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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?

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第54話 アラマサのデメリット

 ボクシングのガードよろしく、ムルルの攻撃をさばく。


「そんな防御、いつまで続くかねえ! ヒガンもどきが!」


 ムルルの言うとおりかも。ちょっと片手だけでは、防ぎきれそうにない。

 

「やってみるか」


 もう片方の腕にも、盾を構えた。二刀流ならぬ、二盾流だ。


「ドヤ顔ダブルシールドなんて、いつの時代の戦略だよ!」


 デコった爪になんらかのエンチャントを施し、ムルルが斬りかかる。

 

 左腕のカイトシールドで攻撃を受け止めつつ、【シールドバッシュ】を食らわせる。


「くそが!」


 また、攻撃を繰り出す。


 右腕の円形盾でパリィ、受け流してカウンターの蹴りをムルルの腹にブチ込んだ。


「ぐう!?」


 腹を抑えながら、ムルルが後ろに下がる。 


「めちゃつよつよな刀は、使わないのかい?」


「お前ごとき相手には、必要ない」


……使えないんだよっ。


 オレは内心、ひとりごつ。



 ムダに強化しすぎてしまったせいで、アラマサの燃費が最悪なのだ。すべての刀身に、【天啓】をセットしてしまったからな。

 天啓は、確定クリティカルスキルである。反面、魔力の消耗が激しい。

 とはいえ、それくらいやらないと、ベリトにダメージを通すのは難しいだろう。

 なので、とっておき以外では使いたくない。


 

 せっかく、サブウェポンの枠もあるから、そっちも活用したいのである。

 リスクとリターンを考えると、「武器複数持ち」って手段は効果的なはずだ。


 刀で斬るばかりの攻撃重視戦法に寄せすぎてしまうと、戦略がワンパターンになるし。


 オーゼやキナ子だけで、ロニを守りきれないケースもある。この間の、アンドラス戦のように。

 

 とはいえ、盾二つ持ちが決定打になることはないな。キックの威力が、思ったよりダメージになっていない。


「じゃ、【二刀流】だな」


 オレは盾をしまい、【双刃刀】というアイテムを出す。柄をねじって、分離させた。


 右手にロングソードを、左手に短剣を持つ。


「にわか仕込みの二刀流で、あたいに勝てるとでも?」


「やってみなけりゃ、わからんさ」


 ムルルが、オレの挑発に乗ってきた。


「困るんだよ、お前みたいなのがウロチョロしていると! ベリトの信者が、自分の行動に疑問を持ち始めるからさ!」


 ベリト側からしたら、なにも考えず悪事を働いてくれるヤツラのほうが使いやすい。「真面目に働くより、悪行に手を染めるほうが儲かる」と思い込ませたいのだろう。


 それを、オレたちは全力で阻止している。


 実際、真面目にコツコツやっていったほうが、儲かるわけだし。問題なのは、それを多くの人が知らないこと。成果が目に見えないし、デカく稼げないからだ。


「お前はどっちかっていうと、悪事が好きなタイプに思えるが?」


「魔族にとって、悪事は呼吸さ。取り上げられたら、死ぬんだよ」


 ダメだ。


 コイツは、殺すしかないな。

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