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銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


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47 なんかムカムカする

 私は怪訝な目を彼に向ける。何をいったい言っているのか。


「アリア、時間がないよ」


 時間が無いのは分かっている。分かっているけど、威圧するようにわざわざ仮面を取って、濁った目を向けないでほしい。


 ああ、そう言えばサーシャが言っていた。確か······『聖女リーゼ様が頼み事をされたとあれば皆が平伏して事を成しますよ。でも、もし言うことを聞かない者がいれば、首を斜めに傾げて上目遣いで“お願い”と言って微笑めばいいのです』と言っていたな。

 よし、首を傾げて上目遣いで


「シヴァ。お願い(ニコッ)」


「う゛っ!」


 なぜ、顔を背ける。そんなに私の笑顔が駄目なのか?確かに私が笑うと背を向ける者がいたな。

 家族が『リーゼの笑顔はかわいい』と言ってくれていたのはやはり家族の贔屓目だったのか。


 彼は仮面を被って私が示した王城の方に向かっている。お願いは聞いてくれるようだ。

 この王都は城郭都市となっている。階層ごとに棲み分けがされており、その階層を区切る高い塀が道を遮っている。4層の区画があるため、あと3つ壁を越えなければならないが、私の動きに付いてきた彼だ。身体能力は相当高い。何事もなく高い塀を越えていく。

 第3層は建物はいくつかあるが、この王都に人が増えすぎたため、5代前の王が王都の者たちの食料確保のため農地を作り、その殆どが貴族が管理する荘園なっている場所だ。また5代前。


 その農地を抜けて第2層の貴族街へ足を踏み入れる。以前私が住んでいた場所でもある。私が殆ど通わなかった学園も第2層にある。

 その先が王城となる。


 ヴァザルデス師団長とクァドーラ魔術師長は同じところに居るようだ。先程から移動はしていない。その場所は確か中庭かな?中庭で何をしているのだろう。


 私は彼に第2層からその中庭に行く道を指し示す。


「ここからあの小さな塔を目指してほしい。王城には結界が張ってあるけど、その塔の脇に綻びがあるから、そこを通ると目の前に城壁がある。そのまま城壁を登ってそこで立ち止まってくれる?」


「わかった」


 彼は私が言ったとおり塔の脇を通って城壁まで行ってくれた。本当にここまで来るのに誰の目にも止まる事は無かった。妖精の祝福と隠蔽魔術の威力が凄いということなんだろう。

 そして、城壁から中庭を見下ろす。あれは何をやっているのだろう。お茶会?


 一人の女性を囲って十数人の男性が歓談している?


 それとも作戦会議?笑顔で?楽しそうに?


 有り得ない!この非常事態にこの和やかな雰囲気!お前たちは何をしているのだ!騎士たちは命がけであのエルグランの魔物と戦おうとしてるというのに。


「アリア。魔力が漏れている」


 はっ!いけない、いけない。魔力を押し込め、煙管(キセル)に新たな薬草を詰め直し、火をつけ一吸いする。

 落ち着け、落ち着くのだ私!もう、時間が迫っている。早急にヴァザルデス師団長とクァドーラ魔術師長を確保しなければならない。

 煙管(キセル)を亜空間収納に入れ、彼を見上げる。


「あの金髪の大柄な人物が師団長なのだけど、あの聖女の魅了がどの範囲までに及ぶのかわからない。私が師団長を投げ飛ばすから、確保すれば直ぐに南に向かって欲しい」


「アリアが一人で行くのは駄目だ」


「駄目じゃない。時間が惜しいから馬鹿共を運ぶのが優先」


 そう言って、私は城壁を飛び降りる。気配を絶ち、聖女とその仲間たちに近づき金髪の大柄な人物に一直線に向かう。その視界には元第5王子とピンクゴールドの髪にピンクの瞳を持つアルレット伯爵令嬢が映る。彼女は転生者なのだろうか。いや、今は関係ない。


 金髪の大柄な人物に飛び蹴りをくらわし、よろめいたところでその腕をとり、探知で探った彼のいる方向に·····なぜ、城壁から降りてきた。仕方がなく100メル(メートル)先にいる彼に向かって、大柄の人物を投げ飛ばす。


 次いで師団長の向かい側に居た魔術師長の鳩尾に向かってタックルをくらわし、そのまま荷物の様に担いで運び出す。


 後にする背後からこちらに向かって呼びかけられた。


「グラン様!グラン様お待ちになって!」


 どうやらアルレット伯爵令嬢が呼びかけているのだけど、グラン?


「グラン様!わたくしなら貴方様をお助けできます!」


 ああ、前方にいる彼のことか、なぜ、アルレット伯爵令嬢が今の彼の姿を認識して、呼びかけるのか。他の攫っている二人の名ではなく。


 イライラする。


 イライラ?なぜ、私がイライラする必要があるのだろう。元々攻略対象ではないかと疑っていたというのに。


 それに助ける?彼の呪いを解いてどうすると?いや、彼女なら私にはない知識があるのかもしれない。

 彼の術を本来の形に戻すことができるのかもしれない。


 なんかムカムカする。

 ····?



誤字脱字のご報告ありがとうございます。

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