エピローグ ここより永遠に
岬の先の双剣の墓標に、花の束が手向けられる。
「リーヴせんせい、なんで、お花ならべるの?」
隣に立つ子からかかる声に、リーヴは顔を上げ、小さな頭を静かに撫でる。
「ここにはね、先生の大好きだった人が眠っているんだ」
「ねむるー?ここでねてるの?」
「そうだよ、だから君たちもほら、手を合わせて」
素直に手を合わせる子どもたちを見渡し、若い保父は天を仰ぐ。
――シアルヴィ先生、見えていますか
――あなたの残されたものは、確かにここに息づいています
海を渡る風が歌う。
手向けられた花の束が、合わせるようにかすかに鳴った。
魔法王国の城庭では兵団長ユミルが後進の指導に当たっている。
「ユミル兵団長、どうされたのですか」
兵の一人に声をかけられ、ユミルは仰いでいた視線を元へと戻す。
「なんでもないさ。風の中に、声が聞こえた気がしてな」
「声、ですか?」
間の抜けた声の兵の応えに、ユミルは顔をほころばせる。
「――お前たちにも話してやろうか。白い翼を持った魔族と、優しい死神の奇妙な話だ」
そう言って、ユミルは再び天を仰ぐ。
空を翔ける風の中に、白い羽毛が舞って見えた。
帝都の空に紙吹雪が舞う。
白衣の老将に促され、紹介される新たな君主を、国民たちは歓喜を持って迎え入れる。
この国の巻き起こした戦争は人も、魔族も、大陸中を戦禍に巻き込み、あらゆる場所で、人も大地も激しく傷つけられていた。
――自分に、できるだろうか。
若い君主は傍らに立つ、伴侶となった女性を見る。
――大丈夫です
彼女の瞳が優しく答える。
栗色の髪の魔法使いが、風の渡るバルコニーを抜け、国民となった民の前へと歩み出ていく。
歓声がひときわ大きく、晴れた空へと響き渡った。
――静寂の戻った世界樹の森。
そこに、かつての動乱はない。
ただ、木々の間を渡る風はあの頃と変わらず歌い続ける。
かつての大樹にははるか及ばぬ小さな若木。
風に揺れる若木の葉には、銀の雫が一つ、陽の光を受けて輝いていた。
――一つの時代が終わりを告げ、新しい時代の幕が開く
――若者たちはそれぞれの場所で、それぞれの時を刻み始める
――若い世界樹が見守る中、彼らの生はこれからも連綿と綴られていくのだろう
――そう
――ここより永遠に――




