第20章 速度の代償
第20章 速度の代償
道のりは続いていた。
だが、彼らの間の空気は変わっていた。
重く。
張りつめていた。
ライデン・クロスは振り返ることなく、隊の先頭を歩いていた。
一歩、また一歩。
あまりにも一定で。
他の者たちには速すぎる歩調で。
セレナ・ヴェイロスは少し後ろを歩いていた。
今は意図して。
追いつけないからではない。
急いでいないからだ。
「遅れているぞ」とライデンは立ち止まらずに言った。
セレナは落ち着いて答えた。
「私たちは安定して進んでいます」
彼女はわずかに眉をひそめた。
「止まっているわけではありません」
ライデンは一歩近づいた。
「俺たちが遅く進む日々のあいだに、誰かが死んでいる」
間。
「“準備が整う”その時まで、生きられない者もいる」
彼は続けた。
「俺はここに、楽をするためにいるわけじゃない」
「できるだけ早く終わらせるためにいる」
間。
「長引けば長引くほど、苦しむ人間は増える」
セレナは息を吐いた。
「その過程で、一緒にいる人たちを失ったら?」
彼はすぐには答えなかった。
間。
そして、
「それでも無駄死にではない」
セレナはわずかに緊張した。
「それを彼らに説明するのは、あなたじゃない」
ライデンはまっすぐ見た。
「俺には、ゆっくり進む余裕はない」
間。
「世界は待ってくれない」
彼は少し声を落として続けた。
「“正しく進む”ことを学んでいる間にも……誰かが間違った形で死んでいく」
セレナは静かに返した。
「でも、その加速で仲間を壊してしまったら?」
間。
「その速さが、敵より先に彼らを殺しているとは思わないの?」
彼は黙った。
ほんの一瞬。
だが、それは重要な沈黙だった。
やがて彼は再び口を開いた。
「俺は、今この隊だけを見ているわけにはいかない」
間。
「見ているのは世界だ」
「人々が今も苦しんでいるのは、俺たちがまだ十分に強くないからだ」
「慎重になりすぎれば」彼は言った。
「苦しみを長引かせるだけだ」
間。
「俺は、それを終わらせたい」
セレナは静かに言った。
「あなたは苦しみを終わらせたいのね……」
間。
「でも、自分が今どれだけ生み出しているかは見えていない」
彼は顔を背けた。
乱暴ではなく。
だが、完全に。
「なら、自分で決めろ」と彼は言った。
「遅れるか、進むか」
そして再び前へ歩き出した。
さらに速く。
まるでその速さで議論を断ち切るかのように。
セレナは一瞬、その場に残った。
そして初めてはっきりと理解した。
(彼は冷酷なんじゃない)
(ただ、止まり方を知らないだけだ)




