表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/72

30 乙女ゲーム的な何か

「なぜ、姫はこいつと一緒にいるんだ?こいつは何者だ?近くにいると凄くゾワゾワする」


 目の前で上品に食事を楽しんでいる愚兄その3からの言葉だ。その質問は私も疑問に思うことだ。なぜか一緒にいると言われ付いて来られたし、何者と問われれば元隣国の第一王子ということぐらいしかわからない。それも王族から抹消したと本人は言っている。何者かという答えは私も持ち合わせていない。

 それからゾワゾワとは呪いのことだろうか?私にはわからない感覚だ。だから素直に答える。


「さぁ?私も答えは持ち合わせていません」


 フォークで肉と刺して口に運ぶ。·······硬い、筋張って噛み切れない。焦げ臭いのに微妙に中が生焼け。珍しいジェネラルオークの肉がメニューにあったので注文してみたけど、これは肉への冒涜だ!やっぱり外で食べると美味しくない。自分で作った方が断然美味しい。


 フォークを置き、愚兄その3に今度は私から質問する。


「聖女の足跡を辿っているということでしたが、目的か何か手がかりは掴めましたか?」


「ひめー。僕の質問は?」


「無視です。カティーからの話で彼女は危険だと私は判断しました」


「カティー?はぁ。それなら姫は断らないかぁ。叔父上も考えたなぁ」


 呆れたように声を漏らす愚兄その3はぶどう酒を一気にあおり、真剣な目をして私を見た。


「聖女の目的はわからないが、古い遺跡を巡っている。別にそれだけじゃ問題はないのだが、そこは何かしら封印が施されているところだった。それもそこの領主にしか教えられていない危険な遺跡だった」


 遺跡巡り·····なんかゲーム的には伝説の何とかを手に入れるために行く感じなんだろう。


「そこで、封印の要と言うべきものを持ち去っていくのだ。姫が追放された2年間で7箇所だ。直ぐには封印されたモノが解放されるわけではなかったから、聖女と謎の魔物の関係が紐づけされなかった。その魔物が暴れ、困っていると噂が流れると騎士共を引き連れてやってくるのだ。困っているのなら助けてやるという態度でだ。」


 え?それって自作自演で魔物討伐をしているってこと?


「それで、手が負えないと分かると去っていく。今、ギトースール領とハイメーラ領が人が住めない状態にまでなっている」


「はいー?人が住めない?去っていく?私が育てた師団で対処できなかったの?」


 ありえない。何があっても対処出来るようにお綺麗な剣しか振れなかった騎士達をしごきにしごき、猛者と言っていいほどの者達にまでに作り上げた師団が逃げ去るって何?


「ああ、姫が作り上げた聖騎士団はもうない」


「ない?」


「解散して一部は聖女親衛隊と名を改めて存在している」


 聖女親衛隊って馬鹿王子が隊長をしているという親衛隊?隊ってことは規模はそこまで大きくない?数百人から千人程度?それでも駄目って封印されていたモノって何?


「騎士千人でも対処不可能だったってこと?」


「ん?聖女親衛隊は20人だ」


「20?200の間違いでは無く?」


「20だ」


 あー。そういうこと。私は項垂れてしまった。これはあれだ。乙女ゲーム的な何かなんだろう。攻略対象との仲を深める的な。現実が見えていない馬鹿な行動だ。


 それなら馬鹿王子が隊長だと言っても、うなずける。仲良しグループで、隊をまとめるほどの事は何もない。だたのお飾りの隊長だ。


 私は姿勢を正し愚兄その3を見る。


「サヴェル御兄様。聖女の件は手をお引きください。直ぐに領地に戻って地竜の対策をされた方がよろしかと思います。なぜなら彼女は……」


 私が真面目な話をしようとしているのに目の前の愚兄その3は恥じらう乙女のようにモジモジしだし『姫から久しぶりに名前で呼ばれてしまった』なんて言っている。そして、隣からは不穏な空気が漏れ出てきている。何?この怪しい空間は?


「愚兄。人が真面目な話をしているのだから聞け」


「うんうん」


 すっごい笑顔で頷かれている愚兄を目にした周りの席の女性たちから黄色い悲鳴が聞こえてきた。中身は変態だけど外見はいいからモテるんだよなぁ。なんて事を思いながら、続きを話す。


「彼女は恐らく魅了の精神支配を持ち合わせているようです」


「なに?」


「私は遠目に一度しかお目にかかったことがないので予想でしかないのですが、あのクロス義兄様が聖女を庇うような発言をしたのです。あの初恋をひねくれさせすぎてどうにもならなくなったクロス義兄様がです。これは流石におかしいですよね」


「姫。ちょっと待てカティーに会ったと言っていたな」


「はい」


「そこにクロス叔父上も居たと?」


「はい」


 愚兄その3は私の言葉に天井を見上げ『あー』と言葉を漏らしてる。


「それは流石におかしい。カティーのストーカーであるクロス叔父上がカティーの前でそのような事を言うのは天地がひっくり返ってもありえない」


 そう、義兄クロスは私の侍女であるカティーが好きなのだ。大好きなのだ。いや、執心していると言っていい。

 甲斐甲斐しくカティーが世話をする私に嫉妬するほどに。カティーの主であり、まだ子供で性別的に女である私に嫉妬するほど、義兄クロスのカティーに対する愛は重かった。義兄クロスは隠しているつもりだったが、これはカティー以外の誰もが知っている秘密だ。


 それに適齢期になったカティーは私が結婚するまで自分も結婚することはないと言っていた。今年でカティーは25歳になる。

 私が王子の婚約者で無くなってしまったことで、結婚の機会を失うと同時に義兄クロスがカティーに告白する機会を失くしてしまったのだ。

 私的には勝手に告白してカティーが幸せになるならそれでいいと思っているけど、竜の谷に追放になった後、父であるロスナー子爵からの定期報告では私が結婚しない限りカティーも結婚はしないと頑として譲らないらしい。

 それを聞いた義兄クロスのストーカー行動が悪化したと父からの手紙に書いてあり、カティーにどうにかして結婚して欲しいと血の繋がった末の弟を応援している文面だった。オヴァール家の特異性は遺伝子レベルでどうにもならないものらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ