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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?

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第59話 悪堕ちした旧友

 街からもっとも手頃なダンジョンを目指しながら、ロニはかつての日々を思い出す。


 戦闘特化の魔法しか習得しようとしない者同士、ロニとキャトレイは意気投合した。


 獣人族の田舎から出てきたキャトレイは、研究職につくツテもバックアップもない。冒険者で一旗揚げるのが、夢だと語っていた。


 どれだけの経験をしたら、ここまで荒れてしまったのか。


「お望み通り、人気のないダンジョンを選んであげたよ。思う存分、殺し合おう」


「……やろう」

 

 合図もなく、戦闘になる。


 全力の、【レイジ・オブ・エレメンタル】を放った。


「なに!?」


 ホムンクルスたちの、動きがいい。

 キャトレイなら軽く避けられるだろうとは、想像していたが。

 いくらキャトレイのスピードを搭載しているとはいえ、回避が的確すぎる。


「ご覧よ、これが【せーせーえーあい】を積んだ、アタイのホムンクルスさ」


 たしかに、強い。


【レイジ・オブ・エレメンタル】の雷撃でも、捉えるのが難しかった。


「通常のゴーレムやホムンクルスは、主の指示が必要だろ? このホムンクルスは、自分の意思で、こちらの指示を待たずに活動できるんだよ!」


 召喚ビルド使いといえど、敵の攻撃を受ける際は、創造者が敵の動向を見ていなければならない。ホムンクルスもゴーレムもスケルトンも、使い手の技量や戦闘経験が物を言う。

 

 キャトレイのホムンクルスは、自分で考えて動くのか。こちらの行動を、先読みまでしてくる。


「くう!」


「くらいな、ロニ! 【魔爪拳】!」

 

 キャトレイとホムンクルスが、デコった爪から衝撃波を発する。攻撃はすべて、違う属性の魔法が乗っていた。


「【マジックバリア】!」


 全属性を受け止められる、全身障壁で対処するしかない。


 一人しかいないロニでは、たしかに対応は難しいだろう。


 これだけの力がありながら、悪事にしか扱えないとは。キャトレイに、何があったのか。


「ホムンクルスで技術で、アンタは世界を守るとか言っていなかった?」


「そんな誓いは、もう忘れたさ!」


 キャトレイとは卒業後、久しく会っていない。


 冒険者になるという目標は、以前から聞いていた。


 研究者なのに、冒険者になると。


 魔法の研究者は、そのまま学者になるはず。


 キャトレイは学びの道へ進まず、実用性の高い冒険者を選んだ。


 ロニと同じように。

 

「生活、できなかったんじゃない?」


「ベリト様が拾ってくれなかったら、アタイは今でも部屋の隅でうずくまっていたかもだ」


 そんな状態だったのか。


「ダンジョンの探索者になんか、なるべきじゃなかった」


「研究職に入り直せば」


「ただでさえ爪弾きの獣人族が、エルフだらけの研究職で高待遇を受けられるわけがないさ」


 学者レベルになると、まだ人種差別は多い。


「ベリト様からお声を掛けていただき、アタイは変わった。キャトレイの名を捨てて、ムルルとなった」


「あんたの不幸な境遇は、わかったよ。私はどんな過酷な状況でも、自分の手で将来を掴んだオッサンを知っている」


「ヒガンだ、っていいたいんだろ? あんなもの、ただのチートじゃないか」


「違う! ヒガンは、不正の塊なんかじゃない。血の通った、人間だ!」


 自分はヒガンの戦いを見て、学んだ。


 そのすべてを、キャトレイに叩き込む。

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