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bet on 10分に賭ける  作者: 吉村アキラ
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第1話 異世界でボクシング

 「お待ちしておりました。 『血の英雄』よ! どうか、我らをお助けください。」


 いかにも、王様という見た目の男が俺に話しかけてきた。赤い色のマントを羽織っていて、王冠を被っている。髪やヒゲは白髪では、あるが、肌の質感は、老人といった感じはない。40代か50代といった感じだ。何より、顔つきが威厳に満ちている。

 周囲の様子は、中世の王宮といった感じだ。俺のいる位置よりも高いところに高そうな椅子があり、そこに王様のような男が座っている。その両脇に、鎧をつけた兵士が立っている。俺の、後ろからは、数十人がざわついてる気配がある。


 「あの…。来たばっかで、状況が掴めないんですけど、あんたが一番偉い人ですよね? 状況説明してもらってもいいですか?」

 とりあえず、状況を把握したい。


 「貴様! 誰に向かって、『あんた』といっておる! 代56代国王ルイス=フェルナンデス様の御前であるぞ!」

 俺の後ろから、深緑の髪をした鎧を纏った男が怒鳴ってきた。胸には、男の権力を示す紋章があった。顔をよく見ると頭に血管が浮かび上がってるのがわかった。俺は、どうも厄介な奴を怒らせてしまったらしい。


 「よい! アレンよ。」

 一言で、深緑の男を黙らせた。


 「申し遅れました。私は、トルガリア王国56代国王ルイス=フェルナンデスと申します。此度、貴方様を予言の書に従い、お呼びいたしました。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 ルイス=フェルナンデスが椅子から降り、俺の位置まで、降りてきた。近くで見ると、その男が意外と小柄であることがわかった。いや、その男が特別、小さいわけではない。

 おそらく、俺は、異世界に飛ばされたのだろうが、この世界の人間は体が平均的に小さいのだろう。おそらく、男性の平均身長が160センチくらい、女性の平均身長が150センチくらいなのだろう。

 俺自身、177センチあるので、決して小さいわけではないが、この中に入るとまるで、巨漢のようだ。


 「エイジです。エイジ轟です。あの、俺を呼んだ理由を聞いてもいいですか。あと、『血の英雄』ってなんでしょうか? たぶん、人違いかと…。」

 おそらく、そういう世界なのだと、決めつけて、ファーストネームから、名乗った。決め手は外見だ。どう見ても、西洋の人間だからだ。


 「いや、人違いでは、ございませんよ。エイジ様。」

 ルイスは、笑いながら言った。

 「貴方様は、『血の英雄』で間違いないです。その立派な体つきが何よりの証拠です。王国の予言にある通りです。」


 『闇の王』が蘇りし夜に、銀の光とともに、巨躯の男が異世界より現れる。その男、『血の英雄』と言う


 予言の書とは、面白い世界だ。おそらく、予言とか、魔法とかが根ざした世界なんだろう。これが、夢でも、現実でもどちらでもいい。いい暇つぶしになりそうなので、この場に従うことにした。


 「まあ、よくわからないけど、ルイスさんがそう言うならそうなんだと思います。あと、敬語使うのやめてくれませんか?あんたみたいに立派な人に、下からこられると、逆に気使うんで。」

 そう言うと、ルイスは目を見開いて、そのあと笑い出した。

 「承知した。エイジ殿。あなたは、愉快な人だ。」

 「そっちの方が、嬉しいです。あと、『闇の王』って何ですか? まあ、なんか、悪いやつっていうのは、分かるんですけど…。」

 「それは…」


 そのあと、国王が語ってくれた内容を要約すると、こんな感じだ。

 『闇の王』とは、魔人という魔獣の力を持った人間のボスで、そいつが、18年前に世界を征服したらしい。人間が、魔人に支配されてたようだ。それに、『伝説の七賢者』と呼ばれる人たちが魔法を駆使して立ち向かい、3年の戦いの後に、勝利した。そこから、15年世界に平和が続いたが、最近、『闇の王』が復活して、魔人たちが、また人間を攻めて来てるようだ。『闇の王』から、世界を救うピースの一つが『血の英雄』であるらしい。つまり、俺に『闇の王』を倒せということらしい。正直、荷が重すぎる。なんだよ、魔人って、名前だけで強いのがわかる。


 「だいたいわかりました。できれば、力になりたいけど、俺が、役にたつかわかりませんよ。何より、魔法なんて、使えませんし。」

 「大丈夫だ。エイジ殿。そなたには、魔法の素養はある。異世界では、魔法という概念がなかっただけで、この世界で、修行すれば、魔法も時期に使えるようになる。安心して下され。」

 いや、この人何言ってるの? 戦わせる気まんまんじゃん! 断り文句でしょうが! 

 どうも、この世界では、日本人的な話し方は、通用しないらしい。


 「国王様、少々、私に時間をいただきたい!」

 さっきの、深緑の髪の男だ。そう言いながら、こちらに近づいてくる。

 「どうした?アレンよ。申してみよ。」

 「ありがとうございます。私は、このような木偶の坊が、『血の英雄』とは、どうしても、思えません。何より本人が、魔法は使えぬと言っていますし。」

 「つまり、何が言いたい?」

 「はっ!この男の力を試合にて、確かめてみたく思います。私自ら。」

 「よかろう」

 は? なにが、いいんですか? せめて、俺に確認とってくれません?

 断ろうと、国王の方に目線を送った。

 「軽くひねってやってください!エイジ!」

 国王がウィンクしながら、俺の耳元で囁いた。今から、入れる保険ありますか?


 結局、アレンの申し入れは許可され、格技場というところに移動することとなった。安全性を考慮し、武器の使用は禁止。何かよくわからないが、ヒットという魔法は禁止なのだが、ステイという魔法はありらしい。正直、勝算はある。一つは、体格差だ。俺は、自分で言うのもなんだが、体は鍛えている。暇すぎるので、ボクシングジムに通っており、身長177センチ、体重は65キロ。体脂肪率は10パーセントほどだ。しかも、15年ほど、格闘技全般をやっていて、高校の時は、ボクシングでインターハイに出ている。対するアレンは、身長は162センチ程しかない。この階級差なら、素手での戦いなら、コッチに分がある。

 まあ、不安要素もある。ステイという魔法がどういうものか分からないことだ。ステイというものには、間違いなく、向こうにアドバンテージがある。だが、勝算が、あと、2つほど有るから、おそらく…。


 「我が名は、アレン=ダズゴーン! 火の加護(ステイ)を持つ者なり。」

 「あの、ステイってなに?」

 「そんなことも、知らずに我に挑んだのか! 加護(ステイ)とは、各属性の魔法の加護を体に付加するもの。火の加護は、『攻撃力の強化』」

 挑んだのは、お前だろうが。どうも突っ込んでる時間は無いらしい。アレンの拳が顔に飛んできた。

 「うっ!」

 ガード越しに、受けたが、確かに、重いパンチだ。バンダム級ほどの体格のアレンから、ヘビー級ほどの重さのパンチが飛んできた。いつもの、俺だったら、ガードしても、ダメージを受けるだろう。そう、いつもの俺なら…。

 「ぐっ!こざかしい!ちょこまかと逃げおって。」

 フットワークで、アレンのパンチや蹴りをかわしまくる。勝算の1つが当たった。この世界の人間は、格闘技術がそれほど洗練されていない。近代ボクシングの技術を駆使すれば、攻撃は、受けるまでもなく空を切る。1分ほど、攻撃をかわし続けたら、アレンが、イラつき出した。挑発してやろうと思い、大きく間合いを切る。

 「あんた、パンチ下手すぎ。なんなら、剣を使いなよ! それで、俺と対等だと思うぜ。」

 「貴様ッァアアアア‼︎」

 アレンが、大振りのパンチをしてきた。それに合わせて、顎に右を決める。

 「あがっ!」

 アレンは、音を立てて倒れた。

 もう一つの勝算はこれだ。どうも、この世界にくると身体能力が、格段に跳ね上がるらしい。なんか、体が軽いと感じていたが、アレンとの戦いで、確信に変わった。


 「俺の名は、エイジ。 あんたに、恨みは無いけど、向かってくるなら手加減しないよ。」

 アレンは、気を失っている。医療班がこちらに向かってくる。

 「やる前に、言えばよかったな。」


 観客から歓声が上がった。


 

 

 



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