ブルーのライト
久しぶりに会社に出勤し、デスクの上のパソコンを開いた。
明日のウェブ会議の資料を作成する為、ワードを開く。
「は・・?何これ?」画面に表示される用紙一面に、文字がびっしりと
記載されている。
【ヒカリヒカリヒカリヒカリヒカリヒカリヒカリヒカリ・・・・・】
その羅列を見て俺はぞっとする。
突然辺りが暗くなった。
景色は真っ暗になり、
そして縦に五十台く程積まれた液晶画面が俺を中心にして円形に俺の周りを囲んだ。
俺はその真ん中で取り囲まれ、身動きができず、身体が固まった。
画面が真っ暗だったその液晶画面は一瞬、白くなり、ヒカリが現れた。
ヒカリが笑いながら俺を見つめて言う。
「ねぇ、会いたいよ。一緒に・・・」
不敵な笑みを浮かべたヒカリは、可愛いと思っていた
その黒目がちな目が、今は不気味に感じられた。
「うぁーーーー!!」
俺は思わず叫んだ。
「はっ」
身体中が汗だくだ。
目を開けるといつもの俺の部屋のベットの上だった。
えっ?
あれは夢だったのか?
部屋を見渡すと、なぜか部屋が綺麗になっている。
そして部屋にあるデスクの上には栄養ドリンクやビタミン剤・食料品と思われるものが並んでいる。
ベットから起き上がり、デスクに近ずく。
弁当らしき物が置いてあった。
そしてその横にメモのようなものが置いてある。
俺はそのメモを手に取った。
【起きたら絶対、これ食えよ。俺の手料理♡ ヒロ
グリーンスムージー作って冷蔵庫入れといたから、なる早で飲んでね リエ
私のビタミン剤飲んでね。これ飲むと肌艶やばくなるから サエ】
あいつらここに来てくれたんだっけ?
「おう。シュン起きた?とりあえず、飯食えるか?」
ユウスケが部屋に入って来た。
「おう。つか・・お前なんで俺ん家に・・?」
「覚えてねーのか?お前さ、自分で首に包丁で刺そうとしてたんだよ」
「えっ・・?」
「俺らがその瞬間、ここに来て止めて、ギリセーフだったんだよ」
「俺が?首に?包丁?」
「そう。そのあとヒカリって女の子について話してくれた」
「ヒカリ・・」
そうだ。さっきの夢を思い出し、身震いをする。
「俺らさ、お前と連絡も取れなくなって、心配になったんだよ。
だから、事情話して、管理人に鍵借りて。でっ、ドア開けたら
あんなことになっててガチで焦った」
「マジか・・。俺そんなことを・・」
俺は意識が朦朧としていて、最近の記憶が曖昧になっている。
ヒカリ。
ヒカリは存在していたのか・・?
俺はその日から、無理やりにでも飯を少しずつ食うようになった。
それから数日は少しずつ、日々の生活を改善させていった。
ここ最近は、デリバリーサービスを始めた近所の飲食店から届けられる弁当を、毎日食っている。
野菜生活のジュースやサエから強制的に買わされたビタミン剤を飲んでいる。
それから、三日に一回はユウスケとランニングをするようになった。
朝夜、逆転していた生活も、サエのうっせーモーニングコールのおかげで、起床七時・就寝十一時という、規則正しい生活を送るようになった。
心身ともに体調が良くなり、俺はもう、夜の闇に飲まれそうなことは無い。
ただ、たまにヒカリが、また、ふとした拍子で現れるかもしれない。
でもそんな時は、俺が自分の首を包丁で切ろうとした時に俺の手を止めてくれた、ユウスケの強い力を思い出す。ヒロやサエ、リエのメモの言葉。
その強い力を思い出すと、もう二度とヒカリに会うことは無いだろう。
もしかしたら、誰でも、ある条件が揃えばヒカルのような悪霊を持つのかもしれない。
もし悪霊が現れた時、その悪霊と、どう向き合うのだろう。
きっと、ブルーのライトが眩しくて、
俺は自分が見えなかったのかもしれない。




