深夜にならないと心霊現象が起きないという部屋
「・・・」
本を読みながら、ふとスマホの時間を見てみると午後4時前。
そろそろネットカフェから出なければならない時間だ。
「ん〜〜!!!」
きさらは身体を伸ばして立ち上がると持ってきていた漫画と荷物を手に持って個室から出る。
個室から出ると、すぐ側に漫画返却の棚があるのでそこに漫画を置いて受付へ行く。
受付へ行くと誰も居ないが、ここのネットカフェは受付が居ない場合はセルフレジというのがあって、店員さんが居ない場合はセルフレジで会計を済ますのが基本だ。
個室に入る時に必要なICカードのバーコードをスキャンするとご利用金額が画面出る。その金額の分だけお金を入れると会計は終わり。
実に簡単であるが、きさらは最初セルフレジの使い方が分からなくて恥ずかしい思いをした事がある。といっても中学生の頃の話だが・・・。
さてネットカフェを出ると、この近くにあるアパートへと足を運ぶ。
ネットカフェから歩いて10分程度のところに今回の依頼の現場はあった。
なんでも大手自動車工場の社員寮となっているアパートだとか。
きさらは外からアパートを見てみる限り、特に何も感じない普通のアパートとしか思えなかった。
しかし外から見ているだけじゃ駄目なので、きさらはさっそくこのアパートの管理者のいる事務所へ行く。
「すみません、今日は依頼を受けていた宇都宮きさらと申します・・・」
事務所の扉を開けて名前を名乗って頭をペコリと下げる。
すると奥からやって来た管理者のおじさんがやって来る。
「確かに除霊の依頼をしたけど・・・。うーん?君がお祓いするの?」
管理者のおじさんはきさらを見ると見下した目をする。
「はい。ですが私で嫌なら帰ります」
管理者のおじさんがきさらを小娘と心の奥底で馬鹿にしているのが分かったから、きさらも腹が立って帰りたくなった。
しかし、管理者のおじさんは笑いながら「ゴメンごめーん」と謝る。
「いや、まさか君みたいな中学生か高校生の女の子が除霊するとは思わなくてさ。気を悪くさせたら済まないね〜」
全く謝る気なしの態度である。あまりにもヘラヘラした態度である。
「・・・」
きさらは不満ではあるが我慢して堪える。
「んじゃ、この番号の部屋の鍵渡しておくから除霊しといてね」
管理者のおじさんはポーンときさらに向かって鍵を投げる。しかし運動神経の悪いきさらは投げられた鍵を取り損ねる。
「あっ・・・!」
しゃがんでゆっくりと鍵を取るきさらを見て管理者のおじさんは「フン」と笑う。恐らく軽く投げた鍵すらもきちんと取れない鈍臭い小娘だと思われたのだろう。
そして小声で「こりゃ駄目だ」と呟く。
きさらにはその言葉は聞こえなかったが、管理者のおじさんがいかに除霊師や巫女の類を信用していないのか何となく分かった。
「あ、あの・・・!どういった心霊現象が起こるのか聞いていないのですけど・・・!」
きさらの言葉に反応した管理者は机の中からノートを取り出してきさらに手渡す。
「このノートにどんな心霊現象が起こっているか書いているから。あと心霊現象は深夜12時を過ぎないと起きないみたいだから一夜をあの部屋で過ごすことになると思うけど大丈夫かね?」
「あ、はい大丈夫です・・・!以前にも同じような依頼をこなした事あるので」
「ふーん。ま、除霊が終わったらこの事務所に来てくれたまえ。ここの寮は大きいから深夜でも何人か従業員がいるから。」
「わ、分かりました!」




