第1章 最後の面談
第1章 最後の面談
部屋は普通だった。あまりにも普通だった。
白い壁、デスクランプの柔らかい光、椅子と向かい合う一脚の椅子。すべては教えられた通り——人が安心感を覚える中立的な空間。
マルク・オルロフは背筋を伸ばして座り、ノートを手にしていた。
24歳。最近研修を終え、最近臨床を始めたばかり。まだ経験は浅いが、正しくやろうという強い意志があった。
彼は目の前の患者を見た。
中年の男性。疲れた視線、やや猫背の姿勢、絶えず動く手——指を組んではほどいている。
マルクは落ち着いて話し始めた。
— では、まず簡単なところから始めましょう。今、何が一番あなたを悩ませていますか?
患者は短く笑った。まるでその質問が簡単すぎると言わんばかりに。
— 一言で言えば……仕事だね。
— もう少し詳しく教えてください。
男性は視線を落とした。
— ここ数年、同じ会社で働いている。最初は問題なかった。でも最近は……自分が透明人間みたいなんだ。
マルクはわずかに首を傾けた。
— 「透明人間」というのはどういう意味ですか?
患者は肩をすくめた。
— 仕事はこなしている。期限も守る。時には早く終わらせることもある。でも上司は……まったく俺を見ていない。他の人ばかり褒めて、話題にして、模範にする。でも俺は……ただそこにいるだけだ。
マルクはノートに短く書き込んだ。
— つまり、評価されていないと感じている。
— そう…… — 男性はうなずいた。 — そして頑張れば頑張るほど、その感覚が強くなる。
心理士は冷静に続けた。
— それは、成果のために頑張っていますか?それとも、認められるために頑張っていますか?
患者は一瞬黙った。
— 前は成果のためだと思っていた。でも……正直に言えば、見てもらいたい気持ちはある。
マルクは否定せず、ただうなずいた。
— それは正常な欲求です。認められたいという気持ちは、人間にとって基本的なものです。
男性は苦笑した。
— でも、いつも自分は足りない気がする。何をしても。
マルクはペンを置いた。
— 少し深く見ていきましょう。その「足りない」という感覚は、仕事だけで出てきましたか?
患者は緊張した。
— いいえ…… — ゆっくりと息を吐く。 — どうやら仕事だけじゃない。
— 詳しく話せますか?
男性は長く黙った後、静かに言った。
— 父もそうだった。ずっと。何をしても足りないと言われていた。
部屋の空気が少し重くなった。
マルクは急がなかった。
— あなたは今、過去の経験を繰り返しているように見えます。形を変えただけで。
患者はゆっくりとうなずいた。
— 乗り越えたと思っていた。でも違った。ただ形が変わっただけだった。
マルクは穏やかに確認した。
— つまり、あなたは今も「認められるために」努力しているということですね?
— たぶん……そうだ。
沈黙。
マルクは椅子に軽くもたれた。
— では二つを分けて考えましょう。あなたの実際の能力と、その評価の感じ方は必ずしも一致しません。
患者は顔を上げた。
— それで、どうすればいいんですか?
— まずは外部の評価だけに依存しないことです。そうしないと、評価がないだけで失敗だと感じてしまう。
彼は落ち着いた声で、機械を分解するように説明した。
— 次回は、誰にも評価されていなくても、あなたがうまくやれていた場面を一緒に整理しましょう。
患者はゆっくりうなずいた。
— やってみます。
— それで十分です、とマルクは言った。
その瞬間、何かが変わった。
急ではない。
しかし奇妙だった。
部屋の音がわずかに小さくなったように感じた。何も変わっていないのに。ランプの光がわずかに揺れた。
マルクは瞬きをして自分の手を見た。
指の輪郭が……少し曖昧になっていた。
— ……興味深いな、と彼は小さく呟いた。
患者が緊張した。
— 何ですか?何か問題ですか?
マルクは再び彼を見た。落ち着いたまま、まるで分析するように。
— ひとつ聞きたいのですが……これ、あなたにも見えていますか?
— 何がですか!?患者は声を荒げた。
マルクの輪郭がゆっくりと滲み始めた。水面の映像のように。
彼はパニックにならなかった。ただ少し眉をひそめた。
— どうやら予定より早くセッションを終えることになりそうですね……
— 待ってください!どこへ!?患者は立ち上がった。
しかしマルクはすでに消えかけていた。
その姿は現実から少しずつ削られるように消えていく。
最後に残ったのは、静かな視線と落ち着いた声だけだった。
— 覚えておいてください……あなたの感情には理由があります。それがまだ見えていないだけです。
そして——空白。
向かいの椅子は空だった。
部屋は再び普通に戻っていた。
患者は数秒間動かず、そこに座っていたはずの人物を見つめていた。
— ……働きすぎたな、と彼は小さく呟いた。
苦笑しながらコートを掴み、振り返らずに部屋を出た。




