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おまけ 沙羅の後日談

沙羅の後日談です。

沙羅の性格や思考が酷いです。

「ああ、もう信じられない!」


 彩梨(あやなし) 沙羅(さら)は、憤懣やるかたない様子でバッグを床に叩きつけた。


「私が何悪いことをしたっていうのよ。皆あんなつまらない女の味方をして、私の事をバカにして!」


 苛立たしげに爪を噛む。綺麗だったネイルアートも、あちこち剥げかけていてみすぼらしく見える。


 沙羅が先程から言っているのは、職場での不満だ。


 同僚の 桃瀬(ももせ) 菜子(なこ)の婚約者の実家が裕福だと知って、奪った。そのまま婚約を破棄させて結婚してしまおうと思っていたのに、失敗したのだ。

 菜子が余計な事を言った所為で。


「あの時、あの女がホストや借金の話さえしなければ、丸め込めたかもしれないのに! お腹の子の父親かどうか確認しないと入籍しないなんて、他の男の子供だってバレるじゃないのよ」


 適当に贅沢を楽しんだら、慰謝料と養育費をせしめて本命と結婚する計画がパーだ。


「あの人だって、それなら待つって言ってくれてたのに。あのクソ女のせいで」


 一般的な価値基準で判断すると、非があるのは沙羅だ。だが、沙羅は自分が非難されるような行動をしたという認識が無い。あくまでも、自分の幸せを菜子に邪魔されたと思っているのだ。


 沙羅が憤っているのは、計画が駄目になった所為だけではない。


 会社で、沙羅の行ったことがばれたのだ。


「真面目そうな顔して、私の悪い噂を流すなんて、あんな性悪女だとは思わなかった。それなのに、なんで皆私を非難してあの女の味方をするのよ!」


 沙羅が言うように、菜子が悪い噂を流した事実は無い。

 やつれた菜子を心配した職場の人間に問い詰められ、かいつまんだ事実を簡単に話しただけだ。


 それが噂として広まるのが早かったのは、沙羅の評判が元々良くなかったからだ。


 そして、数少ない職場の友人にも避けられるようになった。



「嫌よ。自分の彼氏や友達寝取られたり、金蔓扱いされたくないもの。話しかけないで」


「ホストに貢いで捨てられたあげく、知り合いの婚約者寝取ろうとして失敗するなんて、バカみたい」


「あいつ、金さえ払えば誰とでも寝るらしいぜ」


「やめとけよ、ゴムに細工されて妊娠の責任取らされるぞ」


「それ以前に、変な病気とか持ってんじゃないのか」


 毎日のように職場で嘲笑われるのだ。正直やっていられない。

 その上、上司にまでもネチネチと文句を言われるのだ。


「君は仕事なんかより男が大事なんだろう。全てにおいて仕事を優先しろとは言わないが、仕事に対する責任が感じられないね。安心して仕事を任せられんな」

 事あるごとに言われ、ミスをしようものならすぐに叱責される。

 そんな環境でミスは増え、悪循環だ。


 他にも理由はある。


 請求されている慰謝料だ。

 婚約者を返してやったんだから慰謝料を払う必要なんてないだろうと沙羅は考えたのが、向こうはそう判断しなかったらしい。


 しかも、騙して結婚しようとしていたと訴える用意はある、と菜子の婚約者--赤城(あかぎ) 一史(かずふみ)の両親が言ってきたのだ。

 弁護士の用意もしてあるとまで言ってきた。


 全くもって冗談じゃない。


 沙羅は冷蔵庫からワインを取り出して(あお)った。


 あんなつまらない女より、沙羅の方が何十倍もいいに決まっている。

 短期間だろうと、いい思いが出来たんだから、感謝するべきだ。非難してくるなんて、間違っている。


 しかし、沙羅の考えを理解してくる者は、誰もいなかった。


 お腹の子の父親でさえ、計画が潰れた途端、態度を変えたのだ。


 いつ他の男をくわえ込むか分からないような女と結婚できない。

 自分の子かどうかもあやしい。

 もし自分の子供だったとしても、子供なんていらないからおろせ。


 等々、ひどい言葉を沙羅に浴びせた。


 ある意味、似たもの同士なのだろう。



 再びワインを呷る沙羅は、自分が置かれた現状を認識していない。



 沙羅がしでかしたこと、訴える用意があることを、赤城家が職場に通達しているしていることも知らなかった。

 それを受けて、沙羅に対する対処を下そうとしていることも。



 沙羅は自分に迫る破滅を知らず、ただひたすらに、他者に対する不満を喚き散らしていた。

良く今まで社会人として生活できていたな、というような酷さでした。


もし、一史が菜子に許してもらい、結婚できたとしても、一生菜子に頭があがらない気がします。

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