深いことだった。なにもないのに先輩が俺の家に来るなんて、そんなことあり得ないだろうがッ!

 カーンは過去の自分を猛省しながら、うつむいた。問題児の教育係なんて、それもこれもロッカさんが取る上層部への態度が災いしたものだというのは、なんとなく想像がつく。

 

 「まあまあ。ほら、三人とも話してみれば可愛い新人なんだよ?まずは【カタルーナ・ダッタ】。徴兵されて王都に出てくるその日に、家が火事になったらしい」

 (縁起悪すぎるだろ)

 

 カーンが視線を向けると、上背の高い女性は緊張した様子で頭を下げた。

 「よ、よろしくお願いしますう!」

 

 「・・・・それから、、、、」

 「はッ!!【ゴンリ・セーファン】訓練生、出身はダレン!好きな食べ物は――――」

 「――――よしよし、そんなもので大丈夫。見ての通り、彼はすごく真面目なんだけど。あがり症で、試験をパスできなかったらしいね」

 

 「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしまああああああすッ!!」

 (・・・・)

 

 「まあ、そこまでなら許せます。が、私はなにより・・・・この男がいるのが気に入りません!!なぜこの”兵士殺し”が生きて、それも王国軍にいるのですか⁉」

 

 そう言って、カーンはノセアダの隣に座る男を名指しした。 

 「ちょっとシルヴ・・・・セシル君は私の仲間。第43部隊の一員だよ!」

 「・・・・!」

 

 (クソッ!なんでお前なんか)

 そもそも田舎者の貴様のせいで、なにもかもを一から説明しなければならない。重苦しい空気が辺りに漂う。大佐位は俺の胸ぐらを掴んで、顔面を近づけた。

 

 「おいお前、一体なにを企んでいる?」

 「・・・・なにも」

 冷静にそう返すが、内心では多少堪えた。一歩外に出れば、ひどい嫌われようである。彼らにとっては俺は敵でしかないのだ。

 

 「嘘をつくなよ、なにか裏があるに決まっている。まあ一応警告しておくが、先輩に指一本でも触れてみろ、その瞬間殺すからな」

 

 「はいはい、言ったそばから」

 後ろに回り込んだノセアダが、肘で彼の首元を固める。

 

 「言うことをきけええええっ!」

 「うぐぐ・・・・せ、先輩・・・・それでも俺はッ」

 

 「・・・・」

 (これが私の初めての仲間、上司かぁ)

 王国軍第66臨時小隊。目の前の光景に、ダッタは口をすぼめた。

 

 (仲良くしようよぉ!!)

 そもそもが個人的な都合で遅れてしまったのは確かだが、同期たちはすでに任務に就いていると聞く。仲間たちと切磋琢磨し、ときにはぶつかり合いながらも友情をはぐくむ。

 友情、青春・・・・恋愛。

 目の前のギスギスした光景は、ダッタの予想していた兵士生活とは少し離れている。

 

 「——――よろしいでしょうかッ⁉」

 「はい、セーファン訓練生!」

 

 「我々は、なぜこんな場所を歩いているのですか⁉」

 (たしかに・・・・)

 

 それに関しては俺も同意だ。めずらしくノセアダが早起きしてると思えば、理由もわからずこんな場所に連れてこられた。俺たちが居るのは王都南西部。繁華街から外れ、いわゆる城下地区との間にある第31地区。ここには廃墟も多く、再開発や産業成長から取り残されつつある区域らしい。

 

 「いい質問だねえ。この辺りは最近治安が悪くってさ、まあ、警備警戒って感じかな」

 「つまり、いきなり実践ということですかッ・・・・!グゥ、なんだ⁉震えがッ止まらん!」

 

 「はあ、いきなりって言っても・・・・きみは必要以上にも訓練をしてきているはずでしょう?セシル君やダッタちゃんは別の話だけど・・・・二人なら大丈夫」


 「なにを根拠に・・・・」

 「そおですよぉ!まずはもっと、みんなで親睦を深めましょう?」

 

 (・・・・)

 「お前ら、口答えをするんじゃない!先輩がこう言っているんだから、黙って従えばいいんだよ‼」

 

 「ひいいい、ごめんなさいいい‼」

 思わず視線をそらし、ひるむダッタ。

 

 「うわあ、上司関白。ハラスメントだよ、シルヴ」

 「わ、私は先輩の考えを代弁したまでで・・・・」

 

 当のシルヴィットはやはりノセアダにはめっぽう弱いらしく、動揺した様子で弁明し始めた。

 そんな混沌とした状況のなかでも――――。

 ふたりは突然現れた、”異質な魔力”を逃さず感じ取った。

 

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

 ((――――なんだ、この底知れぬ邪悪な感覚は⁉))

 

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

 「――――カタルーナ!!そいつを、捕まえろ!」

 「え?」

 

 (あれ、私いま呼ばれたよね?)

 捕まえろって・・・・。

 

 ??「どけェ!!」

 「キャッ!」

 

 とっさに思考を回した。しかし・・・・ダッタは次の瞬間に、建物の陰から現れた人物に跳ね飛ばされた。

 フードで顔は見えないか――――。

 

 「チッ!使えん!」

 葛藤の中、毒づいたシルヴィットはそのまま駆け出した。

 

 「絶対捕まえてよ!」

 「わかっています‼」

 

 こいつはさっきの巨大な魔力の正体ではない。だが、なにか知っているのは確かだろう。突然現れて、こちらもまるで無視。一目散にどこへ向かう?

 考えられるのは、やはりあの根源的なおぞましい魔力。たしか西の方角————上空に―――――。

  

 ・・・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・・・・????

 

 (なんだ、あれは―――――)

 

 そこには大小さまざまの魔法陣が十数個と展開されていた。召喚魔法か⁇馬鹿な、その魔法は王室秘伝のはず。

 この緊急事態は考察すればするほど、疑問や謎が浮かんでくる。

 「・・・・いや、いまはいい」

 まずは目の前のこいつを捕まえてからだ。そうしたら・・・・。

 

 「・・・・はあ、はあ。吐いてもらうぞ、ここに来た目的。貴様らの正体もな」

 路地裏の行き止まり。周囲は高い壁に囲まれ、もはや逃げ場などない。しかし布の下からのぞいた男の表情は、ニッタっと不気味な笑顔である。

 

 「目的――――?はは、お前たちにはわからないだろうな?」

 「・・・・?なにが言いたい?」

 「裕福、円満、自由・・・・。普遍的な価値を壊すのは楽しいよなあ⁉」

 こいつ、なにを言っている?

 

 (――――ッ⁉)

 そこで男はフードを乱暴に外し、自らの正体をさらけ出した。灰色の皮膚色に、左右頭部の角。

 

 (こいつ――――――――魔人族か⁉)

 ならばなおさらだ!王都には結界も、検問だってある。魔人族が侵入することなど不可能。

 

 「いったいどうして――――」

 「はは――――言ったろ?

 ・・・・壊しに来たって‼‼」

 そう言い放つと、男の体は不自然に膨張をはじめる。さらに、オレンジに神々しい光を放った。

 

 (――――まさかッ‼)

 

 |||||||||||||||||||||||

 |||||||||||||||||||||||

 |||||||||||||||||||||||

 

 「震えて眠れ、人間族‼そして――――死ねえッ‼‼‼」

 「————ッ‼‼‼」

 

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 巨大な爆発と、それに伴う強烈な爆風が周囲をがれきの山に変える。攻撃はそれで終わりではなかった。同時多発した爆音が、第31地区に響いた。その数合計46。これらが、国家体制への反逆的なテロ行為であることを明確に伝える。

 各地で一報が打電され、未曾有の事態に緊張が走った。

 

 

 *第十七話に続く

 

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