二章 第九話 俺と生徒たちが宮廷に行くまで
第九話です。感想お待ちしています。
「これが俺の過去だ。だからな、心底あの国には戻りたくない」
「違うだろ。アナスタシアとアレリオに会うのが怖いだけだろ?」
今のリーゼルの言ったことはそのまま核心をついていた。俺はあの二人にどんな顔して合えばいいんだろう。あの時以来、アレリオは俺に殺気をバンバン振りまいていたし、あのときから俺は一度もアナスタシアに会っていないのだ。
「まあ仕方ねわな。今でもアレリオは怒ってると思うし。でもなシンマ。アナスタシアはお前がこの国から去った後、めちゃくちゃに大泣きしてたぞ。『私のせいでシンがどこか言っちゃった』ってな」
「そう、か。あとなリーゼル。お前全く声真似になってなかったぞ」
「う、うるせぇーよ!」
「おい、本気で怒ってんの?」
リーゼルは蜥蜴人だ。普段人間のようになっている容姿から蜥蜴の鱗がみえてる。蜥蜴人は臨戦態勢になるか興奮状態(性的でなく)のとき体から鱗が出始めるのだ。これマジでヤバイじゃんなね?俺たちは今、王国からの馬車に乗っている。庶民風のほうがいいのだがクラス丸々乗るのには狭すぎる。だから王国馬車に乗っているのだが……。目立ちすぎる。そこでリーゼルが暴れたら俺達の立場が不味いことになる。それは避けたい。
「おいリーゼル。自信があったのなら悪かったな、……ププ」
「てめーシンマよくも笑いやがったな!」
「いや笑ってない」
「んだと!」
「いや笑っていない。怒った顔が面白いとか断じてない」
「……あーお兄ちゃん、今、自白しちゃってるぽかったけど?」
「ストップだぞ、お前ら。少し黙れ」
サリアの冷静な声が響く。いや、冷静というか脅しみたいだったぞ?
「もう少しで着くぞ」
確かにさっきまでの町並みは消えていたが、何か建物があるわけではない。
「何にも無いじゃないかよ」
後ろの方にいた赤崎が声を荒げる。それも最も、やはり先をみても田舎町である。その声を聞いてサリアがさも当然のように言う。
「ここから空間移動魔術を使う。準備しろ」
「はぁ?」
「そういえば説明していなかったな。空間移動魔術とは空間に穴を開けて移動する魔術だ」
「えーそうなんだー」
生徒達がポカーンとしているので適当に感心しておく。
「もう少しわかり易くいうか」
俺をスルーしつつ、少し間を置いてから話し始める。
「この魔術はな、世界中にある空間の裂け目を利用する方法と自力で裂け目を開ける方法とがある」
サリアが言うとおり、空間魔術は二種類ある。それを聞いて、当然の疑問が浮かび上がる。
「なら自力で開けて移動すればよくね?」
今の発言は宇野晴彦である。教師の俺もサブキャラすぎて完全に忘れてたぜ。
「それができればいいがな。空間に裂け目を開けるなんていうものはかなりの魔力を使う。それを四十人分はさすがの私でもできないんでな」
確かに負担が大きい。でもさりげなく『さすがの私でも』とかいってたよね。自画自賛してドヤ顔になってたよね?
「そこでだ。この田舎の森に一箇所、目的地に繋がる裂け目がある。そこに行こうというわけだ」
当然生徒からも不満の声があがる。まあ無理もないのだろう。なにせたっだぴろい畑と森くらいの村だしなここ。
そのなかで、誰が紡いだかはわからないが、確かな声が聞こえた。
「魔術ってもっといいもんじゃねーのかよ……」
その声を聞いて誰にも聞こえないながらも、俺は少し語尾が強くなりながらもはっきりといった。
「魔術なんてものはいいもんなんかじゃねーんだよ」
その声が消えたと同時に、本当に小さな、だが聞いたものを震え上がらせるような二つの笑い声が風に乗って消えていった。それは当然、天賀谷真魔には聞こえなかった。
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