二章 第十一話 俺と生徒が国王陛下と面談するまで
第十一話です。感想お待ちしています。
その後、サリアとリーゼルが土下座して許してもらい、二人して先程のワープ地点の戻り、一瞬のうちにフレーゼルと王国馬車が無事戻ってきた。
そんなことがあったわけだが今俺たちはサリアの案内で王城の中を歩いていた。この場所に来るのもかなり久しぶりだ。そこから王室までの距離は長くなく、あっという間についてしまった。
……入りずれー……。
まず第一に、俺は一度この国から逃げ出してしまっているのである。その待遇のなか、いきなり国のトップに会わされるというのはかなり刻である。案外容易に想像できるのではないだろうか。
「はー、……帰りたいなぁ」
無意識に出てしまった俺の声は、かなり哀愁がただよっていたかもしれない。
「諦めろよ、シンマ。もう後戻りはできないんだぜ?」
「わかってる」
怒鳴り散らされようが、追い出されようが、どの道、もう後には引けない状況になってしまっている。それに、今日は生徒達のことにも詳しく話し合う必要があるのだ。
深く息を吸い込み深呼吸をする。そして前にあるドアにてをかけた。さすがは王室の扉というべきか、ずっしりとした重さが俺に伝わってくる。その重さがこの王室という入り難い雰囲気を作ってるようにも思える、そんな迫力のある扉だった。
これを開けるのは後は勢いだけである。俺はもう一度息を深く吸い込み、ドアを押し開けた。
王室はただっぴろい大広間のような場所だった。金持ちや権力者ほど部屋などが大きいかつ多い気がするが、そんなに大きい部屋は必要なのだろうか。こういうのがいわゆるところの金持ちのステータスって奴なのかもしれない。理解はできないが。
国王ロッテン・アルバートは、そのただっぴろい大広間の一番奥に、王座を構え座っていた。それには、国王としての尊厳や威厳を十二分に感じさせるだけの力があった。その隣のいかにも高そうな純白なソファーに腰掛ける端麗な美女は女王シーナ・アルバート。この国の全てがこの二人の意思によって決まる。このアルバート王国の中における絶対的な存在だ。
その国王の声が大広間に響く。
「家臣の者たちよ。我はそこにいる客人と話したいことがある。そこにお前たちがいると我が話をすることができなくなる。よって、全家臣よ、席を外せ」
「「「御意」」」
そういって家臣たちはこの大広間から出て行った。軽くみても二十人近くいた上位家臣になんの反発も与えない王のカリスマ。これが亜人達がこの世界に残り続けている要因の一つなのだろう。
そんな王の態度も、家臣がいなくなると少しずつ変化していく。
具体的にいうと、……満面の笑みになる。その笑みでくしゃくしゃになっている顔に先程の葉迫力は微塵も残っていなかった。
「久しぶりだなーっシンマ!」
とても嬉しそうな声で俺に話しかける国王のギャップに一同面食らったようだ。無理も無いだろう。
「お、お久しぶりです国王陛下」
「そんな硬くなるなよ~」
普段見栄を張っている国王だが、親しい者とはこんな感じの人なのである。
まあそのギャップに悲しむ家臣と、自分には違う態度で接してもらいたい(具体的にはこんな感じで)家臣の双方がいるが、国王自体は全く気にしてないようだった。それもどうかとは思うが……。
「あのーこれはどういうことですかね?」
「うん、気にするないつものことだから」
こんな国王に生徒達はあっけに取られてしまっているようだ。まあ俺も訳ありで最初からこんな感じだったけども。
「それで国王陛下、なんの御用でしょうか?」
俺は自分で半ばわかっていながらもあえて質問した。
「うむ」
そこで国王は一息置いてから、あの家臣に命令したときのような威厳のある風格を戻していた。
「まずはそこの客人がたのことだ。その子達は異世界人ということで間違いないか?」
「はい、その通りです」
「なら、そこの子達、否そのお前の生徒達は今後どのようにするつもるなのだ?」
「とりあえずはこのまま俺といることになりました」
そこで国王は生徒達を見回した。ついでに俺も見回してみる。
生徒達は先程の国王の様子からの急激な変化にオドオドしているが、それなりの決意を示すかの様に国王を見ている。
「うむ、それでいいようだな。それなら安心だ」
「はー……」
「よし、では次の話に行こうか、シンマ・アマガヤ特殊任務部隊配属一級魔導士」
「っ……!」
「なーに、驚くこと無いだろう?、前はそう呼ばれていたんだからな」
その時の国王の顔は、重大な事件を起こした者えの尋問官の顔だった。
「では話を聞かせてもらおうじゃないか、我がアルバート王国一の裏切り者よ」
「アハハ……」
俺は自分の右の頬を掻いた。
「おっと、ここで言わないほうが良かったか、でもそのわりには生徒諸君はあまり驚いていないようだが?」
国王は回りの生徒を見て不思議そうにしてる。まあ普通は驚くもんな。
「それは事前に俺が生徒達に言っておきましたから」
「ほう、だいぶ変わったようだなシンマよ」
「どういう意味、でしょうか?」
「いやな、前のお前だったら絶対にそんなことを言わなかっただろうしな」
そこで国王はニヤリと笑った。
多少イラっとしながらも俺は平然を装って言った。
「そうですかね」
「まあその変化については今度でいいだろう。私が聞いているのはその後一年間の話なのだが」
国王の言葉に俺はしばらくの間俯いていた。
「……その話は、今、じゃないとダメですか?」
俺の声は震えていたと思う。震わせるつもりなんて微塵もなかったのにもかかわらず。
その俺の声を聞き、国王は
「なら今じゃなくてもいい。ただし、いつか落ち着いたら話してくれ」
「……ありがとうございます」
今度の声は震えていなかったと思う。
あの一年間は、無意識に声が震えてしまうほどに、俺のなかにある恐怖の塊なのだから。
「まあ、それはさておき、その生徒達の寝床や食事はどうするつもりだ?」
国王がわ話題を変えてくれたようだ。こういうときには有り難い。
それにこの話もかなりの優先順位にある。ここで決めないとならないことだろう。いかんせん、俺にはこいつらを守る義務がある。
「それに関してなんですが……」
ここで俺には『こいつらの事は俺に任せてください!』みたいなかっこいいことは言えない。だって俺にはこいつらの宿代と食費を賄える金がない。というか無一文。
「なんとかなりませんかねぇ国王陛下~」
初っ端らからの他力本願。やっぱりこれに限るぜ!
「まあそんなとこだとは思っていたがな、もう少し申し訳なさそうにしてくれまえよ」
「いやすいません、毎度のことながら~」
もはやヘタレと呼ぶのにもおこがましい俺に、生徒達の冷たい視線が刺さる。……そんなに睨むなよ、泣きたくなるだろうが……。
「まあ……提案がないわけでもない」
国王は浮かない顔で言った。はてさて、いったいどういうことなんだろうか?
「その提案とは?」
「実はな、お前がこの地にいない間、いやこの世界にいない間、人類と魔族連中との戦いが大きくなってきてな」
俺は自分のいない間にだいぶ世界が亜種にとっていい方向に進んでいないことを察した。
なにせ俺がいたここ三年間、一度も大きな戦いは無かったのだから。
「その火種を聞いても?」
「お前もうすうす感じているだろうがな、原因はお前だ」
「そうっすよね、は~」
「えっ、どういうことなんですか先生?」
相川が今の話の趣旨を理解したらしい。別に難しい話でもなんでもないのだが、今生徒たちは突然のことで混乱しているため、あまり思考が回ってない。その中でも落ち着いて状況整理ができるのは、相川の一つの才能といえる。なにせ戦場ではこういった判断の違いに自分の生と死がかかっているのだから。
そんな相川だからこそ、俺に原因があることの不可解さに気づいたのだろう。
「なに、簡単なことだ。さっき話した通り、俺はかなり奇異な存在なんだ」
「うわ、自分で言ってるよこの人」
仕方ねーだろ、俺だって嫌だは。
多分これ言ったのは仲居だろう。その横で頷いている奴らも後でしばこいとこう。
「だからな、魔族側としてはたまんなかった訳よ、勝手に貴重なサンプルを殺された、ってな」
「でもさっきの話だと魔族っていうのはお兄ちゃんを殺そうとしてたんじゃ?」
「まあ最初はそうだったんだけどな。生き残っちまったせいで面白そうだって目付けられちまった。
そんで、魔族は怒り心頭なわけだ。なにせバラバラの魔族連中の唯一の意志は、『狙った獲物は何が何でも逃がすな』ってしきたり、だからな」
それにもう一つ理由がある。
「あとは、確信してるわけじゃないけど、あいつらには標的が生きているか死んでいるかを分かる魔術がある」
「それは本当かシンマ!」
先程まで口を挟まなかった国王がかなり驚いた様子で聞いた。
「それってそんなにすごいことなんですか?」
相川と同様、話しについてきている伊藤が疑問を口にした。
「ああ、結構すごいと思うぞ。だってよ、行方不明といわれている人達すべての状況がわかるんだ。特に自分の仲間や敵の残存戦力から待ち伏せの伏兵の居場所まで生のほうの探知を使えば分かる。戦闘においてはかなりの有効手段がとれる」
「それは、結構すごいですね」
「だろ」
こういうのをいち早く理解する能力も戦場では必須だ。悪魔で戦場での話しだけど。
「ってかクソ教師、それって今お前狙われてるって事か?」
俺のことクソ教師呼ばわりするのは赤崎くらいだ。クソに失礼なので人のことをクソよかいうのはやめよう。
いやそんなことよりも、今赤崎がなんか言った。
……あの赤崎が話しについてきながら先読みをした……。
先生感動した。あの赤猿の成長をこんなとこでみれるなんてな。
もしかしたら赤崎は本能的な部分で頭が回るのかもしれない。それはこの世界では貴重なものである。どう貴重かは後々話すことにしよう。
「で、先生。僕らはどうしますか?」
今のことを聞いたのは鈴木相馬。さすがは優等生、今の話にこれからの自分たちのことが関わるのが分かっているのだろう。ただのがり勉ではないようだ。
「そうだぞシンマ、お前についての説明は済んだことだし、生徒方のことはどうする?なにか案はあるのか?」
「あることにはあるんですかねぇ……」
この案は本人たちの意思しだいによるものが大きい。
「お前らはこの世界に来て、高校生じゃなくなった。だからもう一度この世界で高校生やってみないか?」
「えっ……」
生徒たちはよく分からない、というような顔をしている。そらそうか。普通の高校生とはちょっと違うことになるんだからな。
「俺も先生としていってやるからさ、『国立亜人魔術専門学校』に通ってみないか」
俺はこれからの全てが動き出す、新たな一言を紡いだ。
次回の投稿から三章になると思います。一章、二章と短めだったのですが、多少三章は長くなる予定です。多分ですけど。




