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銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


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52 口が裂けても言えない

「申し訳ございません」

「·······」


 ヴァザルデス師団長が謝罪の言葉と共に頭を下げ、クァドーラ魔術師長は無言のまま頭を下げた。


「私は別に謝罪を求めているわけじゃない」


 ここの空気が冷えてしまったので、左手を振り、上の方から温かい空気を引き入れる。誰かのホッとため息をついた声が聞こえてきた。周りの人からしたら、酷いとばっちりだ。


「私は聞きたいことがあると言わなかった?どれほどの封印を解いたの?どれほどの魔物を解き放ったの?聖騎士団をバラバラにして何をしたかったの?」


「俺が·····私が知っているのは3つです。オヴァール、リレイシル、ルクルードです。」


 ヴァザルデス師団長はそう答えた。ルクルードのことは知らないが、ここ数ヵ月のことなのだろう。ということは師団長はそれまで聖女の魅了にかかっていなかったということか。


「12箇所の封印を解いていると思われます。実はあの聖女の行動に疑問を持ち、近づいたのですが·····」


 クァドーラ魔術師長は言葉を止めてしまった。ミイラ取りがミイラになってしまったのだろう。近づいたところで魅了の魔術に掛かってしまったと。

 しかし、12箇所か。やはり愚兄の言っていた数より多かった。


「聖騎士団のことですが、全て聖女ミエーヌ様の采配です」


 ふーん。ここまでぐしゃぐしゃにしてくれたのはアルレット伯爵令嬢ねぇ。


「私ね、レイラから第1から第6まで揃っていると聞いたのよ。別にレイラが悪いとは思ってないけど、こうも揃ってないとは考えもしていなかった。1から4小隊は剣も魔術も扱える精鋭を配置したのに、今、下に居るのって何人?」


 私は眼下に見える騎士たちを指し示す。大半が何が起こったのかとこちらを見上げている。前線の成り行きを厳しい顔で見ている者たちは顔見知りばかり。


「これ100人いないよね。それ以外は知らない顔ばかり、前線は古参の者達が戦っている状況。300人の精鋭が控えているならまだしも、殆どが2年以内に騎士になった者たち。最悪ね。」


 私が第2小隊と第4小隊を後ろに下げたのは、この後の戦いを見越してだ。まさか、殆どの新人が残されるとは予想外だ。


「あの時は何人だった?あのエルグランの戦いは。ねぇ、ヴァザルデス師団長?」


「約千人です」


「そうそう、それで半数は死んだか、もう戦えない体になった」


 一昼夜戦い続けて、なんとかスタンピードを押さえ込んだけど、フタを開けてみれば、負け戦と言っていい状況だった。


「それなのに集めてきて六百人。現状が見えていなかったのか。楽観視していたのか。それとも王都を壊したかった?」


 あの聖女の目的はなんだろう。乙女ゲームのヒロイン気取りなら私は何も関わるつもりは無かった。イケメン達と『あはは・うふふ』の世界に入り浸りたいと言うなら勝手にしていろと思っていた。しかし、ここに来て王都を滅ぼす勢いのスタンピードが発生している。これはもしかして······。


「王都の封印を解こうとしている?」


「「「え?」」」


「私、王都じゃなければ今回のことは放置していた。だってもう私関係ないでしょう?私の代わりはアルレット伯爵令嬢がしてくれるのでしょ?ああ、そうね関係なかった。騎士団の采配も私が口出すことじゃ無かったよね。ごめんなさい。あまりにも酷かったから八つ当たりしてしまって」


 そう、私は騎士団のことに口を出すべきじゃなかった。王都に被害が及ばないために、騎士団を使おうと思ってしまった。


「いえ、聖女リーゼ様のおっしゃる通りです」


「ああ、そうそう。その呼び名。それもアルレット伯爵令嬢が請け負ってくれているのでしょ?私を聖女と呼ばないでもらえる?私は身分も何もかも全て剥奪された者でしかないから」


 そう言うと、目の前の二人は何だか悔しそうな顔をしている。何故、あなた達がそんな顔をするの?


「せ····リーゼ様、お伺いしてもよろしいでしょうか?」


 今まで黙っていたイオブライが私の足元に跪いて聞いてきた。


「何?」


「先程お話に上がったハイメーラーの白き獣は討伐されたのでしょうか?」


「そうね」


 私の答えに周りがざわつき、沸き立った。流石だとか、やはり凄いという言葉が聞こえてくる。


「王都にはその魔物程のモノが封印されているのですか」


「いいえ」


 私の答えに、どこからか安堵のため息が漏れ聞こえた。けれど、私はこの状況に絶望という言葉を言い放つ。


「私でも勝てるかどうかわからないモノが封じられている。封印を3重に施して守り人を据えるほどのモノ。だから、好奇心で封印を解こうなんて思わないで欲しい。この国をこの世界を壊したいのなら、仕方がないのかもしれないけれど?」


 王都の外壁の結界が魔物の封印となっていることは聞いていた。そこに封じられているモノも守り人から聞いていた。



 王都の地下に150年前に倒されたはずの魔竜王が封じられているなんて、口が裂けても言えない。


誤字報告ありがとうございます。

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[良い点] キセルくゆらせる気怠げヒロイン格好いいので好きですけども、まだまだ謎が多くアリアがどんな子が分かっていない。けど不憫なので幸せになって欲しいもんです アリアもシヴァも理不尽な目にあいすぎ…
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