二章 第十話 俺と生徒たちが王城に行くまで
第十話です。なんとなくめでたい気もしますが、そんなこともなく。感想お待ちしています。
「よし、準備が出来たぞ真魔」
「了解。お前ら早く集まれ」
生徒達が集合し、サリアが空間の裂け目を広げる。サリアは軽々と空間の裂け目を開けて見せるが、これも意外に魔力を使う。俺でも近場ならこれを使えるが基本使えない代物だ。隊列を組む軍とかだと大概『空間魔術師』、通称空魔師と呼ばれる者が一人はいる。空魔師がいると逃げ延びるる生存確率が比較的上がるのだ。
まあ俺の場合、隊列組む相手がいないから使えるようになったんだけどね……。
そんなこんなで空間に穴が開く。さすが魔女様、かなりの大きさの穴だ(意味深な意味じゃないからな!)。普通こんなに大きいとすごい勢いで吸い込まれるのだが、全く吸い込まれる気配がない。
「全員入るぞー」
その俺の声に口をパクパクしてた生徒達が無意識な感じで指示に従う。こいつら絶対詐欺の魔術に引っかかるな。
「そんじゃサリア、レッツゴー!」
そうして俺たちは空間移動をした。ワープといった方がわかりやすいだろう。そのワープ先の場所なのだが……。
「……なんで『アンデルセン』にいんの?」
「王城の宮廷に行くからだ」
「目的地ってここのことか?」
「ああ、といっても目的の人物がここにいると言ったほうが正しいがな」
「国王陛下か………」
この国、アルバート王国の王都アンデルセンは、国の中央にある首都、『アルバント』の郊外にあるそれなりの面積を有する都市だ。その面積のわりには人はあまり暮らしていない。まあ王城とか建ってますしね。住みにくいことこの上ないよね。
ちなみにこの国は王都と首都が隣り合わせで別々のものになっている。なにせかなり多くの亜人が住んでいるのだからまとめてしまったらきりがなく、もともと首都兼王都だったアンデルゼンの広大な土地を半分、正確にはアルバントにほとんどの土地、に分けたのだ。
「どうだ真魔。久々だろう。先に家に行くか城にいくかどうする?」
そうなんです俺ここ住んでたんです。普通こんな夢のお城があったら胸は高まるが俺にとっては迷惑この上なかった。貴族連中は多いし、金に目が眩んだ商人やら他国の使者、あまつさえ他国の貴族さえくる。住んでもらえばわかると思うが、決して優雅な暮らしなんてものは無かった。
ま、初めてきたときは面食らったが、されど昔の話である。
それにしても、王城か家という並大抵じゃない質問を、「休日、家からでないで遊ぶか外で遊ぶか、どっちにするぅ?」みたいにいうのはやめて欲しい。なんか雰囲気壊れるし生徒の理解が追いついてない。そのなかでも一番に理解したのは小林だ。しきりに「王都、綺麗な城と来ればあとは…お姫様…グヘヘ」とかブツブツ言ってる。悪いが期待しないでもらいたいなのだが。
「先生、どういうことか聞いてもいいですか?」
そういった相川達に先程の説明をしていると、
「ウギャああああああああああああああ!」
かなり否、めちゃめちゃでかい声で叫んで頭を抱えるリーゼル。そこからは、仕事の会議資料を忘れた下っ端サラリーマンのような負のオーラが立ち込めていた。
「俺のフレールがいない、王国馬車がない!」
フレーゼルとはこいつの愛馬だ。なんとも友達が欲しくて、自分の名前を入れたくてこうなったそうな。どっちもイタイタしいぜ。俺がいえる立場じゃないが。
そのなか、魔術を使ってまでしても逃げようとしている奴がいた。
「おいサリア、どこに行くのかな?」
「お、おトイ、お花摘みに行って来るだけだ」
「なんで隠蔽魔術まで使ってるのかな?」
「っな!」
そういって自分の周りをみて驚いている。無意識に使ってたらしい。羨ましいぜ。
「サリア、どういうことだぁ、どういうことなんだぁ?」
リーゼルがむっちゃ必死にサリアを問い詰めてる。まさに後輩に責任を押し付けようとする下っ端サラリーマンみたいな必死さだ。
「……そ、それはだな。開けた空間の裂け目を対人用にしてたから……」
サリアは突然のハプニングに弱い。主に日常生活でだが。
リーゼルはその事を聞き顔を青ざめた。
「俺のフレーゼルがいないだと…、嘘だ!」
フレーゼルとはレーゼルの愛馬である。茶色と赤が混ざったような毛並みを持つ馬で、かなり足が速かった気がする。なぜフレーゼルなのか聞いたとき、リーゼルは、
「友達のフレンドと俺の名前混ぜてみたんだ」
当時、リーゼルはとても嬉しそうに語っていた。
……正直、虚しいと思いました。まあ俺が言えた義理ではないが。
そんなリーゼルにとってフレーゼルはとても大切な存在なのである。
まあ今は王国馬車のほうが先だと俺は思うが。
リーゼルはしばらく地面でウネウネ動き回っていた。普通にキモかったと思う。
「あーフレーゼル、俺の愛しきフレーッゼル!」
確かフレーゼルは雄の馬である。ある意味ボーイズラブと呼ぶものかもしれない。そんな煩悩に俺が頭をフル回転させていると、
「あそこです御巡りさん。あそこの男の方が失くしてしまった馬車を私に押し付けて金を出せっておどしてくるんですの!」
そこには可憐な容姿をした一人の美少女が立っていた。
…………………。
「お前サリアだろ」
そこにいた美少女はサリアが魔術によって自分を偽装した姿である。背丈も六、七歳くらいにしてあり、金髪碧眼の容姿を飾りつけている。まさしく貴族令嬢と呼んでも微塵も疑わないくらいに完璧な偽装である。まあ俺は騙せないけど。ガキん時にあれと同じ手法でなんども騙されてバカをくらってきたのだから。ってか毎度毎度あんな綺麗な目で上目遣いに、「私の頼みを聞いていただけませんか?」、なんて言われたら騙されるよ普通に、男だもん。
そんな過去の回想に胸を馳せていると、
「少しの間だけでいいから黙っていてくれシン」
「そっちの呼び方はやめろ」
「フッ、ツンデレめ。顔を赤くしてるくせに」
「なっ………!」
どうやら本当に顔が赤くなってしまっているらしい。無論少しだが。無論少し、だが……。 小声で話していたので回りには聞こえなかったようだ。現に櫻をみたらキョトンってな感じで首を傾げていたし、相川が「シン…フフフ…シン …フフフ……」とかいってたように聞こえたがあれはなにかの間違えだろう間違えであって欲しいです。
それを返事ととったのかサリアがまた話始める。
「お巡りさん、この人を捕まえてしまってください!」
サリアはリーゼルに指を突きつけて言い放った。リーゼルの周りを警官二人が取り囲む。ってかこの警官たちよく信じたな。まさか怪しい契約でも結んでつって来たのかもしれない。それとも今のレーゼルの気色悪い動きをみて信じる気になったのかもしれない。まあ俺は関わりたくないから何も言わないが。
「ま、待ってくれジョニー、サリー。俺たち友達だろう?」
リーゼルが警官にそう声をかけた瞬間、
ブチッ。
どうやら二人の警官さんはずいぶんご立腹になってしまったらしい。無理も無い。そもそもジョニーとかサリーとか言う名前どっから持ってきたんだろう。適当に言ってるんだろうがまず、あいつは友達が少ない。
そんなこんなでリーゼルが尋問所まで連れて行かれた。正しく言うと引きずられていっき、リーゼルの抵抗も虚しく終わった。なにせ引きずっていったのは巨人族の男たちだ。純粋な力比べで勝てるものはそうそういないのではないだろうか。巨人族はその体格ゆえに、警官や軍人に比較的なりやすい。戦闘能力も極めて高い種族の一つなのだ。
その後、サリアは魔術を解き、こちらに歩み寄ってきった。正直な話、こいつはかなりのダメな人間なのかもしれない。俺の言える義理じゃないが。
「よし、生徒諸君よ。再び王城を目指そうか」
サリアがちょっと嬉しそうな感じで声のトーンを上げている。俺の思った以上にダメ人間なのかもしれない。
「おい、サリア。リーゼルの事どうすんだよ」
「ん?リーゼル、どこかで聞いたことがあるようでないような」
……こいつ、ちょっと救い難いくらいにはダメ人間なのかもしれない。まさか存在ごと消すとは。
「フッフン~~」
「お前なあ……」
なにかとご機嫌になってしまっているので、俺は口を出さないことにした。
数時間後、リーゼルの弁明でサリアが尋問所に引きずられていったのはいうまでも無いだろう。
次回の投稿もよろしくお願いします。




