改めてこの子ヤバい
「……エミさんが気にする事じゃあないでしょう」
「そうね、これはヘンリが気にするべき事よね。でも、ゲームで亜人のみんなが良い人なのは知ってるから複雑なのよ」
「そういうもん、ですか。まあ、メグは普通の子でしたしね。ちょっと無茶やらかす奴でしたけど」
「う、うん」
そうね、馬車の件とかね。
あれはさすがに無茶よ。
大体メグは猫の亜人でしょ。
馬車を一人で支えるなんてマジ無茶しやがって。
あ……。
「そうだ、メグ! 助けてもらったんだからお礼をしないと!」
「昨日してきましたよ」
「仕事が早いけどそれじゃダメよ!」
「ん? …………まさかでしょ?」
「そのまさかよ! 便箋とペンをお願い!」
ヘンリパパに手紙を書くわ!
昨日の事!
「いや、今日の締結式に普通に出席するんですし、その時話せば良いんじゃないんですか?」
「……あ、そ、そうか……」
ヘンリパパに頼むのよ。
わたし……ヘンリエッタ・リエラフィースはセントラル西区の領主の娘!
その娘が、昨日倒れる馬車に乗ったまま、閉じ込められそうになった!
それを助けた亜人の少女。
同盟が結ばれる前に、彼女は貴族令嬢を助けたの。
貴族令嬢を助けた亜人へ、その父親は大層感動し、感謝した。
ので、反対する西区の他の領主貴族を説得!
西区の一部に、亜人の町を作る事を決定したのでした!
「最高のシナリオじゃない!」
「んー、まあ、悪くはないですね。でも、その予算と建設地の確保とこれからの冬場での建設に関わる物資の確保、運搬輸送、それに携わる人材の確保諸々、どーすんですか?」
「…………」
げ、現実ぅ〜。
「何にも考えてなかったわ……」
「でしょうね」
「そうだ! クロエに相談しよう! あの子確か当主になる予定だもんね!」
「アホ」
「あいた!」
チョップ⁉︎
ちょ、ちょっと、せっかく整えてくれた髪に何するのよ〜!
「それこそ、ケリー様に相談すべき案件でしょう。あの方の場合もっとアレですからね」
「え? アレ? 何よ、アレって」
「助けられたのはエミさんばかりじゃねぇって事ですよ。ケリー様からすると、義姉であるローナ様、婚約者候補のうちのお嬢を助けられた事になるんです。ついでに、婚約者候補を助けてもらったレオハール殿下もそれなりに感謝を示す必要があるでしょうね」
「!」
そ、そういう事か〜!
「まあ……でも……」
「え? な、何?」
「あの馬車の横転事故は、亜人同士の抗争が原因らしいんですよねぇ……」
「え!」
亜人同士、抗争⁉︎
……あ、でも、確かに……馬車が倒れる前に、扉とは反対側からすごい衝撃があった。
「お嬢たちを狙ったものだったのかもしれません。深読みする奴は、お嬢たちをわざと危険にさらしてメグがそれを助ける事で恩を売り、自分たちの住む土地を手に入れようとした……」
「ちょっと! それは酷いわよ! メグたちはそんな事しないわ!」
「と、勘繰るのが貴族って生き物です。って話ですよ」
「……うっ」
「実際あの時、あの馬車の中にいたのはお嬢とローナ様。どちらもセントラルの土地を預かる領主家の令嬢でした。偶然にしては出来すぎている……と思われても仕方ねぇんですよ〜」
「…………う、うう……」
くそぅ、良い考えだと思ったのに……。
「つまり、騒ぎ立てずに様子を見ろって事ね……?」
「話が早くて助かりますよ。ええ、エミさんが正しい。はなまるくれてやりますわ」
「むぅ」
「うちのお嬢ならそこまで考えませんでしたから、ちょっと見直しましたよ」
「…………」
さらりとヘンリを貶してくるわよね、アンジュって。
ああ、わたしの中のヘンリがキィキィ騒いでいる気配がするわ……。
いや、そんな気がするだけだけど。
よ、夜に共有スペースへ行くのが怖い。
「今回の事の原因がはっきりするまでは大人しく様子を見ていてください。あまりメグに感謝をしすぎれば、亜人をよく思わない貴族にあっという間に『リエラフィース家の令嬢は、亜人に騙される頭の足りない令嬢だ』なーんて噂を流されますからね」
「何それ腹立つ!」
「亜人との同盟はレオハール殿下主導ですからねぇ。表向きに文句言う奴はそりゃ、少ねぇっすよ。でも、裏では文句たらたら連中がいるっちゃいます」
「……分かったわ……でも、わたしからお礼を言いに行くのは良いわよね?」
「ええ、そのぐらいはいいですよ。助けてもらったのは事実ですからね」
……でも、やっぱり少し残念だった。
ゲームの中でたくさん苦労しているのを見てきたんだもの。
わたし、せっかくこの世界に来たのに……。
アミューリアに人間族を少しでも救う力になって欲しいって呼ばれたのに……亜人に何も出来ないなんて……。
「お嬢様、ケリー様から言伝が来ております」
「びゃ!」
ドアのノックの音に気付かなかった!
アンジュの部下のメイド、レイラさん!
まっずい、変な声出ちゃったわ。
「お嬢は装飾品選んでください。ケリー様はなんて?」
「体調はいかがですか? もし良ければ、本日はエスコートをさせて欲しい……との事です」
「へえ、さすがっつーかなんつーか……。どうします、お嬢。ちょうどケリー様からエスコートのお誘いですよ」
「え⁉︎ ……えーと、えーと……っ」
「是非に、とお返事を」
「アンジュ⁉︎」
「かしこまりました」
「レイラ⁉︎」
思いも寄らなくて、だって誘ってくれると思わなくて!
ええ、どう、どうしよう、ってオロオロしちゃったらアンジュがあっさり受けちゃった!
ちょちょちょっとおおおぉ〜!
「良かったっすね」
「よよよ良くないわよ! 一昨日、変な感じで別れて……だからその……! 顔合わせづらいというか!」
「今の話、相談するチャンスでしょ」
「え、え……あ、そ、そうか……え、でも……」
メグに助けてもらったから、領地に亜人の町みたいなのを……って話か。
そ、そうね、ケリーなら何か良い考えが……い、いやあのでもその〜。
「ごちゃごちゃうるせぇ。諦めてエスコートされて来い」
「…………は、はぃ……」
……殺されるかと思った。
*********
「セントラル西区に亜人の町を建設出来ないか?」
「そ、そうなの。アンジュと話していて、そういう話になったのよ。ほら、わたしメグに助けてもらったじゃない? そのお礼というか……」
「ふむ」
馬車の中でケリーは思案顔。
や、やだ、どうしよう。
意識し始めたら急に顔がまともに見れなくなってきた。
女子中学生かっつーの、いい歳したOLが……。
そう、なのよねー、ケリーは十五歳。
わたしは二十五歳。
一回りもちがう。
ヘンリだってケリーよりは歳上。
その、なんつーか、アレよね。
あんまり好まれる感じではない、わよねぇ。
「え、えっと、でもアンジュには建設地とか、建設費とか材料とか人材確保とか、色々あるからお父様に相談しろって」
「なるほど。まあ、妥当なところでしょうね。けれど、ふふふ……ヘンリ様がそのおつもりとは……少々侮っていました」
「へ?」
あれ、今さらりと馬鹿にされた?
カタカタと馬車が揺れる中、ケリーが妖艶に微笑む。
ゲーム内スチルでも時折十五歳という年齢を忘れそうになるほど、この少年は大人びた顔をする事がある。
それは知っていたけど……。
「いや、良い考えですよ。俺が考えていた筋書きとほぼ同じでしたから」
「え?」
「義父にはすでに手紙で報告済みなのですが、今回の件、メグ……いえ、亜人族には礼をしなければと思っていました。なので、手は打ってあります。まず、ヴィニーのぶち壊した馬車。あれは整備不良で車輪が外れた事になります」
「⁉︎」
「根回しはこちらでしておきました。今日この後、その件で俺は父と話をする予定だったんですが……よろしければヘンリエッタ様とリエラフィース侯爵もご一緒にいかがですか? 実に建設的な話が出来ると思いますけど」
「…………」
よ、妖艶、というか……これは……。
「え、えーと……い、い、一応聞きますけど……ど、どんな?」
「もちろん、お互いの領地に亜人の町を作る計画ですよ。ごちゃごちゃと古臭い考えを押し付けてくる領主もいると思うので、その辺りを色々……」
「…………。け、建設費とか、材料とか、人材はどうするの?」
「建設費は国費からふんだく……予算を割り割いて頂けると思います。その辺りはレオハール殿下に相談するつもりです。建設材料に関してもいくつかの潰れてしまった町の撤去で再利用出来そうな物を使えば良い。新規で必要な物はある程度融通をきかせられます。こちらも商売……ではなく、経済を回すのにご協力頂きたいですからね。作業員に関しては恐らくすぐに揃えられると思いますよ。同盟の内容には『亜人族と人間族の技術共有』も入っていますから。我が領土の職人たちも色々と勉強して欲しいと思っていたところです。建設は再来春を目処に、準備を進めればいい。亜人族の規模……クレイ様は隠しておられる。まだ人間を信用しきれていない。仲間を守る為でしょうけれど……ふふふ、町を作るとなれば、東と西、どちらにどの程度の人数が移住を希望するかは我々にも教えてもらえると思いますし?」
「…………」
ペラペラと……にっこりそれは楽しそうに……。
「……ケ、ケリー様は……なんというか……せ、政治家向きですわね」
「いえ、俺など義父様の足元にも及びません」
う、うそつけええぇ!
打ち切りいたします。
活動報告にも書いたのですが、以前「更新して」という書き込みがちょっと異様な書かれ方で一ヶ月近く続き、恐怖で書きかけの部分を開くのも怖くなりました。今も怖いです。ここを書いてても怖いです。
正直こちらの作品、消そうかな、と思っていますが活動報告の方では「残してほしい」とのお声があったので今まで残してきました。
なんとか本編の後書きにもお知らせに上がるくらいには持ち直しましたが、やはり思い出すのが辛いです。
早めにブロックしておけばよかった話なんですけど、まさかあんなに続くと思わなくて余計な負傷をしました。反省。
残すにしても消すにしても続きは書けそうにないです。
頭の中の構想は残ったままなので私も無念でなりませんが怖い方が先に来てしまいます。
読んでくださった皆様には大変申し訳ないですが、こちらはこれ以上更新できません。
完結設定にもしません。
申し訳ないですが感想欄も閉じさせていただきます。ご了承ください。
閲覧いただきありがとうございました。
古森でした。








