第54話 アラマサのデメリット
ボクシングのガードよろしく、ムルルの攻撃をさばく。
「そんな防御、いつまで続くかねえ! ヒガンもどきが!」
ムルルの言うとおりかも。ちょっと片手だけでは、防ぎきれそうにない。
「やってみるか」
もう片方の腕にも、盾を構えた。二刀流ならぬ、二盾流だ。
「ドヤ顔ダブルシールドなんて、いつの時代の戦略だよ!」
デコった爪になんらかのエンチャントを施し、ムルルが斬りかかる。
左腕のカイトシールドで攻撃を受け止めつつ、【シールドバッシュ】を食らわせる。
「くそが!」
また、攻撃を繰り出す。
右腕の円形盾でパリィ、受け流してカウンターの蹴りをムルルの腹にブチ込んだ。
「ぐう!?」
腹を抑えながら、ムルルが後ろに下がる。
「めちゃつよつよな刀は、使わないのかい?」
「お前ごとき相手には、必要ない」
……使えないんだよっ。
オレは内心、ひとりごつ。
ムダに強化しすぎてしまったせいで、アラマサの燃費が最悪なのだ。すべての刀身に、【天啓】をセットしてしまったからな。
天啓は、確定クリティカルスキルである。反面、魔力の消耗が激しい。
とはいえ、それくらいやらないと、ベリトにダメージを通すのは難しいだろう。
なので、とっておき以外では使いたくない。
せっかく、サブウェポンの枠もあるから、そっちも活用したいのである。
リスクとリターンを考えると、「武器複数持ち」って手段は効果的なはずだ。
刀で斬るばかりの攻撃重視戦法に寄せすぎてしまうと、戦略がワンパターンになるし。
オーゼやキナ子だけで、ロニを守りきれないケースもある。この間の、アンドラス戦のように。
とはいえ、盾二つ持ちが決定打になることはないな。キックの威力が、思ったよりダメージになっていない。
「じゃ、【二刀流】だな」
オレは盾をしまい、【双刃刀】というアイテムを出す。柄をねじって、分離させた。
右手にロングソードを、左手に短剣を持つ。
「にわか仕込みの二刀流で、あたいに勝てるとでも?」
「やってみなけりゃ、わからんさ」
ムルルが、オレの挑発に乗ってきた。
「困るんだよ、お前みたいなのがウロチョロしていると! ベリトの信者が、自分の行動に疑問を持ち始めるからさ!」
ベリト側からしたら、なにも考えず悪事を働いてくれるヤツラのほうが使いやすい。「真面目に働くより、悪行に手を染めるほうが儲かる」と思い込ませたいのだろう。
それを、オレたちは全力で阻止している。
実際、真面目にコツコツやっていったほうが、儲かるわけだし。問題なのは、それを多くの人が知らないこと。成果が目に見えないし、デカく稼げないからだ。
「お前はどっちかっていうと、悪事が好きなタイプに思えるが?」
「魔族にとって、悪事は呼吸さ。取り上げられたら、死ぬんだよ」
ダメだ。
コイツは、殺すしかないな。




