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銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


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38 私の私利私欲の為

 深々と降り積もる雪。凍てつく空気。眼下には白き大地を我が物顔で自由に闊歩する白き魔物。その奥には白き魔物よりも更に強大な魔物。


 神話時代。良き神と悪しき神がこの地上で覇権を争っていた時代。北の大陸を全て凍らしたと言われている氷狼竜。その息は大気も凍らし、覆われた鱗は大地を凍らしたと物語には記されていた。


 北の大陸にいたというのに、なぜ、その様なモノがここに封じられていたのかはわからない。しかし、あの巨体を封じた方も凄い。多分、ここ一帯が戦場だったのだろう。このすり鉢状の大地がそれを物語っていた。



 氷狼竜は恐らく私達に気がついている。しかし、何もせず近づいても来ないので、様子をみているのだろう。

 あの巨体の見た目は、肉がスジ張っていて硬そうなのでいらないけど、鱗と毛皮は欲しい。


 ふふっと漏らした息は白く凍りつく。夜になって一段と冷えてきた。キラキラと空中にダイヤモンドダストが舞っている事から、空気でさえも凍っているのだろう。物語の通りのようだ。


「この服凄いな。普通なら凍え死んでいるような寒さなのに、春のような暖かさを感じる」


 下から吹き上げる冷気に赤い髪を靡かせている隣の魔王様は手を握ったり開いたりしている。普通なら手が(かじか)むのを通り越して、凍傷になっている寒さだ。この様な場所に立つことができるのは勿論、妖精の祝福のおかげだ。暑さも寒さも影響しない戦闘服、本当にフェーリトゥールは素晴らしい。


「フェーリトゥールの祝福のおかげね。ザコは私が魔術でヤるから、あのデカ物に一直線に向かって欲しい。その大剣ならあの硬そうな魔物を斬れると思う」


 そのために作った大太刀なのだ。素材を綺麗なまま確保するために、どんなモノも斬ることのできる刀。ただ、その呪われた刀で斬れるかは不明だけど。


 私は両手を空間に突っ込み、亜空間収納から二本の小太刀を取り出す。緋炎と蒼雫と名付けた短めの刀だ。失敗作も失敗作。素材を提供して出来上がったものが、あまりにも使えなかったので、お蔵入りとなっていたものだった。


 その二本の小太刀の鞘を抜き刀身を顕にする。赤々と燃え上がる刀身を持つ刀に、柄と鍔だけで、その先が無い刀。


「それは何だ?」


 斜め上から声が降ってきた。どう見ても見た目がおかしいよね。


「失敗作。だけど、ここで使い捨てにするなら丁度いい」


 そう言って私は身体強化をして思いっきり大地を蹴る。すり鉢状になっている傾斜を駆け下り、雪原が足元を覆い始めたところで、氷狼がこちらに気が付き向かってきた。


 私は魔力を雪原に沿って這わす。私の魔力と氷狼が接触したところで、術を発動。


影槍(えいそう)討撃」


 氷狼の下から影が槍の様に突き出てきたが、硬い毛に阻まれてか、弾かれた。やはり普通の氷狼では無かったか。

 今度は影の槍に回転と槍自体にネジのようなスクリューを加える。


影槍(えいそう)廻撃」


 ギャイン!という悲鳴と共に影の槍が刺さっていった。これで行けそうだ。広く浅く私の魔力を雪原一帯に浸透させていく。そして、次々とねじった槍に突き刺さっていく白き獣達。まるで、墓標の様に白き大地の上にそびえ立ち、滴る魔物の血で赤く大地を染め上げていく。


 闇の使者。オヴァールの者たちを指し示す言葉だ。魔の森の濃度の濃い魔素に順応し、その森で魔物を討伐するために、森の深き闇を用いることで、領地を守ってきた。

 数十世代を重ねることで闇魔術特化の一族が出来上がったのだった。

 そして、一族の特性として周りの闇が濃くなるほど、魔術の威力も増していく。


 しかし、私は一族の概念を越えて全属性使えてしまったことで、崇拝対象になってしまったのだった。魔女っ子リーゼが元凶だ!過去に戻れるのなら、お馬鹿な自分を殴ってでも止めたい。調子に乗って魔術を使うのはやめろと。



 なんて頭の中ではお馬鹿な事を考えているけど、やることはきちんとしている。もう、この窪地の中で生きている魔物は目の前の氷狼竜のみだ。それ以外は墓標の様な影に全て串刺しになっている。


 巨体が体を持ち上げる。こんな近くで立ち姿を見ると流石に圧倒的と言うべきか。

 だけど、私は私の私利私欲の為に目の前の巨体に刃を向ける。

 赤い炎の刃と何も無い刃を


「私が一撃を加えたら、アレの首を落として欲しい。この一撃で崩れさせられると思うから」


「アリア、何をする気か知らないが危険過ぎないか?これは普通の魔物じゃないんだぞ」


「そんな事見れば分かる。でも、私はあの魔物の鱗と毛皮が欲しい。絶対に欲しい。だから、殺る」


 何がおかしいのだろう。お腹を抱えて笑わなくていいのではないだろうか。


 ふぅーと白い息を吐く。白い息の先には冬の空の色のような百郡色の瞳が私を見下ろしていた。絶対的強者を疑わない目だ。


 ああ、ドキドキする。



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