第18話 初めての、異世界へ
オレたちは、ダンジョンを出る。
地下トンネルを抜けて、『あちら側』の冒険者ギルドへ、向かうことに。
「これが異世界か」
ダンジョンを出ると、中世のような町並みが、視界に広がっていた。
『当然ですが、ちゃんと酸素らしきものもありますね』
生存法則などは、地球と大差はないだろう。
「ここは、ジェラーノの街だよ」
ロニの家は、【ジェラーノ】という街にあった。港町で、商業が盛んのようである。
ジェラーノの冒険者ギルドへと、足を運ぶ。
「こんにちは。地球側のギルドと、交信がしたい」
「あいよっ」
水兵スタイルのニーチャンに、ギルド間の通信をお願いする。このニーチャン、半魚人だな。
「ミツルってのが、あんたと交渉したいらしい」
『承知しました。ごきげんよう、ミツルさん。ご無事で何よりです』
「一日ぶりだな。どうも」
地球側のギルドに、ダンジョンで起きたことを話す。
『なるほど。たしかに、経験値の効率化のようですね』
「だよなあ。そうとしか、考えられん」
パーティによって敵の強さや得られる経験値が調節されるなら、わざわざ周回プレイをしなくて済む。
「というわけだ。では、ロニの母親に話を通してくる」
『お気をつけて』
帰りは、ダンジョンをパスできるようにしてもらった。
一度クリアできたダンジョンなら、再攻略も不要なのである。
「取得したアイテムなどの、取引はどうする?」
半魚人の受付が、カウンターにヒジを置く。
たしかに、戦利品などの整理などはしたい。しかし、済まさなければならない用事がある。
急がなくていいか。
「また後でな。今は、急ぐんだ」
「そうか。残念だ」
オレたちがやりとりをしていると、ロニが「待って」と言った。受付のニーチャンに、話をつけている。
「どうした?」
「ギルドを通して、母を呼んでもらった」
仕事を終え次第、迎えに来るらしい。
「まだ時間があるから、ここでアイテム整理しよう」
「わかった。助かる。ありがとう」
まずオレは、受付のニーチャンに素材等を渡す。
装備品は、いいか。帰って、ドワーフ鍛冶屋に見てもらおう。
「状態のいいアイテムばかりだ。いいね」
税金を差し引いても、相当額が手に入った。
これなら、装備更新してもオツリが来そうである。
特にニーチャンは、赤い水晶玉に興味津々だ。ライカーガスの心臓部にあった、コアらしい。
「【ライカーガスのコア】なんて、久しぶりに見たぜ。ライカーガスなんて、『見かけたら即逃げ』ってのが、一般冒険者の常識だからな」
ライカーガスは、一般的な冒険者の間では、レアな強いモンスターとして扱われるようだ。見かけても相手にしないのが、普通のようである。
それが、ボスキャラとして出てきちまうとは。
「あのさ、半魚人のお兄さん。これはなに?」
ロニが、ライカーガスから受け取ったアイテムを差し出す。
どうも、メダルのようだ。ガイコツの頭部が、彫られている。
「スロットマシンの、メダルみてえだな。ギャンブルでも、やんのか? それにしては、ちょいデカいな」
半魚人ニーチャンのジョークに、ロニは首を振った。
「もらっても、いいんじゃないか? とにかく、ウチじゃ買い取れないよ。んなもん」
「ちょっと見せてくれ」
オレは半魚人ニーチャンから、メダルをひったくる。
「これ、【実績】だ!」
ガイコツの頭の周辺に、ぼんやりと文字が浮かんでいた。【死霊の王、ココに眠る】と。
どうやら、正攻法でライカーガスを倒したことで、なんらかの実績を解除できたらしい。
[実績を解除したことで、新たなレアスキルを習得しました。ステータス表を確認してください]
妙なアナウンスが、脳内に流れる。
「なにこれ? 頭に音声が流れてるんだけど?」
ロニの頭にも、アナウンスが聞こえたようだ。
「レアなスキルを手に入れたってよ。ライカーガスってのを倒したから」
オレは、ステータス表とスキル表を出す。
【盾持ち投げ】……「鉄壁の守りさえ、あなたの前では飾りに過ぎない」
盾を持っている相手を、ぶん投げる。
【呪いの騎士】……「あなたを永遠に守護する。それは誓いであり、呪い」
壊れないスケルトンを、一体召喚する。ただしタンク役。攻撃はしない。
【ターン・アンデッド】……「ワレニカゴヲー!」
至近距離にいるアンデッドモンスターを、一掃する。ただし、ゼロ距離限定。
実績を解除したことで、特別なスキルを手に入れられるようだ。
「どうする? 一人につき、一つだけスキルが手に入るみたいだ」
最初は、一番の功労者であるキナ子に選ばせる。
「では、ターン・アンデッドをいただきます』
「妥当だな」
キナ子のスキルは、チャージ前提のものばかり。なので、足止めを食らうわけにはいかない。
で、ロニが呪いの騎士、オレが盾持ち投げを手に入れた。
「ありがとう。またな」
「おう。いいアイテムがあったら、よろしく。街を楽しんで」
受付ニーチャンが、オレに手を振った。
「さて、ロニの母親の元へ行くか」
ジェラーノの街を探索したいが、まずはロニのおふくろさんに話をつけなければ。
ギルドの前に、一台の車が停まった。車と言っても、大昔にあったレバー型だ。ガソリンではなく、魔法で動いている。
「ヴェロニカ!」
後部座席にいた女性が、ロニを見つけて駆けつけた。




