プロローグ。
10月中旬。
日中はまだまだ残暑続く暑さで全く働く気が起きない。
しかし日が暮れると嘘の様に寒さを覚える。
「馬鹿みたいな気温差しやがって。風邪引いたらどうしてくれんだ!」
愚痴を言いながらタバコを吹かし張り込みをする。
耳には青い光を規則的に点滅させるBluetoothイヤホンが付いている。
「こちらお前の偉大なる先輩。異変無いか?どうぞ?」
俺の呼び掛けに男の声が返ってくる。
「こちらアンタの愛しき後輩。アベックが1組出て行ったが対象では無い。どーぞ?」
「何が愛しき後輩だ。お前、そういえば冷蔵庫のプリン勝手に食っただろ?どうぞ?」
「偉大なる先輩もどうかと思うけどな。後者に関しては、知らん。どーぞ?」
「知らねぇ訳ねぇだろ!俺の家の冷蔵庫勝手に開けるのはお前しか居ないんだぞ!逃げ切れると思うか!?どうぞ!?」
「あっ!出てきた!」
「え?マジ?車戻るわ!」
俺は後輩の乗っている車に向かう。
対象者はホテルから出て行き、浮気相手の男が自分の車へと乗り込みホテルを後にした。
俺たちは、その後を尾行する。
「いつの時代も浮気はなくならねぇな。」
後輩はハンドルを握り、少しだるそうに言った。
「まぁ、そのおかげで飯が食えてるんだ。文句言うな。人の不貞で飯食う俺達からしたら有難いじゃねぇか。」
「文句とかじゃなくて……まぁ良いや。」
「なんだよ。気になるだろう?言えよ。」
「いや、特に大した感想じゃ無いんだが、浮気する男の心理がよく分からん。」
「お前は、若いな。浮気なんてチャンスがありゃ誰でもするもんなんだよ。俺だってそうさ!」
「アンタ、パートナー居ないから浮気にもならねぇだろ。」
「………。」
ゴチッ!
「イッテェ!!」
心臓を抉る様なツッコミに思わず拳骨が出てしまった。殴る方も痛いとはこういう事なのだろうかと、勘違いしたまま、俺たちは名古屋の街へと車を走らせる。
時刻は21時44分。
これから起きる惨劇を知らない2人は呑気に冗談を言い合っていた。




