新たな出会い
翌日の午前。
山のふもとのスーパーでメグちゃんと買い物をした。
車で山道を登って、橋を渡り……
家の手前の、林の入り口まで戻ってきた。
夢野陽
「メグちゃん、足元、気を付けて……」
カッ……と空が光った。
夢野陽
「‼」
ドゴォォン!
近くに、雷が落ちたようだ。
メグ
「ひっ‼」
夢野陽
「うわっ!」
バキバキバキバキ……。
メグちゃんの上の方で、……木が鳴っている。
夢野陽
(まさか……!)
メグ
「?」
オレはメグちゃんの手をとった。
夢野陽
「走って!」
メグ
「え、あ、うん……?」
あわてて、その場から離れる。
ドォーン‼‼
夢野陽
「!」
メグ
「あ……」
さっきまでオレたちがいたところに、木が倒れた……。
夢野陽
「あ、あぶなかった……」
カッ、ドォーン……。
今度は遠くで雷が鳴った。
メグ
「ひ……っ!」
夢野陽
「早く、家に戻ろう!」
オレはメグちゃんの手を引き、走った。
夢野陽
「はあ、はあ……!」
急いで林を抜ける。
夢野陽「ん……?」
……家の前に、誰かが倒れている……!
倒れている人のところに駆け寄り、しゃがみこんだ。
夢野陽
「だいじょうぶですか⁉」
女性
「……はー、はー……」
ジャージ姿の女性が苦しそうに、息をしている。
夢野陽
「あの……!」
軽く肩をゆすってみる……
が、目は固く閉じられたままだった。
――バリバリバリ‼ 近くに何度も雷が落ちる。
メグ
「う、うう~!」
夢野陽
(こんなところに、この人をほうっておけない! せめて、家の中に……!)
「メグちゃん、鍵開けるから、先に家に入って!」
メグ
「は、はい……!」
家のドアを開け、メグちゃんと荷物を家の中に入れた。
外に戻り、女性の腕を肩に回して立ち上がる。
夢野陽
「……‼」
……女性はオレと変わらないくらいの身長だった。
だが、その身体は……子どもかと思うくらい、軽かった……。
夢野陽
(……この人、いったい、どんな生活を……
いや、今はそれどころじゃない!)
急いで、家の中へ入った。
◇ ◇ ◇
……オレは女性を、寝室のベッドに横たわらせた。
夢野陽
(ほおがすごく赤い……まさか……)
……その額に、ふれてみる。
夢野陽
(! ……すごい熱だ……)
女性
「……すまん……」
夢野陽
(……目が、覚めたのか……?)
……手をどけてみる。が、彼女の目は閉じられたままだった。
夢野陽
(寝言……?)
女性
「……守りきれなくて……ごめん……」
……女性の目から涙があふれ、頬を伝った。
夢野陽
(……どういうことだろう……)
女性
「…………ハッ!」
女性が目を開けた。
夢野陽
「あ……」
……彼女は瞬きをし、涙を手でぬぐった。
そして、ぼんやりとした目で、あたりを見回す。
女性
「…………ここは? ……お前は、誰だ?」
……その声は、枯れていた。
夢野陽
「……ここは、オレの家です。山奥のログハウスで……。
オレは、夢野陽っていいます」
女性
「なんで、私がここに……」
夢野陽
「この家の前にあなたが倒れてたのを、さっき見つけたんです。
……雷がひどいので、せめて、家の中にと思って……」
キィ……
夢野陽
「!」
……音に振り返る。わずかに開いたドアの向こうにメグちゃんがいた。
メグ
「……」
彼女は女性の方を見つめているようだった。女性の目が、メグちゃんの方へ動く。
メグ
「……!」
メグちゃんは慌てた様子で、リビングへ戻った。
夢野陽
(この人のこと、気になったのかな……)
女性
「……あの子は? 家族か?」
夢野陽
「……えっと……」
(はい、そうです。って……ウソを、つこうか?)
オレは汗ばんだ手を、握りしめた。
夢野陽
(……いや……そんなことしても、なんにもならない……)
俺は首を横に振った。
夢野陽
「い、いいえ……赤の、他人です……。
あの子とは昨日、ここに来たばかりで……」
女性
「………………は……⁉」
彼女はものすごい勢いで、上半身を起こした。
女性
「いっ……!」
彼女は顔をゆがめ、頭をおさえた。
夢野陽
「だ、だいじょうぶですか……⁉」
女性
「山奥に他人の女の子と、昨日来たって……
……まさか、誘拐か⁉ あの子の親の許可は⁉」
女性は俺をにらんだ。
……その鋭い目には、先ほどの眠たそうな雰囲気は、もうない……。
夢野陽
(……やっぱり……。いや、当たり前か……。
……うまく話せる自信はないけど、誤解を解かなくちゃ……)
オレは顔の前で両手を振った。
夢野陽
「……ご両親の許可は、とってないです……。
でも……誘拐したつもりじゃ、ないんですよ。
ワケあって、どうしても……あの子を家から離さないといけないと、思ったんです」
女性
「……なんだ、それ。つまり、誘拐だろ?
あの子を無理やり、ここに連れてきたんだろ?」
夢野陽
「いや! それは違う、と思ってます。
オレはあの子に、家から逃げよう、って提案して……
それにあの子は乗ってくれた……と、思ってます……。
……うまく、言えないですけど……」
オレは女性から、目を逸らした。
女性
「……さっきから、まるで話にならん。……通報するぞ」
女性は自分の服のポケットから、スマートフォンを取り出した。
カッ、ゴロゴロ──雷で、暗い部屋が光った。
夢野陽
「ちょっ……待ってください、もっと説明を、」
バリィィィン!
メグ
「あっ!」
リビングの方から激しい音と、メグちゃんの声が聞こえた。
夢野陽・女性
「⁉」
夢野陽
(何の音だ……⁉)
オレは寝室を飛び出した。
夢野陽
「メグちゃん、だいじょうぶ⁉」




