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コアなAV

悦に浸っているマサヤくんに、興味本位でさらなる謎を僕は頼んでみた。


「もしかして、このノートパソコンのパスワードって破れたりする?」


アサトが僕の関して綴っている論文が僕は欲しかったのだ。論文にできるほど僕について語ってくれる人は、人生に滅多にいないと思うし、これも何かの記念だと思うから。


「んー、それはちょっと厳しいな。こんなに文字の羅列があると……」


「アサトはこの数字の部分でしかパソコン開いてなかったよ、しかも四文字。それでも無理?」


首を傾げるマサヤくん。


「ホダカが開いたら?誕生日とか好きな数字とか、知ってるんでしょ?」


ちょっと拗ね気味のルイくんがいいアドバイスをしてくれた。アサトの誕生日、好きな数字、1310、ダメだ。ルナちゃんの誕生日……もしかして、僕の誕生日??パスワードが違います


「んーーっ!!ダメだ、破れない……」


「ちょっと貸して」


とルイくんがパスワードを入力した。やっぱ、ダメだ。


「何入れたの?」


「ホダカが誘拐された日。アイツにとったら記念日でしょ?こんな天使を独占できるんだから……」


ジェラシーたっぷりで頬を撫でられた。そこで思い出した。僕が復活した日は?……入力してみると、パスワードを破れた。


「やば、入れた!!」


ホーム画面から既にもうふざけていて、ホダカの論文はこちら。って矢印でファイルを示していた。ファイル名、フランケンシュタイン。僕は英文は読めないから、ルイくんに僕の論文を代読してもらった。フランケンシュタインになったホダカ。それが僕の論文の題名だった。


「他には、第一号人型モルモット、ゾンビ幹細胞は万能解毒剤、脳卒中からの健康体、新たなハゲ治療……ふざけたタイトルばかりだね」


「ゾンビって髪も生えるのか……」


マサヤくんの関心を妙に惹き付けているのがおかしかった。僕の興味の矛先はやっぱり、第一号人型モルモット。だけど、ルイくんは僕の論文をまだ読みたいようで、まじまじと英文と睨めっこしていた。


「待って、動画もあるよ」


そうやってクリックした先で動画に飛ばされて、アサトが映し出された。僕が誘拐された日から、動画は始まっていた。アサトが眠っている僕の横でカメラの画角を調整して、何月何日って言い出して、鋸を手に持った。


「これからここに眠っているホダカくんを、この鋸で切断して殺害します」


ブルーシートの上で眠っている僕を鋸でギコギコ首から切断していった。僕の頸動脈を切った時、大量の返り血をアサトはかぶった。顔に飛んだそれを袖で拭って、真っ白な白衣を真っ赤にしてもなお、アサトは僕の身体を切断し続けた。息を切らして、疲れてる様子を見せながらも。


「ルイ、動画止めて。大丈夫か?ホダカくん」


僕達はそのショッキングな映像を見せられて、唖然としてしまって、すぐに動画を止めることができなかった。マサヤくんが動画を止めてと言うまでこの映像を止められるという概念がなかった。それぐらい僕は惹き込まれてしまった。一人で初めてエロ漫画を読んだ時みたいに何が何だか分からないけど、何故か気になって見ていたくて仕方がない。


「大丈夫、続けて」


次の日、アサトは真っ白の白衣に着替えていて、ブルーシートに載せられているバラバラな僕の死体の横で医療用ホチキスを手に持っていた。


「これからホダカくんの身体を繋ぎ合わせて、ゾンビ幹細胞を投与します。俺の研究によれば、一週間か二週間ほどでホダカくんは生き返ると思います」


ガシャンガシャンと僕の身体にホチキスを止めていく。隣りでそれを見ていたくルイくんは苦虫を大量に噛み潰したように、歯ぎしりをしてイラついていた。


「ホダカに何てことを……」


「大丈夫だよ、ルイくん。僕は大丈夫だから」


彼をなだめながら一週間後、二週間後、まだ僕は起きない、という報告動画をアサトが撮っていた。そして、四週間ほど過ぎた頃、アサトはいつもと形式の違う防犯カメラに取られているような動画を残していた。


「ホダカくん、お願いだ……目を覚ましてくれ……!!」


ってベッドに寝ている僕に縋りついて、お祈りしている。精神的に参っているようだった。そして暫く泣きながら、「何で起きないんだよ!!」と喚いた後で、泣き疲れたようで、ベッドの縁に頭を突っ伏した。


「俺達は何を見せられてるの?」


とマサヤくんが悲嘆しているアサトを嘲笑った。僕も何故、アサトがこんな動画を残したのか、始めは不思議に思ったが、アサトは自分の格好悪いところもそのまま愛せる人間だったと思い出した。僕はそのアサトを見て、胸が傷んできた。最高に弱ってて痛くて、格好悪い。その動画の中でアサトは僕の上に覆いかぶさってきた。


「こんなおとぎ話がある。深い眠りについたお姫様に王子様はキスをする。この続き、知ってるかァ?ホダカくん。キスをされたお姫様は愛の力で目覚めるんだ。あははっ、馬鹿らしいよね!!でもさァ、俺はそんなのにも縋りたいくらい弱ってんのよ。起きて、ホダカくん。俺は君のこと愛してるんだからさァ♡♡」


と寝ている僕にキスをしてきた。おとぎ話のような可愛いキスではなく、窒息死しそうな濃厚なキスをアサトは僕に浴びせた。


「うわっ!!うっわあ、ナイナイナイ!!」


ルイくんは寝ている僕にキスをしているアサトを見て精神的に無理って、大袈裟な反応をしていた。


「なあ、忘れ物って何なんだよ。早くしないと怒られ……」


と警備員が部屋の中に入ってきて、パソコンの目の前で三人固まっている様子を見られた。「何見てんの?コアなAV?」って。


「五週間が経ちました。それでも、ホダカくんは起きません。……この実験は失敗しました。植物状態の彼をこれからもずっと愛していこうと思います」


動画の中のアサトが喋る。それに僕は赤面してしまって、それを見られてるという状況にもっと赤面してしまった。


「何これ?」


「証拠です!!ホダカを殺した証拠!!」


ルイくんは堂々と警備員の人にそれを見せ付けた。どうやってパスワードを割り出したんだ、って驚いてその動画を目を丸くして見ている。


「え、論文も証拠も全て揃えてあるんじゃ……」


「紙ベースのものしかないよ。でも全部、春原 アサトが自供したから調べるまでもなかったんだ」


「じゃあ、ここに春原 アサトが嘱託殺人をした証拠があるとしたら?」


とマグカップの破片をマサヤくんが誇らしげにその警備員に見せ付けている。警備員の人がトランシーバーで誰かに確認を取っている。僕は研究員のノゾミちゃんが盗聴した記録を持ってるかもしれないって、その人に一生懸命伝えた。


「はあ、やり終わったあ……」


でも結局、最終的にアサトを救うのは弁護士や検察官や裁判官だ。だが、できる限りの事はやったという自負と満足感が僕の身体を満たしていた。


「俺はまだ、やり終えてないけど?」


ってルイくんは僕の顎を掴んで、誘いかけるような笑みを僕の向けた。……じゃあ、放課後の都会観光だ!!お洒落なカフェに、最新のプリクラ、有名人御用達のラーメン屋。キラキラとワクワクがたくさんあった。


「こんな不良みたいなこと初めてした」


とマサヤくんが悪そうにニヤケて、ジュースを飲んでいる。


「大して不良じゃないでしょ?」


深夜のカラオケボックスでタンバリンを叩いて僕は盛り上がっていた。でも日付けをまたいで一時くらいになると、さすがに眠くなってきて、みんないい子ばかりなので、ウトウトし始めた。


「ホダカぁ、抱きしめていい?」


と狭いカラオケボックスのソファの上で抱きしめ合って横になった。狭くて温かくて本当に眠くなって……


「僕をこんなところで襲うなんて、ルイくん、本当に不良みたいだね♡」


と寝惚けたことを言ってしまった。そして、ルイくんは僕の冗談にかまけて、


「俺は不良だよ♡♡」


ってゆったりと長いキスをされた。そこからは記憶が無い。電話が鳴る音で目が覚める。僕にはみんなの学ランがかけられていて、二人は歌ってカラオケをオールで楽しんでいるようだった。その帰り道、


「何だかんだホダカが一番いい子だよな」


ってマサヤにからかわれた。もう呼びタメで話す間柄になって、ルイくんからは若干嫉妬されてるけど、ルイくんはルイくんなんだよなぁ。暗闇から朝になる瞬間の夕焼けのような朝日が鮮やかに空を群青から朱塗へグラデーションにしていた。


「知らなかった。朝日がこんなに綺麗だなんて」


「この世界はまだまだ俺達の知らないことだらけだよ。だから死ぬのはもっと、この世界を知ってからにしない?」


電車の中でルイくんにもたれかかって、彼の肩に頭を乗せていた。僕が死にたがりだって、彼はずっと分かってて、彼は僕に付き合ってくれていた。


「ありがとう、ルイくん」


「何が?」


彼は眠たそうに微笑んでから、僕の頭に頭を乗っけた。

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