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閑話10【オラこんな異世界嫌ダァ】

とある転生者が、とある転移者に転生してからの半生を語っている場面です。

俺は、物心ついた頃から“2つの記憶”を持ってたんだ。


1つは、地方都市のワンルームマンションで暮らす30代独身フリーター“近藤 誠(こんどう まこと)”のクソつまんねぇ人生の記憶。


そしてもう1つは、“この世界”での“ケージ”としての、もっとつまんねぇ記憶。




きっかけは、“この世界”で4歳になったばっかりの夏だったかな。


俺が住んでた街は日本で1、2を争う暑い街だったから、この世界の夏はそんなに暑く感じてなかったと思う。


ああ、そう思うともっと前から何となく前世記憶はあったのかな。


いつもみてぇに、母親にくっ付いて川に水を汲みに来てたらよ、川面に映る自分の顔を見て違和感を感じたんだ。


誰だ?この子供は?って。


後を振り返っても誰もいない。


もう一回川を覗き込んでも、やっぱりそこに映るのは幼い少年の姿。


え?これ俺?って思って、川面の少年と向かい合ったまましばらく考え込んで記憶を遡ってみるわけよ。




確か、今日はいつも通り朝起きて、家を出て…今日のおめざめテレビの占いが1位だったからなんかいいことあっかなぁって原チャリに跨って……それから……母さんと一緒に川へ洗濯と水汲みに……あれ?仕事は?…あれ?


てな具合によ、記憶を辿ってくうちにおかしなことに気づくんだよ。なぜか“今朝の記憶”が2つあるんだ。


1つは、日本一暑い街……あの当時は2位だったかな?そこのワンルームアパートで、いつものように仕事に出掛ける記憶。


もう1つは、隣で洗濯物を洗ってる、“今の俺”の母親との記憶。


そこで「え?あれ、俺のかーちゃん?」てなるわけよ。


だってそうだろ、その時の俺は自分のことを30過ぎのオッさんだって思ってるわけだからさ。でも隣で洗濯をしている女は明らかに俺より歳下に見えるじゃん。


何より、どう見ても日本人じゃねぇ。


でも、4歳の俺はその女を母親だって認識してんのな。


ただまぁ、あの頃はまだ4歳の俺の自我の方が濃かったからか、30代のオッさんの意識は一瞬出て自然に消える感じだったかな。


まぁ、そんなわけで、俺は30代フリーターの記憶がある、4歳の異世界人のガキになったわけだ。




そっからちょいちょい違和感を感じるようになってよ、特にその若ぇ母親の作る料理が全部不味く感じてな。


当たり前だよな。現代日本人がいきなり江戸時代の農民みてぇな生活になるんだからよ。


でもメシが不味いって言うと、ぶん殴られてメシ取り上げられてギャン泣きして、どんなに不味い飯でも空腹には勝てねぇから、結局母親のクソ不味い飯食いながら育ったよ。


その頃は、周りにまだ魔法使いとかいなかったし、魔物なんかも見たことなかったから、どっか発展途上国の農村の子にでも生まれ変わったんだろうぐらいにしか思ってなかったな。


ハッキリと異世界に転生したんだってわかったのは、父親の話を聞いた時だった。




あれはもう少し大きくなってからだったかな。


5歳か、6歳か、そんぐれぇの頃に母親と一緒に風呂入っててよ。


その頃にはもう30代の自我がかなりハッキリ出るようになってたんだよ。


そうするとよ、わかるよな?お前も男ならよ、な?


5〜6歳の俺からしたら母親だけどよ、30代の俺からしたらうんと歳下の若い女なわけよ。


まだこ〜んな小っせー俺のムスコが、元気いっぱいになりやがってよ。


最初、母親は笑ってたけど、それが毎日になって、で、俺の視線が母親の胸とか尻を見てるのに気付かれて、そしたら急に母親がブチ切れるんだよ。


「アンタもあのクソ親父と同じかよ!!」


てな。


そこで俺は初めて父親の存在を知るわけだ。


たぶん、5歳の俺が気にしてなかった……ていうか、最初から父親なんていなかったから、子供の俺は“父親”ってものすら知らなかったんだと思う。


で、母親が落ち着いた頃を見計らって……この辺の空気読みは30代の俺のスキルだな、父親の話を聞いてみたんだよ。


母親はすっげぇ嫌そうな顔してたけど、ポツポツと語ってくれたよ。


ある日突然、村に言葉のわからない男達が現れたそうだ。


たまたま村が魔物に襲われてたタイミングで、颯爽と現れて魔物を退治した男達を、村人達は歓迎した。


村は、魔物が出る森に近くて、年に何回か魔物に襲われる。


台風なんかの災害と同じ感覚で諦めてたらしいけど、父親達が魔物を倒すと、村の守護神様だとかなんとか言って、寄ってたかって祭り上げたらしい。


そうなるとよ、うちの娘を嫁に是非!!とかいうバカ親が出てくるんよ。


俺の母親の親…俺の爺さん婆さんも、まるで貢物みてぇに母親を父親のところに献上したんだとよ。


そしたらよ、お前ならどうする?


ヤルよな!?絶対皆んな食っちまうだろ!?


異世界ハーレムきたー!!的なノリで、父親もヤリまくったらしいけど、まぁ知っての通りこの世界には聖魔教っつー面倒くせぇ宗教だか哲学だかがある。


聖魔教の三本柱って言われてる、不貞をするな、国を作るな、兵器を持つな(俺解釈)の内の一本を、父親は早速全力でヘシ折っちまったわけだ。


当然、父親達は村を追放されて、抱かれた女達も、ある女はどっかへ身売りみたいに飛ばされて、ある女は家族ごと夜逃げして、んで、俺の母親は、村外れの小屋に追いやられたっつーわけ。


そんで、しばらくして俺を身籠ってるのがわかった母親は、唯一コッソリ助けてくれてた妹の手を借りて、なんとか俺を産んで育ててくれたってことらしい。


だから、母親も父親については知らないことばっかりで、それ以上のことは教えてくれなかったし、名前も思い出したくもないっつって、教えてくれなかった。


だから、今でも父親のことは、ゲス野郎の癖に腕は立つってことしか知らん。


ああ、あと母親の話を聞いてて、俺は父親が日本人だって確信した。


父親の生まれ育った国には、聖地アキハバラてのがあったって言ってたってな。




まぁとにかく、その話の中に魔法だとか魔物だとか出てきて、俺は異世界転生したんだって知ったんだ。


そうなるとさ、山奥の掘っ立て小屋なんかに住んでられねぇわけよ。異世界を見てみてぇってなるだろ?


母親に聞いても、村から出たことのねぇ母親はこの世界のことを何も知らねぇし、たまに来る母親の妹も同じだった。


つーか、そうやって村の外のことを知りたがる事が父親とそっくりだっつって、余計に母親から嫌われたよ。だから、俺は8歳の時に家出した。


行き先は何処でもよかった。


せっかくの異世界だから、もっと異世界っぽいものを見たいと思ったし、あわよくば魔法なんか使えるようになったらいいなって思ってたから、最終的には王都とかそういう所を目指そうとは思ってたけどよ。


とりあえず、いつも水を汲みに行く川があったから、川沿いに下って行けばどっか町にでも出るんじゃないかって思って、ひたすら歩いた。


森ん中で育ったようなもんだから、食える植物とか、小動物を捕まえる罠の張り方とかわかってたし、食うもんにはそこまで困らなかったな。




危ない目にも色々あったけど、何日かして俺は何とか知らない村に出た。


俺の異世界冒険の第一歩だって、意気込んで村に入ってったらよ、いきなり盗っ人扱いよ。


袋叩きにあって、縄で縛られて納屋みてぇな所に閉じ込められたんだ。


これがよぉ、普通ならよぉ、じゃあ俺が真犯人捕まえてみせるとかなんとかなって、実は真犯人は村人Cでしたみたいになって、Cが人質に取った美少女助けてハッピーエンドになるじゃん?


まぁ、一応っつーか、当たり前だけど真犯人は他にいて、俺はとりあえず納屋からは解放されたんだけど、じゃあお前は何処から何しに来たんだってことになるわけよ。


流石に、俺は元々この世界の人間じゃなくて、この世界のことをもっと知りたくて旅に出た…なんて言えないから、父親の存在を使った。


「俺の父親は世界を旅して来た男で、俺の知らない話を沢山してくれた。俺も父親と同じように世界を見て回りたい」


って言ったんだ。


そしたら、村人たちは何つったと思う?


「どこも似たようなもんだぞ」


なるほどって思ったね。この辺りはまだ大きな国の影響とか受けてない、ど田舎なんだってな。


ヨーロッパ人が入って来る前の、アメリカインディアンみてぇなもんだと。


もし、ここが島かなんかで外のことが何もわからないガラパゴスみてぇなモンだったらお手上げだったけど、とりあえずでけぇ町に行けば何かわかると思って、町が何処にあるか聞こうとして、あることに気がついた。


“町”って言葉を知らなかったんだ。


衝撃だったよ。まぁ当たり前だよな。それまでほとんど母親としか暮らしてこなかったんだから、生活に必要のない言葉を知らねぇんだ。


当然、日本語で『町』って言っても、英語で『City』って言っても伝わらねぇ。


しょうがねぇから「人が1番集まる所はどこだ?」て聞いたんだよ。


そこで初めて、俺はコセ・シティのことを知ったんだ。


村人達は「うんと東の方へ行った所に、コセなんとかって所があるらしい」みてぇな言い方してたな。


ど田舎だからよ、情報が曖昧なんだ。なんかいろいろわけわかんねぇこと言ってた気がすっけど、忘れたよ。


とにかく、それで俺の目的地はコセ・シティに決まった。


ひたすら東を目指したけど、村人も「遥か東」としか知らねぇ所だ。どれほど遠いのか見当もつかねぇ。


まずは村を探しては情報を集めた。最初の村じゃよ、大した情報がなかったけど、コセ・シティに近付けば近付くほど、情報は確実になるはずって思ったのもあったしな。




そういやぁよ、村と村の距離がやけに離れてるって思った事ねぇか?


この辺りは、だいたい歩いて1日もしねぇで次の村に着くけど、ヤナクの向こうの方とか、馬車で1日〜2日とかザラだろ。


俺もよ、最初の村まで4〜5日かかったし、次の村もその次の村も最低3日はかかったから、この世界ってのは異常に過疎ってんのかと思ったんだよ。


3つ目の村で気になって聞いてみたんだ。


あ、そうそう!!この3つめの村で出会った女がめちゃくちゃ可愛くってよ!!


当時俺は8歳だったけど、中身はおっさんじゃん?


その女が、確かその頃成人したてっつってたから16〜7ぐれぇの……


ん?


あ、ああすまん。村と村が離れてる理由だったな。


まぁ、その話を振ったのもよ、その美少女と話しがしてぇからってのもあったんだけどな、はははっ。


んで、美少女に聞いてみたのよ。名前が確かマーリンだったかな。


当時で俺より8つ年上だったから、今はもう50近いのか…あ、想像するんじゃなかった。


マーリンの答えは単純だった。


「聖魔教の教えで決まってるから」


てよ。


なんかもう、聖魔教出せば全部説明つくんかと思ってちょっとイラッとしたけどよ、理解しねぇ俺にマーリンが詳しく教えてくれたんだよ。


美人で優しい、最高の女じゃね?


聖魔教の“多くの人が集まり過ぎる場所を作っちゃいけねぇ”って決まりがあって、村同士が近いといずれ人口が増えた時に自然合併して、人口過多の地域が生まれる可能性があるからなんだとよ。


ちょっとゾッとしたね。この聖魔教を作ったやつは、どこまで未来を想像してたのかってよ。


もしかしたら、俺達みたいにうんと昔に転生や転移してきた地球人が、聖魔教を作ったのかもな。




話が逸れたな。で、結局マーリンには俺がガキ過ぎて相手にされなかったから、その村を出た。


あ、そうそう。


マーリンからもう一つ興味深い話が聞けたんだ。


昔、この村に魔法使いが来たことがあるってな。


俺の父親のことかと思ったけど、違った。


父親は、魔法で魔物も倒せる猛者だったけど、マーリンの話じゃその魔法使いは、コップ一杯の常温の水をキンキンに冷やすのが精一杯の、凍系の魔法使いだったよ。


それでも、この世界に来て初めて父親以外の魔法使いの話が聞けて、俺はこの異世界転生に希望を持ったさ、その時はな。




それからなんのかんのと旅を続けるうちに、俺はコセ・シティに辿り着いた。


今から30年前だし、世渡り人も魔法使いも、まだ今ほど多くなかった頃だ。


街の中心部でも、建物は平屋か二階建てが主流で、今みたいに当たり前に3階4階建があるわけじゃなかった。


コセ・シティが大きく発展したのは、ここ10〜20年ぐらいさ。


その発展に大きく貢献したのが、ガブリエルとハッキャーっつー2人の世渡り人で、オレもコセ・シティに着いてすぐに出会った。


2人とも、俺より10年前にこの世界に転移して来たらしくて、コセ・シティに居着いたのもそん時から2〜3年ぐらい前だっつってたな。


2人は、世渡り人の協会みたいなのを作っててよ、俺もそこにまぜてもらったのさ。つーか、適当に声を掛けた街の人間に「あんたも世渡り人か?」って聞かれて、「似たようなもんだ」って答えたら、ハッキャー達の元へ連れてこられた。


2人にはある計画があって、それを俺に話してくれた。


世渡り人は必ず西の辺境の森に現れる。だから、すぐに魔物に食われちまうヤツがほとんどなはずだと。


なるほどと思ったね。言われてみれば確かにそうだろ?


へぇ、ミッツに助けられたのか。お前らも運がよかったんだな。


ある日突然、何の前触れもなくこの世界へ飛ばされてきて、魔物の餌になって終わりじゃあまりに不憫すぎる。


だから、ハッキャーとガブリエルは世渡り人の保護活動を始めたんだ。


ま、俺はまだ子供だったし、へーって聞いてただけだけどな。


それから2人は、毎年1人2人、多い年には5人の世渡り人を、森で保護して連れ帰って来るようになって、俺はコセ・シティでそいつらの生活の面倒をみる手伝いをして、小遣いもらって暮らしてたよ。


魔法を覚えたのもその頃だったかな。世渡り人の子供なら、魔法が使えるはずだって、ハッキャーが教えてくれたんだ。


けど、どれだけ練習しても魔法は全然上達しねぇ。炎系だったらファイヤーボールぐらいやってみたいって思うじゃん?


ちょいちょい練習はしてたけど、いつのまにか諦めてたな。




世渡り人の保護活動の手伝いをしながら、5〜6年経った頃、俺はこの世界で成人として扱われる16歳になって、独り立ちするためにコセ・シティで仕事を探したよ。


前世の経験を活かすっていっても、ただのフリーターだった俺には異世界で活かせる知識も経験もねぇから、いろいろ転々とした結果、木工職人みてぇな仕事に落ち着いたんだ。


世渡り人の保護活動なんてやってたからよ、ツテやコネは腐るほどあったから、就活には困らなかったよ。


ニーシュに住むようになったのは10年ぐらい前だ。


木工職人として、それなりに腕を認められてた頃だったから、聖廟の補修に駆り出されたのがきっかけでよ、コセ・シティより落ち着いてて住みやすい気がしたから、そのまま居着いちまった。


結婚?お前聞きにくいことズバッと聞くなあ。ま、何度か結婚話も出たけどよ、なんか気乗りしなくてこの歳まで独身よ。


んー、今も…つーかさすがにこの歳になったらもうどうでもいいかな。


ま、これが俺のこっちでの、ケージとしての第二の人生よ。


特に何も面白味なんてなかったろ?


せっかく異世界転生したんだから、それなりに面白ぇ人生になるかと思ってたけど、チロっと魔法が使える程度で、ハーレムどころか嫁さんもいねぇ人生よ!!


俺ァこんな異世界嫌だったけど、この歳にしてお前らに出会えてちょっとはよかったかな。


つーかちょっとでもそう思える人生にしてくれ!!頼む、レン師匠!!

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


作中にも名前が出ていますが、ケージがレンとミーユに自分のこの世界での半生を語っている様子です。

場面は、第2部第3章第6話【北地区長ホグル】の中で、3人がミッツ達と別れて魔力境界線の石柱設置をしに行く時の会話です。

3人とも日本人なので、異世界語と日本語が入り混じって会話していますが、面倒なので書き分けていません。


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